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訪問看護師が患者・家族から受ける暴力・ハラスメント対策研修のベーシックコース

訪問看護師が患者・家族から受ける暴力・ハラスメント対策研修のベーシックコース、無事に終了しました。

前回のベーシックコースでは、午前中が別の研修会と重なったため聞くことができなかったのですが、今回は一日たっぷり参加して学び多かったので共有します。

まず一つ目のセッションは、関西医科大学の三木明子先生から。言わずと知れた、この分野の第一人者です。
(もし在宅医療・介護に関わる方でこちらのサイトを見たことがない方いらっしゃればぜひ )

三木先生からは、「暴力・ハラスメントの予防と対応」として、訪問看護師が暴力・ハラスメントにさらされている実態や影響の大きさについての情報提供があった上で、暴力・ハラスメントのリスクとしてどういったものがあるか、そしてそのリスクを把握した上でいかに予防策を講じるかというお話がありました。

また、リスクを最小化しながらも、いざ現場で暴力・ハラスメントが発生した際は、被害者であるスタッフに対して「あなたを守ります」と支援の態度を示す一方、暴力・ハラスメントの行為者である患者さんやご家族に対して「暴力行為は許さない」という態度を示すことが重要だと説明がありました。ここが現場によって十分に対応されていないところで、被害者であるはずのスタッフが「あなたの対応が不味かったから暴力・ハラスメントが生じた」と責められ二次被害が起きたり、「患者さん、ご家族を責めることはしづらい」と態度をはっきり示さないことが、しばしば問題になっています。

どういった行為が暴力・ハラスメントであるかを患者さんやご家族に示す資料として、三木先生が兵庫県と作成された資料のご紹介もありました。

兵庫県が作成したチラシ

こうやって行政のチラシとして作成されていると、患者さんやご家族にも説明しやすいと感じました。

二人目の講師は、「法的視点からのハラスメントについての考え方」として福田大祐弁護士から。

刑事責任が問われ犯罪行為となるハラスメント、民事責任が問われるハラスメント、不適切なハラスメントと、ハラスメントのグラデーションについてはじめにご紹介。

「看護職は、犯罪の被害に対するアンテナが弱い傾向が見受けられる」との指摘から、「被害を正しく認識することがハラスメント対策の出発点」とのお話がありました。

そこから突然の○○⚪︎✖︎クイズ!「物理的に触れなくても暴行罪は成立する」「内容が真実であっても名誉毀損罪は成立する」など、のクイズに盛り上がりました。

そこから、訪問看護で起こりうる刑事責任の例が具体的に示され、最後に警察と弁護士にどう頼ればいいかについてのお話がありました。

お昼休みを挟んで午後は、広島大学の相馬敏彦先生から「暴力のエスカレート・モデルと対応」として、事例をベースにしたグループワーク中心のセッションがありました。

暴力のエスカレートを防ぐためには、「傷つけられた」と感じたことを表明しなければ相手には伝わらず繰り返されてしまうこと、さらには繰り返される中で行為がエスカレートしていくというエスカレート・モデルが紹介されました。

実際のハラスメント事例をもとに、望ましい行動や、その行動を妨げる要因を話し合い、では実際にどういった対応ができそうか考えるというワークは、とてもうまくいったように感じました。

そして最後のセッションは私から、「認知症に伴う暴力・ハラスメント対策」としてお話ししました。

実はこのセッション、前回のベーシックコースで参加者からの評価が他と比較して芳しくなく、どういうものが求められているか手探りとなる中で行いました。

前回は講義中心だったのですが、講義部分は事前の動画視聴を提示し、当日はグループワークの時間を増やして対応するという設定を事前に話し合い。

まずはグループワークで、認知症のある人において暴力・ハラスメントで困ることについて共有してもらいました。

明らかになったことの一つは、「認知症患者さんが相手だと仕方ない」と暴力やハラスメントを容認する現状。

そこで私から、たとえ患者さんが認知症の状態にあったとしても、本日学んできた内容を適応することに変わりはないことを説明しました。つまり、三木先生の部分で学んだ「暴力・ハラスメントのリスクを分析して予防策を講じる」「いったん暴力・ハラスメントが生じたら被害者は守られるべきであり、行為者に対して暴力・ハラスメントは許さないと対応する」ことや、福田弁護士から学んだ法律の知識、そして、相馬先生から学んだエスカレート・モデルという考え方、全て患者さんが認知症の状態にあっても当てはまるということです。

認知機能が変化していることによるリスクはもちろん存在するため、この点についてきちんと評価して暴力・ハラスメントを最小化することは訪問看護のプロフェッショナルとして行うべきことです。しかしこれは、あくまでリスク要因の一つであり、「認知症の状態にあるから」と暴力・ハラスメントを容認する必要はありません。

よくある例として、「言っても忘れるから」という記銘力障害による対応の難しさがあげられますが、当院重度認知症デイケアで多くの患者さんがマスクを着用できている現状と、そのために行なっている具体的な取り組み(毎日朝の会で繰り返しマスクの重要性について説明、さらに結核と結びつけて説明することで感情が伴う記憶に働きかける)を紹介しました。

あとはちゃっかり、11月の地域共生の会の宣伝も行い私の役割は終了。

ともにプログラム作成を行なっている清水先生もおっしゃってましたが、前回と比較してプログラム内容が洗練されてきていると感じました。

また9月22日に神戸でベーシックコースを開催予定ということで、興味がある方はぜひご参加ください!

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