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障がいを持つ子どもを育てる人のためのライフデザイン

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知的障害を持つ子どもを成人まで育てた作業療法士が、障がいを持つ子どもを育てる際の考え方をまとめたマガジンです。育児と親自身の生活の両方を充実したものにするための工夫やアイデアを書…
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『目次』 障がいを持つ子どもを育てる人のためのライフデザイン

『目次』 障がいを持つ子どもを育てる人のためのライフデザイン



1. 障がい児を育てる自分のことを考える子どもの障がいが親の価値観を変える

『障害児の育児』と『親の生活』の関係性を整理する

障害児を育てる親の、後悔しないライフプラン

障がい児を育てる親にとっての生きがいについて

障がい児の親は、子どもの成長よりも自分の行動に焦点を当てる

障がい児の成長に合わせて親の葛藤は変わる

障がい児との「終わらない育児生活」の平穏な過ごし方

2. 子ども

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書籍出版とnote記事更新お休みのお知らせ

書籍出版とnote記事更新お休みのお知らせ

いつもこのnoteを読んでいただきありがとうございます。

この度『障がいがある子どもを育てながら親である自分も大切にする』というコンセプトの書籍を執筆・出版する機会をいただくことになりました。

このような機会に恵まれたのは、ひとえにこのnoteを読んでくださった皆さんのおかげだと考えています。

いくら感謝をしても足りないくらいに感謝しています。
本当にありがとうございます。

このnoteを

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障がい児の親は、子どもよりもまず自分を大切にする

障がい児の親は、子どもよりもまず自分を大切にする

僕には知的障がいがある子どもがいます。

自分の子どもに障がいがあるとわかったとき、2つの相反する感情が湧き上がりました。

ひとつは「障がいがあっても幸福な人生を送ることができるようになるために、何でもしてあげたい」という愛情。

そしてもうひとつは「これからの時間は子どものお世話に多くの時間がかかるようになる。もう自分のやりたいことはできなくなってしまうのだろうか」という不安でした。

子ども

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子どもの障がいをカミングアウトして、育児環境を整える

子どもの障がいをカミングアウトして、育児環境を整える

会話のなかで子どものことが話題になった際、子どもの障がいのことを話すべきか迷った経験があります。

当時の僕は、子どもの障がいについて口にすることに、自分の弱みを晒してしまうような言いようがない不甲斐なさを感じていました。

伝えられた相手もどう反応をしたらよいか迷うだろうし、気まずい気持ちになるのではないか。

この「子どもの障がいのことをまわりの人に伝えるべきか」についてはしばらく悩みましたが

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障がい児が大人になった後にも残る「居場所」や「つながり」

障がい児が大人になった後にも残る「居場所」や「つながり」

子どもの知的障害が判明したとき「この子は孤独になるのではないか」と感じたのを覚えています。

言葉が苦手な僕の子どもを相手にしてくれる人は少なく、ましてや健常な子どもが友達になってくれるはずがない。

大人になっても友達ができず、僕ら両親がいなくなってしまったら1人きりになってしまうのではないかと思ったのです。

その心配は今のところはまだ徒労に終わっています。

高等支援学校を卒業した今でも何人

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障がい児の子育ては、がんばると失敗する

障がい児の子育ては、がんばると失敗する

「あなたのためにこれだけ頑張ってるのに、なんで言うことを聞いてくれないの?」

子どもに対してそんな気持ちを抱いている時期がありました。

自分の時間もやりたいことも犠牲にして尽くしているのに、その気持ちをわかろうともせずマイペースにわがままを押し通そうとする子どもの態度に憤りを感じていたのです。

我慢の限界を超えたときには子どもを大声で叱ることもあり、泣かれてしまうこともありました。

当時、

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障がい児を育てる親の心に潜む『普通の子どもバイアス』に気づく

障がい児を育てる親の心に潜む『普通の子どもバイアス』に気づく

障がいを持つ子どもを育てる親にとって、育児とストレスの関係性は無視できないものです。

それは、一般的によく言われる「普通」とは違う子どもを育てるから。

本来、子どもは一人ひとり違った個性を持っているので「普通」という概念自体がそもそも当てはまらないのですが、それでも一度は「普通」とのギャップに戸惑うのが障がい児の育児です。

ときには育児自体の難しさよりも、「普通」という概念に振り回されること

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障がい児の親は、子どもの失敗の活かし方を整理する

障がい児の親は、子どもの失敗の活かし方を整理する

家事に追われている最中、テーブルに置いてあるコップを子どもが倒して床を濡らしてしまう。

その途端、どうしようもなく怒りの感情やイライラが込み上げてくる。

このようなシチュエーションは、育児をしていれば誰もが一度は経験することなのだと思います。

知的障がいがある子どもは、行動するときに周囲の状況を確認しないことが多く、幼い頃には動くたびに何かを倒したり、危ないことをして怪我をしたり、散らかした

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障がい児の親は、子どもの成長を予測しない

障がい児の親は、子どもの成長を予測しない

今の子どもとの生活は、時折波風が立つことがあるものの、昔からは想像できなかったようなそれなりの穏やかさを保っています。

子どもがまだ幼かった頃、この子はこのまま成長しないままに大人になってしまうのではないかという大きな不安を抱えていました。

知的障がいを伴うASDである僕の子どもは、小学校に進学したあとも2語分以上の話をすることができず、外を歩けば注意散漫で車に気づかず道路の真ん中を歩いてしま

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障がい児の親子の『ほどよい距離感』の手がかり

障がい児の親子の『ほどよい距離感』の手がかり

先日、子どもが勤めている就労支援事業所とトラブルがありました。

子どもが希望していた就労先とは全く異なる会社への移行就労を迫られたのです。

子どもの意向は事業所との会議や面談の場で何度も伝えていただけに親子共々面食らってしまいました。

もしこれが学校であれば親が直接先生と話をすれば済むのですが、子どもはもう学生ではありませんし事業所との雇用契約も本人が結んでいるのでそういうわけにもいきません

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障がい児は社会に育ててもらい、親亡き後にそなえる

障がい児は社会に育ててもらい、親亡き後にそなえる

一般的に、育児は子どもが社会的・経済的に自立することを目的とします。

自分のことが自分で行えるようになり、就職を経て経済的に自立すれば育児における親の役割は終了となります。

ところが子どもが将来的に自立することが難しいとわかっている場合、少し話が変わります。

親の役割は子どもの持つ能力を最大限に引き出すことであり、そのことが親亡きあとの子どもの生活に対する備えになるからです。

障がいを持つ

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障がい児の子育ては、あきらめることから始まる

障がい児の子育ては、あきらめることから始まる

他の子どもにはできるのに自分の子どもにはできないという場面を保育園で何度も目にする度に、心の中で不安の塊が大きくなっていった感覚を今でも鮮明に覚えています。

それは子どもの人生がどうなってしまうのだろうという不安でもあり、親である自分自身の今後の歩みが想像できないことに対する不安でもありました。

自分の子は他の子とは違うという事実を受け入れることは簡単ではありません。

なぜならそれは、思い描

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障がいがある子どもが求めている親子関係のあり方

障がいがある子どもが求めている親子関係のあり方

親子関係は難しい。

そういう価値観を持っているのは、僕が子どもの頃に両親から言われたことに傷付き、自信を無くしてしまっていたからです。

親は悪意を持って話していたわけではありません。

家族は生まれながらに強い絆で結ばれているから気を使わなくてもいい、という親の一方的な価値観がそうさせていたのです。

このことから、もし自分が親になったなら同じ体験を自分の子どもには絶対にさせまいと考えていまし

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障がい児の親は、子どもの成長よりも自分の行動に焦点を当てる

障がい児の親は、子どもの成長よりも自分の行動に焦点を当てる

まだ子どもが小さい頃、あの子はこれができているのにうちの子はまだできない、ということばかりが目について仕方ありませんでした。

外来リハビリの待ち時間に障がいがある他の子を見ては自分の子と無意識に比べてしまう始末。

比べてることで、自分の子どもの成長度合いを推し量っていたのです。

定期の発達検査の結果に一喜一憂し、芳しくない項目をどうやって練習させようかと思いを巡らしてばかり。

しかし、子ど

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