石橋直子

昔話と詩吟が好きな高校国語教員です。隠岐に残る不思議な浦島伝説の調査をしています。『お…

石橋直子

昔話と詩吟が好きな高校国語教員です。隠岐に残る不思議な浦島伝説の調査をしています。『おしゃべりな出席簿』今井印刷から出版。https://amzn.asia/d/hFdtOI4

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    とらねこが運営する共同マガジン。グループ合計で参加者1,200名を超えました。フォロワ数2000名以上、120,000記事以上が収録されています。🌱コンテンツを広めたい方の参加をお待ちしています。🌱マナー:①連続投稿はしない②社会一般的に不適切な記事は投稿しない③トップ画面は変えない。参加希望の方は,マガジンの固定記事からコメントしてね(ง •̀ω•́)ง

  • おしゃべりな出席簿

    現役高校教員による学校エッセイ「おしゃべりな出席簿」の記事をまとめました。

最近の記事

中編小説 川詣でーかわもうでー(1)

はじめに どこにいても、水の匂い、水の気配がする。それが私にとっての松江の記憶です。松江駅から松江城方面に行くと、どの道をとってもほどなく大きな川にさしかかります。松江を南北に分かつように流れるこの川が大橋川。中海と宍道湖という2つの湖をつなぐこの川には、4本の橋が架けられています。かつて、ラフカディオハーン、小泉八雲は、木造りの松江大橋を渡る際に下駄が奏でる「カラコロ」という音に心惹かれたと言い、その名をとった広場や建造物、和菓子なども松江の見所です。  さて、この松江で

    • 出席簿#17「海を越える弓道の記憶」

      【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」7月15日、月曜日。あいにくの雨、という場所も多かったようですが、3連休はいかがお過ごしでしたか?私は子供と一緒に参加する予定だった水遊び企画が雨天で無くなってしまいました……。が、企画者の方が公民館の和室にブルーシートを敷き、小麦粉粘土遊びに変更してくださいました。 一通り粉まみれ・粘土まみれで遊んでから、水遊びで使う予定だったプールを体育館で膨らませて、「さあ、みんなで飛び込もう!」、プールの中はボールプールで使うようなボールや、ままご

      • 掌編小説 みずたまり

        みずたまり音声で楽しみたい方はこちらからどうぞ  実家に荷物を放ると、そのまま家を出た。久々の郷里。最後に帰ったのが成人式の時だから、実に4年ぶりの帰省だ。開放感に任せてこの小さな町を巡りたかった。荒れていた中学に見切りをつけ(実際のところ、勉強を頑張ってしまう自分は、ちょっとしたいじめの標的でもあったわけだが)、列車に1時間以上揺られながら隣町の高校に通っていた身としては、「ふるさと」なんて口にしにくい。それでも、生まれ育った地は懐かしかった。  車の窓越しに幼少期に遊

        • 出席簿#16「『ありがとう』作者に届け」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」7月8日、月曜日。暑い日が続きますね。空を見上げると、いかにも夏の雲!薄い水色の空に夏の雲が浮かんでいるのを見ると、夏休みも近いな、という気がしてきます。皆さん、夏のご予定はお決まりですか? 美術室や理科室、音楽室に放送室。同じ学校でも、独特の匂いがする部屋ってありますよね。なんだか懐かしいし、なんだかワクワクする。もともと他の先生がやっている授業を見学するのが好きなのですが、特別教室での授業はとりわけ楽しく感じられたものでした。今回は美術

        中編小説 川詣でーかわもうでー(1)

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        記事

          浦島語り#05 別離なき浦島伝説の盛衰④

          あけて悔しき わが涙かな浦島太郎と言えばやっぱり「開けて悔しき玉手箱」。これに似た言い回しは、平安時代、すでに数多く見られます。たとえば・・・・・・ これは、平安時代中期の女性歌人・中務(なかつかさ:九一二年ー九九一年)が詠んだもの。恋人と過ごす夜がはかなく明けてしまうもどかしさを、「夏の夜はまるで浦島が持ち帰った玉手箱のよう」と言うわけです。下の句は「開けて」と「明けて」が掛詞になっていて、「玉手箱をあっけなく開けて悔しい思いをしたように、恋人と過ごす夜もすぐ夜明けが迫

          浦島語り#05 別離なき浦島伝説の盛衰④

          出席簿#15「弓道場の小さな花壇」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」7月1日、月曜日。いよいよ今年も後半戦。大雨が心配ですが、皆さまの周りはお変わりありませんでしょうか?避難されている方々にも一刻も早く日常が戻ってくることを願っております。 県総体が終わると多くの3年生は引退。最後のミーティングをするときにはいろいろな思い出がよぎるのですが、やはり忘れられないのは選抜メンバーの決定まで頭を抱えて悩み続けた日々だったりします。 「最後の最後に花なんて植えて、後輩に迷惑かなって思ったんですけど・・・・・・」、

          出席簿#15「弓道場の小さな花壇」

          浦島語り#04 別離なき浦島伝説の盛衰③

          海の向こうの恋物語前回に引き続き、古代の浦島伝承の展開をたどっていきたいと思います。「その箱」が開いたとき、いったい何が起きるのでしょうか。 連動している朗読チャンネルでは、楠山正雄氏の浦島太郎、第三部を公開しています。併せてお楽しみいただけると嬉しいです。 さて、その前に、少しだけ浦島が過ごした「海向こうの世界」での日々を覗いてみましょう。古代人たちが水平線を眺めて思い描いた仙境、それはどのような世界だったのでしょうか。 浦嶋子は不思議な女性に導かれるまま、大きな島

          浦島語り#04 別離なき浦島伝説の盛衰③

          出席簿#14「挑戦、新しい生涯学習のかたち」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」6月24日、月曜日。天気が崩れた週末でしたが皆さまの周りはお変わりありませんか? さて、去年『おしゃべりな出席簿』という書籍を出したのですが、このなかには、朝日新聞島根版の「おしゃべりな出席簿」と「元気力」というコーナーで11年にわたって連載されていたエッセイが収録されています。 最初に連載のお話をいただいてから8年間、「おしゃべりな出席簿」という単独コラムのコーナーを担当していたのですが、その後、紙面構成が変わり、「元気力」というリレー

          出席簿#14「挑戦、新しい生涯学習のかたち」

          浦島語り#03 別離なき浦島伝説の盛衰②

          浦島伝説いまむかし。前回、浦島伝承の歴史を概観しましたので、ここからはざっくり時代とともに、(ひとまず文字化されている)浦島伝承がどのように変わっていったのか、そしてその変化に対して、先行研究においてはどのようなことが言われているか、などを中心にお話しできたらと思います。今回は、古代の浦島伝承のお話。 連動している朗読チャンネルでは、楠山正雄氏の浦島太郎、第二部を公開しています。併せてお楽しみいただけると嬉しいです。 前回も引いたのですが、現在伝わる最もオーソドックスな

          浦島語り#03 別離なき浦島伝説の盛衰②

          出席簿#13「生徒の思い、はがきに込めて」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」6月17日、月曜日。 真夏日が続いた週末でしたね。みなさまはどのように過ごされましたか?私は、隠岐神社の御創建八十五周年イベントに合わせて、かつて住んでいた海士町に行っていました。ご存じの方も多いと思うのですが、当地は承久の乱ののち、後鳥羽院が配流となった地。隠岐神社は、後鳥羽院をお祀りする神社です。和歌を愛された後鳥羽院は、新古今和歌集の編纂をお命じになったことでも有名ですが、配流ののちも島の風景やその中でのご自身の心の動きを歌に詠まれ続

          出席簿#13「生徒の思い、はがきに込めて」

          浦島語り#02 別離なき浦島伝説の盛衰①

          はじめに6月13日、木曜日。私ごとですが、本日うちの子が2歳になりました。私もまだまだ未熟ながら、親2年生になりました。少しずつ一緒に楽しめる絵本も増えてきたので、これからもいろいろな「ものがたり」に、わが子と一緒に手を伸ばしていけたら、と思っています。 さて、毎週木曜日はエッセイや小説など、自由に更新している私のnoteですが、今週からは数回にわたって、「浦島語り」を綴ってみようと思います。 noteと連動して更新している朗読YouTube、どうしようか悩んでいたので

          浦島語り#02 別離なき浦島伝説の盛衰①

          出席簿#12「高校チーム、地域で勝負!」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」6月10日、月曜日。 ちょっと天気のぐずついた週末でしたが、今日は嘘のような暑さ。まだ入梅前ですが、梅雨と一緒に夏までやってきたような思いでいます。 さて、今回のお話はソフトボール大会の思い出です。 教員は転勤族です。その分、いろいろな地域の顔を見ることができるようにも思います。今回は隠岐で勤務していたときの「町内ソフトボール大会」。地区対抗の様々な行事で、その結束力と、本気で楽しむ大人と子どもの交わりに驚かされることも多かった隠岐勤務

          出席簿#12「高校チーム、地域で勝負!」

          中編小説 笠地蔵異聞(5)(最終話)

          はじめに 笠地蔵異聞の第五話(最終話)です。前の話はこちらからどうぞ。 ―――――――――― 妻の朋世に誘われて、和宏は件の地蔵のもとへ足を運んだ。あの日以来、遠ざけてしまっていた道だった。遠目に地蔵たちの姿が見える。皆、赤い帽子をかぶっていた。あの地蔵もだ。和宏はあっけにとられたまま、吸い寄せられるように地蔵に歩み寄った。近づけば、地蔵の頭頂に帽子のつばがそびえたっているのがわかる。それは、紅白帽だった。白い帽子のうらに赤い布が縁だけ縫いつけられているから、白と赤の布をつ

          中編小説 笠地蔵異聞(5)(最終話)

          出席簿#11「実習生が語ったことば」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」6月3日、月曜日。 5月は怒濤のような忙しさでしたが、ようやく一息つけそうです。何に追われていたかというと、浦島研究に関する研究奨励事業への申請書作成や、詩吟の大会への遠征など。また、気になっていた文学賞への投稿もどうにかこうにか終わったところ。こんなことを書くと、何をやっている人なんだろう、と思われてしまうかもしれませんが、浦島も詩吟も文学も、私を構成している、どれひとつとして欠かすことのできない要素なんですよね。 さて、今回のお話は教

          出席簿#11「実習生が語ったことば」

          中編小説 笠地蔵異聞(4)

          はじめに 笠地蔵異聞の第四話です。前の話はこちらからどうぞ。 ―――――――――― 和宏は定年退職を機に移住したA町で、自治会費の集金に来た男から例大祭の行列に加わらないかと声をかけられた。提灯やらのぼりやらをもって、行列を作ればいいらしい。たった一度の打ち合わせでは、行列の構成について簡単な説明を受け、並び順を決め、ためしに公民館周りをぐるぐると歩いてみた。例大祭は夏日となり、スーツ姿で町を練り歩いた和宏は、散会ののち、商店の軒先で販売されていた缶ビールで喉を潤しながら周

          中編小説 笠地蔵異聞(4)

          出席簿#10「見えない応援を受けとめて」

          【月曜更新…ならず】「おしゃべりな出席簿」5月27日、月曜日。 5月もまもなく終わります。 ↑…と書き始め、下書きはほぼ完成していたのに…。 気づいたら寝てしまっていて、 いまは5月28日火曜日の午前2時半。 3月末にnoteをはじめてから、毎週月木更新を保っていたので、静かにショックを受けています……。が、まあ、ここのところちょっとハードスケジュールだったので、身体が休息を求めていたのだと思うことにして、次回からは予定通りアップできるようにしようと思います。 さて、県総

          出席簿#10「見えない応援を受けとめて」