「治療やケアに関する意思決定に関して」 -認知症とともによりよく生きる -

 認知症の人と家族の会福岡県支部の月刊広報誌「たんぽぽ」に「認知症とともによりよく生きる」という連載を行っています。今回、許可をいただいてnoteにも転載することとしました。 
 こちらの記事は、2021年1月号に掲載されたものです。

 新型コロナウイルス感染が急拡大しています。

 様々な場面で、治療やケアに関して意思決定を求められる場面があるかと思います。どの治療を行うかという選択だけでなく、治療を行うか行わないかという選択肢もありえます。治療を行う場所についての選択もあるでしょう。私は在宅医療に携わっていますが、最近は入院すると面会などができないこともあり自宅や施設で医療を受けることを希望される方が増えているように感じています。

 意思決定を行う際の基本は、本人の意志を尊重することです。「認知症だからわからないだろう」とはじめから決めつけず、わかりやすい言葉で説明し、まずは本人の意志を確認しましょう。記銘力障害によって新しいことを覚えることが難しくても、内容を理解できれば自分の意志で決定できるという認知症の人はたくさんいらっしゃいます。

 しかし、認知症の程度や決定する内容によっては、本人が意思決定をすることが難しい場合も少なくありません。その場合、「ご家族で決めてください」と言われることがあります。延命治療をしない選択をしたけれど、あのまま最後を迎えてよかったのか。逆に、延命治療を希望したけれど、管に繋がれ生き続けている状態でよかったのか。特に、命に関わる選択の場合には、意思決定を行うこと自体をご家族が負担に感じることもあるかと思います。

 本人が意思決定をできない場合の基本は、ご家族や近しい人で本人の意志を推定し決定することです。「残念ながら今の本人には意思決定する力がないけれど、もし本人が意思決定できるとすればどの選択肢を選ぶだろうか」ということを考え、「本人ならこの選択肢を選ぶだろう」と、ご家族や近しい人で推定することができれば、これを推定意志として尊重し意思決定を行います。

 人生の最終段階において、自分で意思決定をできない方は7割を超えるというデータもあります。本人の意志を尊重するために、本人の意志を推定しやすくするためにも、「こんなときどうしたい?」と普段から話し合っておくことをお勧めします。


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