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新解釈 竹簡孫子の兵法

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世界最古の兵法書「孫子の兵法」。その孫子の兵法の中でも最も古い「竹簡孫子」を研究しているマガジンです。孫子の兵法理論である「正奇」や「虚実」「形勢」などの追概念は「陰陽理論」が適… もっと読む
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https://youtu.be/CEk8Bhw0Zrk

この動画は、孫子の兵法の全体像、計篇第一の概要を説明しています。

(49)「天」の一節の解読-竹簡孫子 地形篇第十

(49)「天」の一節の解読-竹簡孫子 地形篇第十

私の「孫子の兵法」研究の一つの成果は、地形篇の結文が「天」の解説であることを解明し、全体の内容の中で整合性のある説明ができる事です。

解読方法について説明したいと思います。
まず本文を見てみましょう。

【書き下し文】
吾が卒の以て撃つ可(べ)きを知るも、而も敵の撃つ可からざるを知らざるは、勝の半(なか)ばなり。敵の撃つ可きを知るも、而も吾が卒の以て撃つ可からざるを知らざるは、勝の半ばなり。

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(48)将軍の仁と厳-竹簡孫子 地形篇第十

(48)将軍の仁と厳-竹簡孫子 地形篇第十

東洋思想の特徴は、白黒をはっきりつけられないことです。正しいことは状況によって変わります。論語の孔子先生は、ある弟子には進めと言い、またある弟子には止まれとアドバイスをしたように、とても大切な能力であっても過剰であれば、害になるため抑えるように戒める訳です。

このような考え方を「中庸」と言います。この「中庸」の考え方は、相反する二つの要素のちょうど真ん中辺をとるというように考える人がいますが、そ

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【孫子の兵法】横山成人の新解釈「予告編」

「孫子の兵法」を本文読むだけでは、なかなかわからない深い内容を、わかりやすく解説をしていきます。

本動画、予告編は、孫子の兵法の「全体像」、新解釈はどこが違うのかを


この講座で話す新解釈の孫子の特徴は、
・竹簡版「孫子」を底本としています。
・正と奇の無限の変化の具体的な説明があります
・自然の摂理(陰陽理論)を軍事で解説している内容を紹介します
・全体を通して整合性の取れた兵法理論を展開し
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(47)国宝級の将軍-竹簡孫子 地形篇第十

(47)国宝級の将軍-竹簡孫子 地形篇第十

複数の将軍を束ねる「上将軍」、つまり現場の最高責任者はどうあるべきか。最上段の視点から行うべき仕事を「孫子」では次のように教えてくれます。

【書き下し文】
夫れ地形は兵の助けなり。敵を料(はか)って勝を制し、険易遠近を計るは、上将の道なり。此れを知りて戦いを用うる者は必ず勝ち、此れを知らずして戦いを用うる者は必ず敗る。
故に戦道必ず勝たば、主は戦う無かれと曰うとも必ず戦いて可(か)なり。戦道勝た

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(46)敗北の原則-竹簡孫子 地形篇第十

(46)敗北の原則-竹簡孫子 地形篇第十

孫子の兵法は、軍人のためというよりは、君主のための本と言える。国家を生き残らせるために、戦わずして勝つ戦略を説くわけですが、自分の任命した将軍が、ミスをしたり、勝手な行動をしてしまうことで全体の戦略が狂うことがも最も恐ろしい訳です。孫子の兵法は、自らの体勢を悪化させない、戦力を維持することが重要な訳ですが、それを破ってしまう将軍の過失を体系的に教えてくれます。

これを「敗の道」、つまり「敗北の原

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(45)地形の原則-竹簡孫子 地形篇第十

(45)地形の原則-竹簡孫子 地形篇第十

地形篇の冒頭は、「地」の解説から入ります。
地形篇で述べられる六つの地形(通/桂/支/隘/険/遠)は、計篇の「地」で説明されている「地とは、高下・広狭・遠近・険易、死生なり」と繋がっていると解説をしました。(4)地形について-竹簡孫子 計篇第一

それでは一つ一つ解説していきたいと思います。

【書き下し文】
我も以て往(ゆ)く可(べ)く、彼も以て来たる可きは、通ずと曰う。通ずる形には、先ず高陽に

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(44)正の兵法/計篇の補足-竹簡孫子 地形篇第十

(44)正の兵法/計篇の補足-竹簡孫子 地形篇第十

それでは、地形篇第十の解説をしていきましょう。

計篇から行軍篇までの九つは理論の展開が繋がっておりましたが、この地形篇からの四つはこれまで述べてきた兵法理論の詳細な説明になります。

地形篇は、「正の兵法」についての詳細説明。九地篇は「奇の兵法:の詳細説明になります。地形篇と九地篇は対の関係であり、兵法のより深く奥深い内容を「正奇」の両面から解説するのが特徴です。また、地形篇は、計篇の内容の補足

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(42)敵軍の洞察法-竹簡孫子 行軍篇第九

(42)敵軍の洞察法-竹簡孫子 行軍篇第九

行軍篇の三つの解説は、敵軍を洞察する方法です。

ここまできて初めて、戦場で敵軍と遭遇して、敵の状況を理解する方法になります。敵軍は常に動き、状態も変化していることが特徴です。

戦力が充実しいる場合もあれば、飢えて病気になっているかもしれない。敵は敵の主体的な動きの中で、プラスの状況にもマイナスの状況にもなっています。その状況を見極めることができなければ、自軍のコンディションが良い状態であっても

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(41)必勝の行軍法と危険な場所の対処法-竹簡孫子 行軍篇第九

(41)必勝の行軍法と危険な場所の対処法-竹簡孫子 行軍篇第九

それでは行軍篇の二つ目の解説に入ります。ここでは兵士のコンディションを健康に保ち、地形による判断ミスをしないことについて言及します。

「孫子」は、自軍と敵軍の両方の状態が、正(陽/プラス)の状態を保ち、敵軍の状態を奇(陰/マイナス)の状態に転じ陥るらせることで、勝利を収めるという考え方をします。

行軍篇においてもこの構図は変わらず、正(陽/プラス)の状態である、日当たりが良いなどの地形の助けが

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(40)基本地形の進み方-竹簡孫子 行軍篇第九

(40)基本地形の進み方-竹簡孫子 行軍篇第九

行軍篇第九は、現代人が読むと非常に面白くない。古代の戦争の具体的なノウハウ、行軍方法についての知識を学んでも活用できることがほとんどないからです。

この篇は、九変篇とセットで読んではじめてわかります。敵軍の情勢を変化させるための具体的な方法や駆け引きとして読むと味わいが出てくるし、現代においても応用する方法が見えてきます。

九変篇では、「九変」という九つの項目と利と害の両方に変会する五つの地形

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(39)将軍の五つの欠格事項-竹簡孫子 九変篇第八

(39)将軍の五つの欠格事項-竹簡孫子 九変篇第八

それでは九変篇の末尾の文章の解説です。ここは将の「五危」と言われるものです。

「九変の利」に通じて、地の利を得るかどうかは将軍によるからです。孫子は緻密に一つ一つ論理を積み上げていきます。ここまで述べてきた兵法理論の内容、積み上げてきた優位性は、将軍の性格によって台無しになってしまう、軍事において非常に重要な要素なのです。

「五危」とは、「必死」「必生」「忿速」「廉潔」「愛民」の五つです。

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(38)利と害の両面思考-竹簡孫子 九変篇第八

(38)利と害の両面思考-竹簡孫子 九変篇第八

孫子の兵法の将軍の能力(智信仁勇厳)の筆頭は「智」です。孫子のいう「智」は、「利」と「害」の二つの側面から思考できるかどうかです。

私の新解釈は、自然の摂理である陰陽の原理を土台にしておりますので、陰陽で物事を考えられかということでもあります。

両面思考ができると一体どういうメリットがあるのでしょうか。
プラスの面、利益に対してマイナス面、損害について考えることで確実に達成することができるよう

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(37)情勢を変化させる九つの要素-竹簡孫子 九変篇第八

(37)情勢を変化させる九つの要素-竹簡孫子 九変篇第八

九変篇にさまざまな疑問が存在しています。「九変」とは何か?いくつあるのか?という問題です。というと読み方によると十になるのです。

九変篇の冒頭の本文を確認しましょう。

【書き下し文】
孫子曰く、凡そ用兵の法は、将の命を君より受け、軍を合し衆を聚むるに、圮地(ひち)には舎(とどま)ること無く、
衢地(くち)には交を合わせ、
絶地(ぜっち)には留まること無く、
囲地(いち)なれば則ち謀り、
死地(

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