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「犬王」とエクストリーム出社の話

フェス映画だフェス映画だと言われていましたが

フェス映画でした(どやぁ

ちなみに偉そうに言ってみたけど四四田はフェスは行ったことない(四四田はインドア派です

実在した能楽師「犬王」。

能楽の祖、観阿弥・世阿弥と人気を二分したと言われているにも関わらず、その作品がほとんど残っていない謎多き人物。
その生涯と、琵琶法師友魚との友情を描いたアニメーション。

5/28の公開後、すぐに行ったのにパンフ完売の衝撃で売店で一瞬呆けた
その後別の映画館で無事ゲットしておりますのでご心配なく

監督は湯浅政明監督、
原作古川日出男先生、
脚本が野木亜紀子さんで、
音楽が大友良英さん、
主演の犬王が女王蜂のアヴちゃん、
友魚は森山未來さん
…豪華やな。
観に行かない理由がないラインナップではないかこれは。

というわけで前日深夜に突然チケットを買った

ちなみに四四田はこの日普通に出勤日でしたが、朝イチの映画館で見てそのままエクストリーム出社しました。

エクストリーム出社にはもってこいの着火装置だったことは確か。保証する。めちゃくちゃノリノリで出勤した。ロックは強い。

友魚と犬王の友情物語、というよりも、噂のミュージカルシーン、美しくロックな能楽シーンが心に残ってる。

物語は足利幕府の御代。異形の能楽師として生まれた犬王が、誰にも知られず打ち捨てられ、誰からも語られずにこの世に残ってしまった、平家の亡霊の物語をひとつ語るごとに、本来の肉体を取り戻していく。

この呪いと亡霊の魂と犬王の関係性が、ものすごくフラットで、ああ、そうかもな、魂の世界、人間としての肉体とか思考とかの関係ない、生命だけが星みたいに、炎みたいにただ存在するだけの、量子の世界ではこうかもな、と思わせられましたね

呪いを受けて激しく害され、命が潰えそうな胎児に、語りたい言葉を抱えた亡霊たちが吸い寄せられるようにその穴を埋めて命を繋ぐ、そうやって犬王が生まれてくる様が、なんだかものすごく尊かった。

友魚と犬王の友情を具体的に描く場面は予想していたよりは、少なかったかな。でも、劇中で大衆の前で披露されるあれだけのパフォーマンスを、二人で作り上げているのならそこにはきっとたくさんの対話やコミュニケーションがあったはずで、だからあのパフォーマンスが描かれていることがもう二人の友情の証。

猿楽ミュージカルシーンは、ロックありブレイクダンス(松葉杖のブレイクダンサーもいたね)あり、シルクドゥソレイユにバレエと、ありとあらゆる多様な現代的舞踊・音楽表現が詰まっていて、それに熱狂する京の人々に、当時新しい猿楽にリアルタイムで触れていた人たちの感動や、興奮ってきっとこんな感じだったよね、ってそう思わせてもらえるのが楽しかったです。

そうしていつの時代も、力を持ち過ぎた、民衆の心を掴み過ぎた芸術家に訪れる、権力者との攻防。

犬王の得意ジャンルは「天女舞」だった、とされる話もあるようですが、自ら絡め取られる道を歩んでいく犬王の最後の舞はそれを表しているのかな。

犬王はもう平家物語を歌わない。美しい天女舞が無音の中で通り過ぎていくのが切ない。

すごく好きだったのは、犬王の兄弟たちが、大衆の心を掴んでいく犬王に対して「すごいじゃーん」と呑気なスタンスでいるところでした。
犬王は、あの兄弟にとって普通に兄弟だったんだな。サラッと当たり前みたいに描かれてたけどそれってすごいな。

それは、友魚が元々所属していた琵琶法師たちのギルド「覚一座」の先輩琵琶法師たちにも言えるところなんだけど。迫害を受け始めた友魚を、なんとか安全に無事に生かそうと道を示す先輩たちが、好きでした。
新しいものに対しての、嫉妬や羨望から来る文句は言いつつ、圧倒的才能に対してそれを庇ったり守ったりしなくちゃならないと咄嗟に動く、理想的なアーティストたち。

四四田は、芸術家は芸術を愛する限り、芸術を守ろうとする限り、芸術も芸術家を愛して守ってくれると思っているのね。そう信じている。
だからこそ、そうやって芸術の愛を捨てずに守るそのためには、時には踏み絵を踏む道もありなんじゃないか。四四田は、踏み絵を踏めるタイプの、生きることにしぶといアーティストがより好みではありますね。

あの犬王の兄弟たちには、能楽師としての才能が、わかりやすく無いからこその能天気さだったかもしれない。絶大な才能に対して嫉妬できるのもまた才能で。その才能があることは辛いよね、と犬王の父親にも同情する。でもそんな能天気な兄弟の情が見えたのは、ちょっとしたオアシスだった。
犬王にとってもそうだといい

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