「新型コロナウイルスワクチンに関して」 -認知症とともによりよく生きる -

 認知症の人と家族の会福岡県支部の月刊広報誌「たんぽぽ」に「認知症とともによりよく生きる」という連載を行っています。今回、許可をいただいてnoteにも転載することとしました。 
 こちらの記事は、2021年5月号に掲載されたものです。

 この記事を書いている5月はじめの時点で、福岡でも新型コロナウイルスの感染が急拡大しています。この状況を大きく変えるには徹底した感染対策(同居家族以外とマスクを外して会話をしない!)とワクチン接種が重要です。そこで今回はワクチンについてお伝えしようと思います。

 現在、日本で接種がすすめられているのはmRNAワクチンという比較的新しい仕組みのワクチンで、ワクチンを接種することでウイルスの表面の突起の部分を作る指示を体内に伝え、実際に感染しなくても抗体を作るという機序です。人間の遺伝子の情報に変化が加わることはないのでご安心ください。世界中で同種のワクチンはすでに数億回を超えて接種されています。新型コロナウイルスの感染を20分の1に減少させることがわかっており、非常に効果と安全性が高いワクチンです。

 3週間をあけて2回接種する必要がありますが、1回目の接種の2週間後から効果が出はじめることがわかっています。接種後、半数以上の人に副反応がみられますが、接種部位の痛み、だるさ、頭痛、筋肉痛などが主な症状で、いずれも免疫反応として抗体を作る際に生じる症状だと考えられています。特に二回目の接種後に副反応が強く出ることが多いため、当院で職員に接種する際は基本的に休みの前日に行う予定です。若い人ほど副反応が出やすいこともわかっています。

 アメリカの報告では、アナフィラキシーショックが起きるのは20万人に1人程度の頻度で、他の薬と比べて多いわけではありません。また、ショックを起こした人は全員退院していて命に関わることはほとんどありません。

 過去にワクチン接種でアレルギー反応が出た方は今回のワクチン接種を控えたほうが良い場合がありますが、それ以外の方はワクチン接種を控える必要はありません(たとえば、血液をサラサラにする薬を飲んでいても)。

 ワクチンを接種することで発症を減らすだけでなく、人に移しにくくなり、重症化を抑える効果もあります。また、変異株にも一定の効果を示すことがわかっています。

 ということで、私としては今回のワクチン接種を強く推奨しますが、接種は義務ではありません。一部メディアで不安を煽る報道が目につきますが、適切な情報に基づいてご判断ください。厚労省のサイトは情報がよくまとまっています。


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