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子どもとうつわ。

「子どもがいるから今は買えないな〜。」

たまーに聞くこの言葉。

私の作品を何らかのかたちで知ってくださり、手にとってくださり、とても気に入ってくださった様子なのだけれど、うーーーんと悩んで最終的に「やっぱり割られちゃったら困るし、、」といってそっと棚に戻す。

そういう場面に出会うと、ちょっとだけ寂しくなります。
(言ってることの意味はもちろん分かるので、ほんとにちょっとだけ。です。)

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私には子供がいないので、「育児の本当の大変さがわかってないからそんなこと言えんだよ!」と言われてしまえばそれまでなのですが、小さいお子さんにこそ、作家ものの器を使ってもらえたら嬉しいなと思うのです。

そりゃね、
ぶん投げても割れないプラスチックのお皿は安心だし、
食洗機でガシガシ回せたほうが便利だし、
キャラクターの絵が入ってたほうが子供は喜ぶのかもしれない。

でも、例えば粗雑に放り投げたお皿が割れてしまったら。
その驚きと悲しさは、その子に何か新しい気持ちを生むんじゃないかなと思うのです。

「ものは誰かの手で作られているんだよ」ということ。
「大切に扱わないと壊れてしまうんだよ」ということ。

愛着を持って、自分のものを大事にするという気持ちを感じてもらいたいな、と。

でもそういうふうに思うのは、単なる私のエゴかもしれないし、周りの母親たちを見ていると、男の子三人育ててる同い年の友人とかほんとにすごいな逞しいなと思うし、それ以外に大切にしなきゃいけないこと、優先しなきゃいけない時間もたくさんあるんだろうなと思い、冒頭のような場面でも、ちょっと寂しいなとは思いつつ「そうですよねぇ〜」と口を閉ざしてきました。

けれど、私の作品を手に取ってくださるお客さんの中には、小さいお子さんがいらっしゃる方ももちろんいて。
先日の展示会でちょっと勇気を出してこの話を聞いてみました。

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「お子さんが割っちゃうかも、とは思いませんか?」

するとそのご夫婦は笑顔で「全然!」と答えてくれて、お家での様子をたくさん聞かせてくれました。

毎日自分で「今日はこの色のお皿!」って家族の分を選んでくれること。

むしろ自分だけお父さんお母さんと違うもの(例えばプラスチックのお皿)を使っていたら「なんで自分だけ??」って思うんじゃないかな、ということ。

「これは大切に扱わないといけないもの」ということを、きっと分かってるんだと思いますよ、と。

私が想像していた以上に、頼もしい話で、ちょっと泣きそうになるくらいの嬉しい話でした。
話を伺っている傍らでは、そのお子さんが穏やかにぐっすり眠っていて、ああなんかすごくいいものをもらっちゃったなーと、救われた心地になりました。

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もちろん、「子育て」について私は何も経験値がないし、人それぞれ正解はないと思うし、家庭によって事情もさまざまとは思います。
なのでこれを強要するつもりはまっっったくないのですが。

「子どもに割られちゃうから、、、」と迷っている親御さんがいるとしたら、こんな考え方もあるかもよーということを、ちょっと知っていただけたらなと思ったのです。

***


子どもに限らず。
「料理へたっぴだから!こんな素敵な器に似合う料理作れないから!」
「今使ってるの100均のお皿ばっかりだから急に一枚作家さんのお皿があってもな〜」
「家が片付いてなくてむり!ものが多すぎるから〜〜」
とか。

なんやかんや色々事情はあると思うのですが、そういう人にこそ、「誰かがつくったもの」「自分の感性で、いいなと思って手に取ったもの」を日常に取り入れてみていただけたらなと思うのです。

それは別に私の器じゃなくてもよくて。例えば量産品にはない温かみを感じる木のスプーンだとか、デザイナーさんの生き方のかっこよさがそのまま表れたような美しいシルバーのアクセサリーだとか、なんだか分からないけどすごく心を掴まれた抽象絵のポスターとか。

その一つをきっかけに、
「あ、ちょっと料理がんばってみようかな。」「スーパーのお惣菜だけど、とりあえずお皿にそれっぽく盛り付けるだけでもやってみようかな。あれ、意外と楽しいかも。」
とか、
「これ使ってる時間がなんとなく落ち着いていいな。他にも揃えてみようかな。家にあるものをちょっと整理してみようかしら。」
とか、
「これが似合うように自分もかっこよくなりたいな。部屋片付けよ!姿勢を正して歩こ!」
なんてなったら最高じゃないですか。

そうなったら、それらのものは使いやすさや時短や便利さといった「機能」(それもそれでとても大事。企業努力万歳。)以上の意味を持つモノになるんじゃないかなと思うのです。


そういうものを、私は作りたい。

(突然のイーハトーブ感)

生活の全部をまるっと変えるのは難しいかもしれないけど、ちょっとずつでもそういうふうに気持ちを動かしていけたらいいのかなと思います。

そのきっかけが私のお皿やマグカップだったら最高に嬉しいです。
やったね、1UPしたねって言いながら握手しましょう。


読んでいただきありがとうございました! サポートしていただいた資金で美味しいものを食べて制作に励みます。餃子と焼肉とカオマンガイが好きです。