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【機能性食品を取り巻く環境②】これって食品?医薬品?

この記事でわかること 【一般消費者・食品事業者向け】
1.  日本における医薬品と食品の区別(しっかり版)
2. 機能性表示の既得権

1. これまでのおさらい


日本における食品と医薬品の区分については、ざっくりとは別ページでお話ししました(詳しくはこちら)。一般消費者の感覚だと、CMでもそう言ってるし、おなじようなサプリメントでも”医薬品”の方が”食品”より効きそうな気がしますね。

2.(しっかり)食品と医薬品の区別


次の図には、「日本の法規制におけるヒトの口から摂取するものの分類」
についてしっかりと示しました。この分類に従って、販売者(薬剤師・登録販売業者など)、チャネル(薬局・コンビニ・ネット)や、配合可能な成分に違いがあります。

日本の法規制におけるヒトの口から摂取するものの分類

 これらの中でも、特に区別が難しいものどうしを、
同じ色で表しました。
特に、機能性表示食品トクホは判別しにくいかと思いますが、それ以外にも、ビタミン剤や栄養ドリンクなども、大変わかりにくい商品群です。

また青で囲った部分は、機能性あるいは効能効果表示を
国が許可している」製品群です。

「国が許可している」ということはすなわち、
①安全性が担保されている
②それ相応の科学的根拠がある(曖昧ないもの後付けのものもある、後述)
(健康増進法および景品表示法に基づく)虚偽誇大表示に当たらない
ということになります。

 例えば、ビタミン剤ですが、ネーチャーメイド(大塚製薬)、ファンケルやDHCの製品は栄養機能食品ですが、ポポンS(シオノギ)は第二類医薬品、チョコラBB(エーザイ)は第三類医薬品、アリナミン(アリナミン製薬)に至っては種類によって第三類医薬品のものと指定医薬部外品のものがある始末です。

 また栄養ドリンクですが、ポカリスエットやオロナミンC(大塚製薬)は一般食品、経口補水液OS1(大塚製薬)は病者用食品、リポビタンD(大正製薬)は指定医薬部外品、はユンケルシリーズ(佐藤製薬)は第二類医薬品~指定医薬部外品となっており、消費者を大変惑わせます。

3. 表示と既得権益

 何故こんなに複雑な状態になっているかというと、以前お話しした戦後の栄養不足に端を発しているわけです(詳しくはこちら)。

 戦後の栄養不足は大変深刻であり、その解決策のために、政府がビタミン類を「医薬品」として認めてきました。
 私たちは体の中に酸素を取り込み、消化管の中で食べ物を低分子に分解して栄養素を吸収して活動に必要なエネルギーを作り出し(異化)、また吸収された栄養素を再構築して体を作り変える(同化)しています。その仕組みの中でビタミン類は大変大きな役割を担います。そのため栄養不足が国民的課題であった戦後には正しい戦略であったのでしょう。

 一方、栄養素の不足が解消された高度成長期には、本来の役目を終えたはずの”医薬品ビタミン剤”は、モーレツサラリーマンの「疲労回復」「滋養強壮」などに効果があると謳われ、また最近では「集中力の維持」「末梢神経のダメージ回復」といった表示を追加することによって、相変わらずドル箱商品として君臨しています。

 一方、全く同じ成分が含有されている”食品ビタミン剤”は”医薬品ビタミン剤”に許可されている「疲労...」の効果を表示することはできませんので、食品業界からの反発が大変大きくなりました。
 
そこで”医薬品ビタミン剤”を販売する大手製薬会社は、介入試験を実施してその結果を公開するようになりました(現在はなぜかその痕跡が見つからないので、ご紹介できないのですが。これもですね)。ただし、その効果のエビデンスは「医薬品」と呼べるほど高くはないようです(論文が見つかったら詳しく解説します)。

 このように、ある部分では医薬品と機能性食品の境界はあいまいであり、
古くて大きな製薬企業の既得権益の部分が大きいことは、我々一般消費者として認識する必要があり、商品選択の際には考慮にいれておくことが重要かと思われます。


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