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#10 カフカ短編『狩人グラフス』

インスタを見ていると、美味しそうな料理動画が流れていて、ついつい見入ってしまう。
家にある材料で簡単にできそうなものを時々参考にして作っている。そのうちの一つがこちら。

ツナのリエット

ツナにクリームチーズを混ぜ、ニンニクやスパイスなどを混ぜるだけでそれなりのパテになって、バケットに合う。
滅多に飲まないけれどワインにも合うだろうし、おにぎりの具にもできる。軽食のお供はやはり本で、今日もカフカ短篇集をパラパラと振り返りながらつまむのだ。

ということで、今日は『狩人グラフス』という作品について綴っていく。
岩波文庫と白水uブックスに掲載されているが、少し異なる部分があった。もちろん訳者は同じであるので、訳違いとかそういう問題ではない。

そもそもカフカは生前、数冊のノートに短編作品を書き溜めていたようだ。
解説を読んでいると、『狩人グラフス』に関連する作品の断片が別のノートからも発見されたのだと思われる。ということで、白水uブックスの方は、別のノートからも引き寄せた感じになっており、岩波文庫収録と比較すると、ページ数が追加されている。
未完ではあるが…。

そして、例によってこの作品もまた不思議な話である。

「あなた、死んだ身でいらっしゃる?」
「そうとも、ごらんのとおりだ」
「しかし生きてもおられるようで」
「そう言えばそうだな」

本文より

まあ、こんな感じ。
この死んだ身であり生きてもいる人物が、狩人グラフスだ。
どうやら、狩りの最中にドイツの深い森で岩から転げ落ちて死んだようだ。しかし、あの世へ導く舟乗りが舵をとりまちがえてしまい、地上に戻ったとか。それからというもの、ずっと舟に揺られている。

「ところで、あの世とのかかわりはいかがなもので」
「むやみに大きな階段の上にいるようなものさ」

本文より

きっとこれからもずっと、水上をどこともなく漂い続けるのだろう。あの世へ辿り着くまで。
なお、白水uブックスの方に収録されている断片を読むと、舟に揺られ続け、なんと1500年経過してしまったらしい。

今なお、どこか水上を漂っているのかもしれない。

口絵の版画(ジィギー・シェンク)
「狩人グラフス」のワンシーン
舵をとっている舟乗りと横たわるのがグラフスだろうか

ちなみに、「グラフス」はラテン語で「カラス」だそうだ。
「カフカ」はチェコ語で「カラス」というのは知る人も多いだろう。

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