NaokiUchida

医療法人すずらん会たろうクリニック 院長 https://taro-cl.com/  …

NaokiUchida

医療法人すずらん会たろうクリニック 院長 https://taro-cl.com/  認知症の専門医として在宅医療に携わっています。 さらなる発展を求めて2021年10月にプロトアウトスタジオに入学しました。

最近の記事

未払い行動について知ってほしい

未払い行動とは何か「未払い行動」とは、認知症の人が買い物をする際に、お会計を忘れて商品を店外に持ち出すことです。 本人が意図的におこなっているわけではないことが、いわゆる万引きとは異なります。 しかし、一般に未払い行動への理解がないことから万引きと間違われて警察を呼ばれてしまったり、未払い行動をきっかけに買い物に行くことが怖くなってしまうことなどが生じ社会課題となっています。 なぜ未払い行動が生じるのか未払い行動が生じる原因はいくつかあります。 一つは、もの忘れによるも

    • 認知症フレンドリーについて

      ここのところメディアで認知症について目にすることが増えています。 しかし、その多くは「認知症予防」について、もしくは「重度の認知症の困った問題にどう対応するか」という内容です。 これには大きな問題があり、社会を認知症フレンドリーにアップデートしないといけないという危機感があります。 そこで今回の記事では、この危機感を共有して認知症フレンドリーについてお伝えしたいと思います。 認知症についての基礎知識まず、認知症についての基礎知識を共有します。 認知症の人は沢山いて、今後

      • 目の前の人に「死にたい」と打ち明けられたら

        「死にたい」と言われた経験がある人は多くないかもしれません。 自殺は一般に頻度が高いことではありませんが、10代から30代の死因の第一位は自殺であり、一時期減少していた自殺者数は2020年に11年ぶりに増加に転じ2021年も高止まりしています。 また、慣れない人、知識のない人ほど自殺の危険を過小評価しがちだと言われています。 先日、自殺予防について学ぶ機会があったためnoteでまとめておきます。 目の前の人に「死にたい」と打ち明けられた時に適切な対応ができることを目指した

        • 福岡市でエンジニアフレンドリーと認知症フレンドリーが交わる

          福岡市は認知症フレンドリーシティ宣言をしています。 一方で、エンジニアフレンドリーシティでもあるのです。 まったく異なるこの二つが交わることで、それぞれの取り組みが加速するのではないかと考えて記事を書きました。 特に、エンジニアの方々にこの記事を読んでいただきたいと思っています。 福岡市は認知症フレンドリーシティである福岡市は2018年2月に認知症フレンドリーシティ宣言を行いました。 ユマニチュードの積極的な導入によって介護現場だけでなく市民にも広くケア技法を学ぶ機会を

        未払い行動について知ってほしい

        マガジン

        • 認知症とともによりよく生きる
          21本
        • スマレポ
          9本

        記事

          「定期的に歯科受診をしましょう」 -認知症とともによりよく生きる -

           みなさん、歯医者さんはお好きですか?  「はい!」って答える方は少ないのではないかと思います。  私自身、歯医者さんに行くのが子どもの頃から大嫌いでした。しかし、今では数ヶ月に一回定期的に歯科通院をしています。  そんなに虫歯があるのかって?、、違います。  その昔、歯医者さんは虫歯になったら行くところで、行くとガリガリ歯を削られる痛くて怖い場所でした。しかし、その後、歯科診療の中心は治療から予防にシフトしています。  虫歯になったから歯医者さんに行くのではなく、

          「定期的に歯科受診をしましょう」 -認知症とともによりよく生きる -

          丹野智文さん新書「認知症の私から見える社会」について -認知症とともによりよく生きる -

           認知症の人と家族の会に所属されている人であれば、丹野智文さんのことはご存知だと思います。丹野さんが新書で「認知症の私から見える社会」を出版されました。  この本は、認知症の人ご本人と、認知症の人のご家族にこそ読んで欲しい内容になっていると感じたため、今回のテーマとしました。  丹野さんはご自身が認知症と診断されて8年が経ち、これまで300人を超える当事者と話をしてこられたということで、その対話の内容が本書の中心になっています。丹野さんをご存知の人の中には、「丹野さんは特

          丹野智文さん新書「認知症の私から見える社会」について -認知症とともによりよく生きる -

          「認知症の人が働くことについて」 -認知症とともによりよく生きる -

           突然ですが質問です。幸せはどのようにしてえられるとお考えですか?  日本理化学工業の工場敷地内には「働く幸せの像」が立っていて、「導師は人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、の4つと言われました。働くことによって愛以外の3つの幸せは得られるのだ。私はその愛までも得られると思う。」という言葉が刻まれているそうです(大山泰弘 働く幸せ 仕事で一番大切なこと WAVE出版 2009年 より)。また、2012年に権威あ

          「認知症の人が働くことについて」 -認知症とともによりよく生きる -

          「福岡オレンジパートナーズとオレンジ人材バンクについて」 -認知症とともによりよく生きる -

           先日、福岡市役所で記者会見があり、福岡オレンジパートナーズとオレンジ人材バンクが発表されました。  福岡オレンジパートナーズとは、認知症の人とその家族、企業・団体、医療・介護・福祉事業者、行政で構成し、認知症について自主的に「知る」「考える」「つながる」「行動する」ための集まりです。認知症とともに自分らしく生きるために何ができるかを考え、実際の取り組みにつなげていくことを目指しています。海外では、Dementia Action Allianceとして知られる取り組みですが

          「福岡オレンジパートナーズとオレンジ人材バンクについて」 -認知症とともによりよく生きる -

          「認知症予防から備えに」 -認知症とともによりよく生きる -

           認知症予防というと一般に「認知症にならないためにどうするか」をイメージされると思いますが、認知症発症の最大のリスク因子は加齢であり、年を取り長生きすると誰もが認知症の状態となります。  一方で、認知症の発症を遅らせたり認知症の発症後も進行を遅くしたりするためにできることはいくつかあります。研究によってエビデンスがものとしては、人と話すこと、運動をすること、規則正しい生活をすること、バランスの良い食事を摂ること、禁煙、節酒、歯周病予防、難聴の改善、血圧・血糖の良好なコントロ

          「認知症予防から備えに」 -認知症とともによりよく生きる -

          「新型コロナウイルスワクチンに関して」 -認知症とともによりよく生きる -

           この記事を書いている5月はじめの時点で、福岡でも新型コロナウイルスの感染が急拡大しています。この状況を大きく変えるには徹底した感染対策(同居家族以外とマスクを外して会話をしない!)とワクチン接種が重要です。そこで今回はワクチンについてお伝えしようと思います。  現在、日本で接種がすすめられているのはmRNAワクチンという比較的新しい仕組みのワクチンで、ワクチンを接種することでウイルスの表面の突起の部分を作る指示を体内に伝え、実際に感染しなくても抗体を作るという機序です。人

          「新型コロナウイルスワクチンに関して」 -認知症とともによりよく生きる -

          「人とのつながりと健康について」 -認知症とともによりよく生きる -

           先日のNHKハートフォーラムでも取り上げた話題ですが、今回は人とのつながりと健康の関係についてお伝えしたいと思います。  新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ステイホームの影響などあり家族以外の人と接する機会が減ったとお感じの方は多いのではないでしょうか。内閣府が令和2年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」においても、「今回の感染拡大前に比べて社会とのつながりの重要性をより意識するようになった」と答えた人が39.3%いた

          「人とのつながりと健康について」 -認知症とともによりよく生きる -

          「在宅医療について」 -認知症とともによりよく生きる -

           今日は私の専門である在宅医療についてお書きします。高齢者が増え通院が難しくなっている方が増えていることや、住み慣れた自宅や施設で最後まで過ごしたいと希望される方が多いことなどから、この10年で在宅医療の仕組みが整備され国の施策としても推進されてきました。在宅医療は、入院、外来に次ぐ第3の医療といわれるようになりましたが、特にこのコロナ禍において入院すると面会ができないことなどがあり、在宅医療を希望される方が増えているようです。  通院が困難な方が対象となっていて、寝たきり

          「在宅医療について」 -認知症とともによりよく生きる -

          「治療やケアに関する意思決定に関して」 -認知症とともによりよく生きる -

           新型コロナウイルス感染が急拡大しています。  様々な場面で、治療やケアに関して意思決定を求められる場面があるかと思います。どの治療を行うかという選択だけでなく、治療を行うか行わないかという選択肢もありえます。治療を行う場所についての選択もあるでしょう。私は在宅医療に携わっていますが、最近は入院すると面会などができないこともあり自宅や施設で医療を受けることを希望される方が増えているように感じています。  意思決定を行う際の基本は、本人の意志を尊重することです。「認知症だか

          「治療やケアに関する意思決定に関して」 -認知症とともによりよく生きる -

          「うつ病について」 -認知症とともによりよく生きる -

           うつ病と認知症には密接な関係があり、うつ病が発症してそのまま認知症に移行する方や、認知症にうつ病が重なる方もいます。うつ病では頭の働きが遅くなり思考力が落ちることから認知機能障害を起こすため、高齢者の場合は認知症と診断されることもあります。認知症のように見えるうつ病のことを仮性認知症といいます。  うつ病と認知症の違いがいくつかあります。まず、抑うつ気分です。一般的な認知症に抑うつは伴いませんが、うつ病では抑うつ気分は主要な症状です。また、病識も特徴的です。アルツハイマー

          「うつ病について」 -認知症とともによりよく生きる -

          「せん妄について」 -認知症とともによりよく生きる -

           「せん妄」って、ご存知ですか?正式には「譫妄」と書く医学用語ですが、認知症に身近なものです。  せん妄は一見すると認知症と症状の区別がつかない状態で、不安、イライラ、興奮、不眠、幻覚、妄想などのわかりやすい症状を引き起こすこともあれば、無気力や活動性の低下を起こすこともあります。経過が比較的急激に始まることと、状態の変動が大きいことがせん妄の特徴です。また、夕方から夜間にかけて悪化することが多いことも知られています。日中は穏やかなんだけれども、夕方や夜間に不安が高まったり

          「せん妄について」 -認知症とともによりよく生きる -

          「新型コロナウイルス感染予防に関して(飛沫感染)」 -認知症とともによりよく生きる -

           前回は接触感染についてお伝えし、手洗いと家庭外からウイルスを持ち込まない意識が重要だと説明しました。今回はもう一つの感染形式である飛沫感染についてお伝えします。  飛沫感染とは、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染することです。この飛沫感染対策として重要なのがマスクになります。マスクは、感染しないためというよりも感染している人が周囲に広げないために有用です。新型コロナウイルスは症状が出る前が最

          「新型コロナウイルス感染予防に関して(飛沫感染)」 -認知症とともによりよく生きる -