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【これまで①】機能性食品のはじまり                  ~いわゆる健康食品から機能性食品へ~

この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】
1. ”健康に良い”とされる食品が生まれたわけ
2. 健康食品のはじまり
3. 健康食品と機能性食品の違い

日本人の平均寿命が長いことは皆さんもご存じかと思います。 
 2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳ですが、戦後の日本人の平均寿命は、男性が50歳、女性が54歳と、今からは想像できないほど短命でした。

1. はじまりは戦後の栄養不足

平均寿命の推移

 この70年間に遺伝子が突然変異するわけもなく、この変化は環境によるものです。70年前の日本人の短命の原因、それは
深刻な栄養不足 でした。

 そのため戦後すぐに、ビタミン強化米や滋養強壮・虚弱体質・肉体疲労時の栄養補給といった保健を目的とした医薬品が次々と発売されました。現在もなお、製薬会社のドル箱である”アリナミン””Q&Pコーワゴールド”などのビタミン剤(医薬品)は、このころ発売された商品です。

 高度成長期を迎え、経済的に豊かになると、日本人の平均寿命は急激に伸びました。1970年(昭和45年)には、男性が69.31歳、女性が74.66 歳に達しています。
 一方、経済はってに伴う食の欧米化によって、こんどは過栄養による肥満と肥満に起因する健康障害の問題が浮上してきました。そのため市場では、より健康に生きるための食品群が注目されるようになりました。

2.健康食品の登場

紅茶キノコ”なる飲み物が一世を風靡したのもこのころです。“紅茶キノコ”は中国北部や東モンゴル周辺発症で、紅茶の中に細菌類とその栄養素である砂糖を入れて発酵させた酸性飲料だそうです。当時は、免疫力の向上や疾病予防、炎症の緩和などの効果があるとされ爆発的にブームとなり、全国的に展開されたという意味では、日本における“いわゆる健康食品(注1)”の第一号だと思われます。

紅茶キノコ(欧米ではコンブチャとして現在も販売されています)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%85%E8%8C%B6%E3%82%AD%E3%83%8E%E3%82%B3

 1980年ごろには、その当時の栄養学に基づいた、より健康に生きるための食品群が発売されるようになりました。

 例えば、マイクロダイエットなどの痩身食品、プロテインといったアスリート向け食品、カロリーメイトなどの総合栄養食といった商品がそれにあたります。
 このような”いわゆる健康食品”が”機能性食品”へと成長するのは、平成に入ってからとなります。

注1 いわゆる健康食品
 健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているものです(厚生労働省HPより抜粋)。
 厚生労働省は昭和から令和に到るまで、この呼称を使用しています。

3. 全世界的な”食と健康”への関心の高まり


 一方そのころ、アメリカやカナダでは、増加の一途をたどる心臓病やがんといった成人病(後の生活習慣病)への対処法がクローズアップされ始めました。その潮流は世界的な規模に達し、1986年には、WHOが「第1回健康づくり国際会議」を開き、”食”を含む社会的要因の調整が健康を実現に重要であるとする「オタワ憲章」が採択されました。

 日本においても、“食と健康”の因果関係に着目した取り組みが始まりました。その先駆けは、「食品機能の系統的解析と展開」(お茶の水大・藤巻正生ら)というプロジェクトです。
その最終提言として、食品の持つ三つの機能が、以下のように定義されました。

 特に「三次機能である生体調節機能を発揮するように設計された食品を
機能性食品(Functional Foods) ”と定義する」と結論したことは、
海外でも高く評価されました。
そして“機能性食品 ”は日本発の新たな食品群として普及し始めました。

4. 健康食品と機能性食品の違い

このプロジェクトでは、科学的には不明な点が多かった”いわゆる健康食品”と”機能性食品”は一線を画するものとして類型化されました。
すなわち機能性食品とは、以下の定義を満たすものです。
--------------------------------------------------------------------------------------1)食品に含まれる機能成分の量を確認することが可能であるもの
2)機能成分を高濃度に含有し、効率的にその生体調節機能を発現する食品
 として製造が可能であるもの
3)ヒトの身体を未病から健康な状態に促したり、疾患の原因となる
 危険因子(リスクファクター)を低減させるために利用するものであり、その機能は医学・栄養学的に立証されたもの   

機能性食品の定義

 1995年には、国内では初めてとなる機能性食品の国際会議として、大澤俊彦ら(名古屋大学)が中心となり、浜松で「国際フードファクター学会(International Conference on Food Factor, ICoFF)」が開催され、1000人近い研究者や企業の開発担当者が集まり、主として「機能性食品とがん」をテーマとして熱心な討論が行われました(懐かしい╰(*°▽°*)╯)。

このように、「いわゆる健康食品」は科学の力によって、「機能性食品」
へと進化してきたのです。


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