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「冷静さが最上と知る」摧剛為柔

剛を摧て柔と為す
―摧剛為柔―

[原文](漢書 三七巻 季布傳)
諸公皆多季布能摧剛為柔

[書き下し文]
諸公皆季布の能く剛を摧(さい)て柔と為すを多とす

[原文の語訳]
諸公たちは皆、季布はよく剛気を抑え柔順でいられた、たしたものだとほめる


→くだく、くだける
多とす
→たいしたものだとほめる

[解釈]
怒りっぽい武将の季布が、この時は怒りを抑えて柔順であり続けたことを周囲が褒めたという話から、剛強な心気を砕いて柔順になるということです。
瞬間湯沸し器と揶揄される人が、頭に血を上らせることなく穏やかで居続けるということです。

仕事の場面で言えば、取引先が理不尽な要求をしたり、上から目線だったりと横柄な態度をとったが、普段は怒りっぽい担当者が怒りを抑え続け、最終的に粘り勝って商談を取りまとめたといったところでしょうか。

野球であれば投手は前の打席で死球を受けた因縁の相手、本来なら借りを返すぞとばかりに力むところですが、そこで力を抜いて振り抜いた一打が会心のホームランになるようなものです。

相手の謀略として、あえて皮肉めいて煽ってみたり罵ったりして、あなたの性格や本音を探ろうとする可能性もあります。怒りが沸いてくると感情的になり、ついつい本音を口にしてしまう場合があります。

また一方で怒らない理由が相手側にあるかもしれません。尊敬する相手であれば、ある程度厳しいことを言われても怒りさえ覚えない。また信賞必罰がしっかりしていて、厳しく当たるがその代わり丁寧に手を差し伸べることもするなどです。
あるいは「この人はいまは怒っても大丈夫」という計算があるのかもしれません。そして、あえて周囲の目がある中で叱咤し、逆上しないことを知らしめることで評価を上げるという作戦だったのかもしれません。ひょっとすると両者の阿吽の呼吸なのかも。

われわれ人は感情的になりやすい生き物です。喜怒哀楽の感情を抱くことは当たり前のことですが、大事な場面でそれを爆発させてしまい失敗してしまってはいけません。場面によって冷静さを保つことを心がけないといけません。

怒りを和らげる方法として最初の数秒間我慢すると怒りも和らぐと言います。
また怒りの度合いを段階評価してみるのもどうでしょう。10段階に分けて、いまの怒りはどれくらいの段階か、まだまだ沸点のレベル10まで到達していないなと心の内で分析してみる。
これを例えばテレビのバラエティ番組のように外から見た自分の姿に「怒り度合いメーター」をあわせて表示させると、客観視できるようになるので平常心に戻しやすいです。これ、結構効果ありです。

この他、別の視点や考え方をしてみる。前述の「相手が自分の本音を探る作戦かも」と考えてみる。本当は相手にそんな気はさらさらないかもしれませんが「こっちはお見通しですよ」という気持ちになるだけで随分と違ってきますし、気分的に優位に感じて余裕が生まれるかもしれません。余裕ができれば力みも消えて、スムーズに進めることができるようになります。
「おっと、ガスの元栓を締め忘れてた」と心の中で冗談でも言えれば上等です。

前述の野球の例にしても「自分に打たれるのが怖くて力んだ結果、ボールがすっぽ抜けたのかもしれない」とか「厳しいところを突いてきたけどコントロールを誤ったんだ」と考えれば、自分が優位に立っている気持ちになれます。

相手の気持ちが分からない以上、こちらも都合の良い考え方をしても文句は言われないでしょう。
「あー、この人は本当はこうしたいんだろうけど、思うようにいかずにイラついて自分にあたってるんだろうな」くらいに勝手な同情の念を抱いてみるとか。
ただ、あまりに独りよがりが過ぎると、思わず相手を見下した横柄な態度が出てしまう危険性があります。馬鹿にしてるのかと火に油を注ぐことにもなりかねませんから注意が必要です。
冷静さが最上です。強さも冷静であれば感情的なよりも力量は落ちても的確に相手を衝くことができます。

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