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出席簿#10「見えない応援を受けとめて」

【月曜更新…ならず】「おしゃべりな出席簿」

5月27日、月曜日。
5月もまもなく終わります。
↑…と書き始め、下書きはほぼ完成していたのに…。
気づいたら寝てしまっていて、
いまは5月28日火曜日の午前2時半。

3月末にnoteをはじめてから、毎週月木更新を保っていたので、静かにショックを受けています……。が、まあ、ここのところちょっとハードスケジュールだったので、身体が休息を求めていたのだと思うことにして、次回からは予定通りアップできるようにしようと思います。

さて、県総体シーズン。駅にユニフォーム姿の高校生たちを見かけることも多い時期ですね。この時期はやはり、弓道部のことを思い出します。

教員は転勤族。運動部の顧問をしていると、3月まで一緒に部活動をしていた副顧問の先生が、転勤になっちゃって4月からはライバル校の顧問に……。なんてこともあったりします。大会会場で顔を合わせると、嬉しいような、でも、なれなれしく声をかけるのはためらわれたりして……教員も生徒も、微妙な表情を浮かべるんですよね。そんな県総体での思い出です。

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「見えない応援を受けとめて」

音声で楽しみたい、という方はこちらからどうぞ。

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総体引率の初日。弓具置き場に顔を出すと……いつもと違う笑顔で迎える部員たち。なにか言いたそう、でも、それを抑え込むような、ふしぎな笑顔。すぐにわかった。その笑顔のあて先は私じゃなくて、後ろにいた先生。春の異動まで一緒に弓を引いていた副顧問の先生だ。

同じ部活に身を置いていると、異動をさかいに、昨日までの同志、今日からは好敵手、なんてことも起こってしまう。生徒たちの困った笑顔を見て、自分が異動して間もないころのことを思い出した。ようやく覚えたか覚えないかという弓道部員を引率していると、いろいろな学校の子が挨拶をしてくる。「……おはようございます」挨拶の前にちょっとだけためらいを見せて、なにか言いたそうな顔をして、結局言わずに背中を見せる。それは前任校の部員たちだった。

あれから3年が経って、今度は見送った側。総体に出る前、部員たちは口々に言っていた。「先生に、会えますね」「……ができるようになったこと、気付いてくれるでしょうか」。伝えたいことはいっぱいあるけど、我慢したほうがいいですよね。先生も、あっちで頑張っておられるはずだし、私たちだって……。目の前にいる彼女たちと話をしながら、あのときすれ違った前任校の部員たちが呑み込んだ言葉を聞いたような気がした。

やっぱり、総体会場では、言葉を飲み込む部員。なにも言わない先生。
それは、もはや敵同士、なんて感情ではなくて、自分たちの目の前にある新しい関係を大切にするためだったのだ。今の指導者と、今の教え子と。新しい関係を築いて、その中で強くなるために。

大会、部員はよく頑張った。「俺のぶんまで褒めといてよ」、全てが終わって、入賞を果たした彼女たちに一言だけ先生の声を届けると。「やっぱり。私、先生が遠くで、うん、ってうなずいてくれたのわかったんです」部員が嬉しそうに言う。え、本当に。応援の気持ちは抑え込んでいたはず。でも、見守られているという事実は生徒にたしかに伝わっていた。応援を力に変えられる子は、強くなる。そう信じて、新しいメンバーで頑張らないとね。学校に戻ると、お留守番の新入部員たちが、笑顔で待っていた。

(2014/6/25 朝日新聞島根版掲載)

作品に寄せて

私自身は運動が大の苦手なのですが、初任の年に副顧問をして以来、ほぼずっと弓道部で、いつしか自分も多少弓が引けるようになっていました。いまではすっかり弓道が学校生活の一部として馴染んでいます。弓に関する様々な所作や言葉に、古典の香りがするのも大きな理由かもしれません。

職業柄…と言いますか、SNSのタイムラインにも、高校の公式アカウント等からの発信がよく流れてきます。この時期は壮行式のことが多くって、ユニフォーム姿が整列している様に、「いよいよ始まるね」と感慨深くなります。来週はきっと、総体報告会の投稿が増えるんだろうな……。

そんな投稿を見るとき、やはり目がいくのは弓道着。学校を超えて応援してしまいます。正射必中、頑張れ、高校弓児たち!

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