見出し画像

「音楽視点から見たD.LEAGUE 23-24」ROUND.5:接戦と均衡

プロダンスリーグ『D.LEAGUE 23-24 ROUND.5』が12月28日に開催された。今回も全6試合を音楽的な視点を交えてレポートしていこう。

世界でも類を見ない本リーグは2021年、コロナ禍の真っただ中で開幕した。2週間に1試合という過酷なスケジュールを戦い抜き、試行錯誤のなかで3シーズンを既に終了。特に昨シーズンは念願となるフルキャパシティの観客とともに開催され、レギュラーシーズンはCyberAgent Legit、CHAMPIONSHIPはKADOKAWA DREAMSが優勝を収めた。

レギュラーシーズンは開幕後、半年間・14ラウンドに及ぶ。参加するのは、昨季に引き続きavex ROYALBRATS、KADOKAWA DREAMS、KOSÉ 8ROCKS、CyberAgent Legit、SEGA SAMMY LUX、SEPTENI RAPTURES、FULLCAST RAISERZ、Benefit one MONOLIZ、Medical Concierge I'moon、dip BATTLES、LIFULL ALT-RHYTHM、Valuence INFINITIES、さらに新チームのDYM MESSENGERSを加えた計13団体。

ROUND.5のジャッジはSHINICHI、MADOKA、WREIKO、KATSUYA、Ruuが務め、採点は「スキル」、「クリエイション」、「コレオグラフ」、「スタイル」、「完成度」という観点で行われる。

全ラウンドは以下のアーカイブにフル尺公開されているので、未見の方はぜひチェックしてほしい。



■第1試合
Benefit one MONOLIZ vs Valuence INFINITIES

青:Benefit one MONOLIZ
テーマ:「Skin」
楽曲:「SKIN」(ft.
Kira / prod:age

赤:Valuence INFINITIES
テーマ:「CARNIVALと爆発力」
楽曲:「SESSIONS」(Prod:
DJ MONJA

第1試合の開幕から世界観を全開にしてくれたBenefit one。テーマに沿った衣装とセクシーなパフォーマンスが素晴らしかった。Kiraのスモーキーな歌、ageによる帯域のスペースを活かしたビートも完成度が高い。そしてエンディングは音が左右にパンしてから、タイトルコールに西洋画のようなポージングが重なる。ああ美しい。

また本パフォーマンスを皮切りにROUND5ではテンポチェンジ楽曲がいくつか登場するが、変わり目をどう処理するかがポイントに思えた。この曲の場合は1拍先行する歌のメロディがテンポを明示するので、そこに合わせているように見える。

なお鏡を使ったネタといえば、2020-2021のavex ROYALBRATS「QUEEN」。この衝撃がなかったら本リーグを追うことはなかっただろう。

迎え撃つValuenceはストリートやブレイキンな雰囲気を強く醸し出しながら、アフロパーカッション主体の楽曲を使ってファンキーにパフォーマンス。両チームでコントラストを生んだ対決となった。

結果は3-3のドロー(AUDIENCE:赤/SHINICHI:赤/MADOKA:赤/WREIKO:青/KATSUYA:青/Ruu:青)。


■第2試合
dip BATTLES vs FULLCAST RAISERZ

青:dip BATTLES
テーマ:「7PAINS~7つの痛み~」
楽曲: 「Why…」(ft.
Asu / Prod:taishi kubo

赤:FULLCAST RAISERZ
テーマ:「BEAUTY JUDGEMENT ~美の審判~」
楽曲:「美の審判」(Prod:
清水舞手
SP:SHIMIZU MASH

続いての試合の先行はdip。重めなテーマだが、チルなビートを選択したことによってバランスが取れていた。なんと今回のパフォーマンス楽曲は5日前に決まったのだという。なんと恐ろしい……。

そしてFULLCASTのステージはSPに清水舞手を迎えたvogueとKRUMPの合わせ技。「破壊の女王に壊される肉体派舞踏集団」といった趣の痛快な作品だった。楽曲は清水の尖ったボイスが目立ち、昨シーズンまでのBenefit oneの音楽を彷彿とさせた。

勝敗は1-5でFULLCASTが勝利(AUDIENCE:赤/SHINICHI:青/MADOKA:赤/WREIKO:赤/KATSUYA:赤/Ruu:赤)。

<勝利チーム:コメント>
KTR「MASHが作った世界観なんですけど、ひとりひとりに美しさや個性があってジャッジするものではない。そういう想いが込められた作品でした。今年最後のラウンドでしたが、辰年はRAISERZの年にしたいと思います」


■第3試合
SEPTENI RAPTURES vs avex ROYALBRATS

青:SEPTENI RAPTURES
テーマ:「DANCE DISCUSSION」
楽曲:「ZONE」(ft. 
小名坂誠哉山口由馬 / Prod:AMI、SAKURA)

赤:avex ROYALBRATS
テーマ:「謝罪」
楽曲:「誠にDO MY THING」
(feat. KOPERU / Prod:
Ryotaro Koga芦田菜名子
SPダンサー:みゆてぃ~、Kaiji

SEPTENIの白い衣装にドラムセットだけのミニマルな曲を合わせ、机を挟み議論しているかのような表現に対し、avexはスーツ姿でコミカルな内容がフレッシュ。

前者の楽曲で新進プレイヤー・小名坂誠哉がドラムを叩いている点は見逃せない。さらに後者の楽曲「誠にDO MY THING」にプロデューサーとしてクレジットされている芦田菜名子はTioの名曲「Cloud 9」のリミックスでKAHOHのヴァース部分を共作した人物だ。

結果は3-3のドロー(AUDIENCE:赤/SHINICHI:赤/MADOKA:青/WREIKO:青/KATSUYA:青/Ruu:赤)。


■第4試合
LIFULL ALT-RHYTHM vs KOSÉ 8ROCKS

青:LIFULL ALT-RHYTHM
テーマ:「忘年会」
楽曲:「VIBES UP」(Prod:
今井悠

赤:KOSÉ 8ROCKS
テーマ:「SAMPLING METHOD」
楽曲:「Sampling method」(Prod:
D3adStock

今シーズンいまだ勝利がないLIFULLだが、それを負い目だと感じさせないようなパフォーマンスだった。ダンスホールレゲエなビートで忘年会を表現したのは面白い。踊りも最後の決めもよかった。スーツも似合っている。

一方のKOSÉはスポットライトを駆使したスキルフルなショウケース。ただ途中でテンポが上がる部分をスピンで処理でするのは見事だったものの、元の速さに戻る瞬間のYU-KIのダイナミックなバク宙は緩やかなタイムストレッチの影響で着地がワンテンポ走ってしまっている。ここをサポートするような仕掛けがあれば、よりクオリティが上がるような気がした。

接戦に思えたが、4-2でKOSÉの勝利(AUDIENCE:青/SHINICHI:赤/MADOKA:赤/WREIKO:青/KATSUYA:赤/Ruu:赤)。

<勝者コメント>
Ryo-spin「自分たちだけでなく、照明さんや衣装さんがいたり、楽曲を作ってくれた〇〇君だったり、ディレクター、皆さんのサポートがあって最高のパフォーマンスができています。悔しい結果の時もファンの皆さんのDMがあったり。たくさんのエールで戦ってこれています。勝敗も大事ですけど、Bボーイ、Bガールとして常に新たなものに挑戦していこうと思います


■第5試合
KADOKAWA DREAMS vs DYM MESSENGERS

青:KADOKAWA DREAMS
テーマ:「わがまま」
楽曲:「Surviving」(Prod:
taishi kubo / FASM

赤:DYM MESSENGERS
テーマ:「taketetar」
楽曲:「taketetar(Prod:SAROtap)」

先ほどのdipに続き、KADOKAWA楽曲でもtaishi kubo。恐らくリーグ初だと思うが、異なるチームに同一のプロデューサーが関わっている。

楽曲はFASMことHINATA.Mが携わり、ショウケースは「ビート、メロディー、Rap、踊り、様々な物を自分がやりたいようにKEITAさん含め、KDのメンバーと共に試行錯誤した」という内容。開幕シーズンのRIEHATAのようにダンサーの感覚をもっと生かした楽曲も増えてほしいところ。

DYMはタップダンサー・SAROをフィーチャーしたインド風な楽曲で勝負。だがタップの音は聴かれず。純粋に作曲として参加したのかもしれない。2段階のスピードアップがあるが、境目で同じフレーズを挟むのが特徴。最終的に4つ打ちになるのも面白い。

結果は3-3でドロー(AUDIENCE:青/SHINICHI:青/MADOKA:赤/WREIKO:赤/KATSUYA:赤/Ruu:青)。


■第6試合
Medical Concierge I'moon vs SEGA SAMMY LUX

青:Medical Concierge I'moon
テーマ:「HONESTY」
楽曲:「朔」(Prod:
INCH BASE

赤:SEGA SAMMY LUX
テーマ:「BLUE ALIEN」
楽曲:「UNTITLED」(Prod:
Lucas Valentine

Medical Conciergeはテーマソングを担当したINCH BASEをプロデューサーに迎え、歌詞が活きるようなジャズダンス路線。途中に3拍子を挟むギミックも。ただ日本語メロディを前面に出していくのであれば、やはり「arise」のようなダンスと拮抗するような曲をもう一度聴きたい。白の衣装はお洒落でよかった。

SEGA SAMMYはエンタメとダンスの好バランス。負けを知らなかった時代の勢いが復活してきたように思える。コレオグラフはビートをダンスで乗りこなしていくような印象。

結果は3-3のドロー(AUDIENCE:赤/SHINICHI:赤/MADOKA:青/WREIKO:青/KATSUYA:青/Ruu:青)。


■NO MATCH
CyberAgent Legit


■総合ランキング

1位.KADOKAWA DREAMS(13)
2位.CyberAgent Legit(12)
3位.SEPTENI RAPTURES(11)
4位.Benefit one MONOLIZ(10)
5位.Valuence INFINITIES(7)
6位.FULLCAST RAISERZ(7)
7位.avex ROYALBRATS(7)
8位.KOSÉ 8ROCKS(6)
9位.SEGA SAMMY LUX(4)
10位.DYM MESSENGERS(4)
11位.Medical Concierge I'moon(3)
12位.LIFULL ALT-RHYTHM(2)
13位.dip BATTLES(0)
(カッコ内はCSP=チャンピオンシップポイント)

MVD(Most Valuable Dancer):KTR(FULLCAST RAISERZ)
私的楽曲賞:Benefit one MONOLIZ「SKIN」


なんと、6試合中4試合がドロー。確かに甲乙を決めるのは困難であるが、この均衡を抜け出して上がってくるチームはどこだろう。引き続き見守っていきたい。

まだまだ更新が遅れてしまっているが、次回も楽しみだ。

※企画存続のために投げ銭をぜひお願い致します!

ここから先は

0字

¥ 300

この記事が参加している募集

イベントレポ

活動継続のための投げ銭をいただけると幸いです!