越阪部奈緒美(おさかべなおみ)

某メーカーにて医薬品の薬理安全性研究・機能性食品研究開発業務に従事したのち、芝浦工業大…

越阪部奈緒美(おさかべなおみ)

某メーカーにて医薬品の薬理安全性研究・機能性食品研究開発業務に従事したのち、芝浦工業大学・システム理工学部・生命科学科において教育・研究活動を展開中。専門は食品機能学、特にポリフェノールの機能性を長年にわたって研究しています。

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  • これからどうする?機能性食品

    医薬品研究開発9年・トクホ研究開発14年・大学で教育・研究15年と色々な立場から機能性食品に関わってきた筆者が ”んなわけあるかい!” を忖度なしに語るとともに、”今後の在り方”について皆さんと考えていきたいと思います。

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みんなの大問題"食品の健康情報"を考えよう!

コロナウイルス禍によって生活が変化し、 身体や精神の不調をきたしている方も多いのではないでしょうか? そんな時に、「ストレスを緩和する」とか 「睡眠の質を向上させる」とかいった食品のPRを耳にすれば、 すぐにでも飛びつきたくなってしまうのは人の性。 戦後に生まれた「健康食品」は、高度成長期、バブル期といった 好景気にはぐくまれて「機能性食品」へと変身しました。 そして経済が大きく失速したこの30年間には、 急速に成長を遂げ(ある意味退化?)し、現在のカオスに到っています。

    • 【紅麹】薬害に学ぶ

      この記事でわかること 【一般消費者・食品事業者向け】 1. 機能性食品の健康被害とその救済 2. 薬害における被害者の救済の歴史 1. 機能性食品の健康被害とその救済紅麹事件は予想よりも大きく拡大し続け、わが国だけでなく台湾へまで広がっています。台湾ではトクホに似た制度として、”健康食品”があり(下)、政府によって有効性・安全性の審査を受けて認可された商品にのみ、表示ができます。何故か紅麹は”規格基準型(個別の審査は無く届出のみ)”となっているようです。いったいどのような

      • 【紅麹】当該メーカーが製造した商品は”食品”なのか?

        この記事でわかること 【一般消費者・食品事業者向け】 1. 当該商品は食品?医薬品? 2. 行政の重大な見落とし(?) 3. HACCPの形骸化(?) 4.果たして真相は? 1. 当該商品は食品?医薬品?食品と医薬品の法律上の区分については、これまでにもお話してきました。 これに加えて厚生労働省では、”物”としての区分も定めています。 通称”食薬区分”(正式名称:専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト)があります。ここに収載されていないものは、原則食品とみな

        • 食品は医薬品ではない。独自のメカニズムで恒常性を維持している。

          この記事でわかること 【一般消費者・食品事業者向け・機能性食品研究者向け】 1. 食品は医薬品ではない 2. 食品独自の恒常性維持作用 3. 医薬品の背中を追い続けるのはやめませんか? 1. 食品は医薬品ではない私たちの祖先が誕生した500万年前、食料を確保することが最優先事項でした。種の保存のため、食事から摂取した栄養素によってエネルギーを作り出し、また食料を確保するために活動し、繁殖するというサイクルが生き物の使命だからです。 500万年前には狩猟・牧畜・農耕などの技術

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        • これからどうする?機能性食品
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          【緊急】紅麹と機能性表示食品(2)

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1.当該メーカーの瑕疵 2.行政側の瑕疵 3. 機能性表示食品制度の瑕疵 4. 食品機能成分を錠剤・カプセルで摂取することの危険性 1.当該メーカーの瑕疵当該メーカーが消費者庁に2023年10月11日以降に提出した紅麹の安全性についての届出書においては、海外での有害事象を基に食品安全委員会が注意喚起していた内容には触れていません。それでは当該メーカーはこのことを知らなかったのでしょうか? 実際に回収の対

          【緊急】紅麹と機能性表示食品(2)

          【緊急】紅麹と機能性表示食品(1)

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1.同じ紅麹であっても食品原料(サプリ)と食品添加物(色素)は異なる 2.原因物質について  2.1. 発がん物質シトリニン  2.2. 機能成分モナコリンK  2.3. 謎の物質X 1. 同じ紅麹であっても食品原料(サプリ)と食品添加物(色素)は異なる 現在紅麹サプリの健康被害が社会問題化し、紅麹を使用した食品全体の回収が進んでいます。紅麹(Monascus purpureus)は真菌類(カビ類)の一種

          【緊急】紅麹と機能性表示食品(1)

          これからどうする?機能性食品

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1.機能性表示食品の経済効果 2.事後チェックの影響? 3.消費者の購買行動の推移 4. なぜこのような記事を書いているのか? 1. 機能性表示食品の経済効果 機能性表示食品の届出の質が低いということ、しかもその事実は国内にとどまらずに全世界に発信されてしまったということをお伝えしました。  それでは制度の本来の目的である経済への波及効果についてはどうなんでしょうか?  機能性表示食品が発売された20

          これからどうする?機能性食品

          【機能性表示食品・トクホの問題点④】      ~荒っぽいぞ!システマティックレビュー~ 

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1.システマティックレビューとは? 2.機能性表示食品のシステマティックレビューの現状 1.これまでのおさらい 機能性表示食品の届出が受理される要件としては、トクホと同様な介入試験、そしてもう一つがシステマティックレビューです。  実に機能性表示食品の9割以上は機能性の科学的根拠をシステマティックレビューを用いて説明しています。  我が国では2015年から第三次安倍政権のもと、成長戦略を目的とした規制改

          【機能性表示食品・トクホの問題点④】      ~荒っぽいぞ!システマティックレビュー~ 

          【機能性表示食品・トクホの問題点③】                  ~利益相反(COI)問題~

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1. 利益相反(COI)って何? 2. COIと研究不正 3. 機能性食品におけるCOIの現状 1. 前回のおさらい 前回、ちらっとCOIのお話をしました。COIはconflict of interastの略号で、 日本語では利益相反と訳されます(詳しくはこちら)。  利益相反と言われても、何のことかさっぱりわかりませんよね。 一般的には、 ------------------------------

          【機能性表示食品・トクホの問題点③】                  ~利益相反(COI)問題~

          【機能性表示食品・トクホの問題点②】                ~介入試験におけるバイアス~

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1. バイアスとは? 2. エビデンスとバイアスの関係 3. バイアスの種類と研究結果への影響 1. これまでのおさらい トクホ・機能性表示食品の認可あるいは届出受理には ① ランダム化比較試験 ② (機能性表示食品に限っては)システマティックレビューといった厳密な方法が求められています。そのため トクホ”トクホや機能性食品表示のエビデンスのレベルは一見高そう” というお話をしました(詳しくはこちら)

          【機能性表示食品・トクホの問題点②】                ~介入試験におけるバイアス~

          【番外編】決して引っかかってはいけない”怪しい水”

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者向け】 1. 次から次へと現れる怪しい”水” 2. 市販されている色々な水とその特徴(アルカリイオン水・酸性水・火曜深層水・ミネラルウォーター) 3. 水は、しょせん水。生物学的には不活性。 1. 次から次へと現れる怪しい”水” 2023年5月に「がん治療に効き、副作用のない飲料水を開発」している健康食品販売会社「ウィンメディックス」社長が逮捕されました。無登録で自社の未公開株を売り出して集めた7億円を寄付金と偽った疑いだそうで

          【番外編】決して引っかかってはいけない”怪しい水”

          【トクホ・機能性表示における問題点①】 健康情報におけるエビデンスとは?

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1. エビデンスとは? 2. エビデンスレベルと信頼性 3. エビデンスの評価に用いられる実験の種類 1・エビデンスとは?  トクホや機能性表示食品が利用される一方で、”トクホや機能性表示食品はエビデンスが充分ではない”という批判を受けることがしばしばです。  近頃は色々な業界でこのエビデンスという言葉が使われるようになりました。例えば、「今日の会議についてエビデンスが欲しい」とは「議事録」を残しておい

          【トクホ・機能性表示における問題点①】 健康情報におけるエビデンスとは?

          【番外編・カカオ抽出物大規模摂取試験】2万人・3.6年間摂取の心疾患に対する作用

          この記事でわかること 【一般消費者・機能性食品研究者向け】 アメリカで行われた高齢者を対象としたカカオポリフェノール画分の 長期大規模摂取試験結果(COSMOS trial)の速報     一日500mgのカカオポリフェノールの摂取は、        心臓血管系疾患死を27%抑制した  2015年6月から2020年12月まで、アメリカの年齢72.1(±6.6、標準偏差*)歳の21,442人の参加者を4群;カカオポリフェノール(500 mg flavanols/d, incl

          【番外編・カカオ抽出物大規模摂取試験】2万人・3.6年間摂取の心疾患に対する作用

          【機能性食品を取り巻く環境③】フードファディズム

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】 1.フードファディズムとは? 2.栄養”感”とフードファディズム 3.形を変えてはやってくるフードファディズム 1. これまでのおさらい 以前の記事で、栄養学的な栄養価と、社会通念上の栄養”感”は大きく異なるらしい ということをお伝えしました。それはおそらく、栄養(?)や食品をを取り巻く様々な立場にある大人たちの間で情報戦に私たち一般消費者が巻き込まれてしまい、義務教育で習ったはずの栄養価とは異なる 栄養

          【機能性食品を取り巻く環境③】フードファディズム

          【機能性食品を取り巻く環境②】これって食品?医薬品?

          この記事でわかること 【一般消費者・食品事業者向け】 1.  日本における医薬品と食品の区別(しっかり版) 2. 機能性表示の既得権 1. これまでのおさらい 日本における食品と医薬品の区分については、ざっくりとは別ページでお話ししました(詳しくはこちら)。一般消費者の感覚だと、CMでもそう言ってるし、おなじようなサプリメントでも”医薬品”の方が”食品”より効きそうな気がしますね。 2.(しっかり)食品と医薬品の区別 次の図には、「日本の法規制におけるヒトの口から摂取する

          【機能性食品を取り巻く環境②】これって食品?医薬品?

          【機能性食品を取り巻く環境①】栄養価と栄養”感”

          この記事でわかること【一般消費者・食品事業者向け】 1. 栄養、その受け止め方の変遷 2. 栄養”感”の実態調査 1.「栄養」の受け止め方の変遷 TVの情報番組や料理番組を見ていると 「これって栄養ありますよね」というコメントをよく耳にしますよね。 ”ムムム、栄養って・・・”と「モヤモヤ」するのは筆者だけでしょうか?  戦後の日本の栄養不足は大変深刻なものでした。これを改善することで日本人の寿命は極端に延長し、現在を迎えているということについては、以前お話ししました。この

          【機能性食品を取り巻く環境①】栄養価と栄養”感”