ファンタジーっぽい小説を書いています。

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  • 掌編小説

    日替わりのお題で書いた、140字以内の掌編小説たち。長編のアイデアが浮かんだらいいな、って思いつつ、気楽に書いてます。

  • シリーズ小説「界境の守護者」

    界境の守護者シリーズの小説たち

  • 見上げれば、クジラ

    見上げれば、クジラ 第1話から最終話まで

  • 空の写真に言葉を添えて

    iPhoneで撮影した空の写真に言葉を添えてInstagramに投稿した中から抜粋。

記事一覧

お題「内観」(掌編小説)

ぼくの心の内側を観察してみた。 体育座りをして抱えた膝に額を押しつけ、泣いているぼくがいた。 涙とともにこぼれる呟きに耳を傾ける。 「死にたい」「楽になりたい」「…

尚
2週間前
4

お題「不道徳」(掌編小説)

数年ぶりの同窓会でドラマがないはずがない。 元カップルが再会して再燃。逆に、なんとも思っていなかった同級生と始まる秘め事。 既婚者が多くなった同窓会での再会をきっ…

尚
3週間前
1

お題「完全無欠」(掌編小説)

「TAKTさんっていろんな楽器ができて、作った曲は売れるし、博識で頭よくて完全無欠だと思ってました」 「過去形?」 「はい。直接会って話したりしたら、TAKTさんでもでき…

尚
3週間前
1

お題「翻弄」(掌編小説)

自分と向き合って自分らしく生きると楽になる、なんて言われても。 他人の意見に翻弄されなくなる? 他人に翻弄されることは不幸せ? それじゃあ、君の意見に従って始めた…

尚
1か月前
4

お題「暴走」(掌編小説)

授業が終わって廊下に出ると、目の前を、奴が全速力で駆け抜けていった。 「廊下を走るな!」 休憩時間のたびに、教師の怒声が奴を追いかける。 奴の行き先は保健室。保健…

尚
1か月前
4

お題「期待外れ」(掌編小説)

「帯の宣伝文句で決めて読むけど、期待外れも多いんだよね」 「泣ける、とか、予想外の結末、みたいな?」 「そう、泣けないし、予想する材料が提示されてない、みたいな」…

尚
1か月前
3

お題「共感」(掌編小説)

突然、楽しくなって笑ってしまう。 突然、悲しくなって泣いてしまう。 突然、嬉しくなってガッツポーズをしてしまう。 突然、怖くなって立ちすくんでしまう。 どこで誰と何…

尚
1か月前
4

お題「無慈悲」(掌編小説)

苛立つ歌手へ、作曲家は淡々と問うた。 「ファンの期待を裏切るけれど、君はそれでいいんだね?」 「しかたないじゃないですか、できないんだから」 「練習不足ではなく、…

尚
1か月前
1

お題「事なかれ主義」(掌編小説)

「リディは事なかれ主義?」 「いきなりぃ何ですかぁ? ヒイロォ?」 「リディの戦闘を気配で避けるのすごいって話になって」 「はあぁ……」 「実は戦闘力高いけど、なん…

尚
1か月前
1

お題「堂々巡り」(掌編小説)

また次へと歩き出す。 淡く白く光る玉に案内されて。 頭上は木々の枝葉に覆われ暗く、足元は玉砂利が白くぼんやりと明るい。 玉が止まればお堂が現れる。 お堂を向いて立ち…

尚
1か月前
2

お題「プライド」(掌編小説)

ダンスが下手で、メンバーにもマネージャーにも嫌われてる。 「自分で自分のダンス見るのに金払える? プライド持てないなら辞めな」 歌には自信、あるんだよ。 「踊るの辞…

尚
1か月前
2

お題「迷走」(掌編小説)

何で知ったかは思い出せないが。 マウスを迷路に入れ、餌のあるゴールに着く時間を計測する。そんな実験が行われたらしい。 迷走する動物を観察するって、どんな気持ちにな…

尚
2か月前
1

お題「用心」(掌編小説)

冬休みに実家に帰ると、歳の離れた兄から夜廻りに誘われた。 地域の若者たちが有志で、防犯や住民同士の交流も兼ねて、夜廻りしているのだとか。 若者といっても知命を迎え…

尚
2か月前
1

お題「くじける」(掌編小説)

綺麗な景色を撮影して、毎日SNSに投稿しよう、って決めたのに。 三日でくじけた。 綺麗だと思う景色が見つからなくて。 なんのために始めたんだっけ。って思った。 綺麗な…

尚
2か月前
4

お題「本能」(掌編小説)

どうやって世界の境界を越えるのか、ですかぁ? それがぁ、自分でもわかんないんですよねぇ。 行かなきゃならないのかぁ、って思ったらぁ、もう越えてるってぇこともありま…

尚
2か月前
1

お題「やみくも」(掌編小説)

やっかいだと、思った。 みっともないと、周りから思われても、気にしないアイツ。 苦しそうでも、自分で選んだことだからと、笑ってみせるアイツ。 もっともっと、って、…

尚
2か月前
2

お題「内観」(掌編小説)

ぼくの心の内側を観察してみた。
体育座りをして抱えた膝に額を押しつけ、泣いているぼくがいた。
涙とともにこぼれる呟きに耳を傾ける。
「死にたい」「楽になりたい」「笑いたい」「死にたい」「眠りたい」「叫びたい」「家にいたくない」
ぼくはぼくを抱きしめて伝える。
「ごめん」と「ありがとう」を。

お題「不道徳」(掌編小説)

数年ぶりの同窓会でドラマがないはずがない。
元カップルが再会して再燃。逆に、なんとも思っていなかった同級生と始まる秘め事。
既婚者が多くなった同窓会での再会をきっかけに、不道徳な関係がうまれるのではないか。
そんなことを期待したけれど、俺にはドラマチックな再会はなかったよ。
「だろうな」

お題「完全無欠」(掌編小説)

「TAKTさんっていろんな楽器ができて、作った曲は売れるし、博識で頭よくて完全無欠だと思ってました」
「過去形?」
「はい。直接会って話したりしたら、TAKTさんでもできないことあるんだって知りました」
「何ができないんだろ?」
「不機嫌を隠すこと」
「たしかに、できへんわ!」

お題「翻弄」(掌編小説)

自分と向き合って自分らしく生きると楽になる、なんて言われても。
他人の意見に翻弄されなくなる?
他人に翻弄されることは不幸せ?
それじゃあ、君の意見に従って始めたら、君に翻弄されることになるよね?
君のその考え方も、誰かに翻弄されてるんじゃないの。
よく考えてみなよ、君こそ。

お題「暴走」(掌編小説)

授業が終わって廊下に出ると、目の前を、奴が全速力で駆け抜けていった。
「廊下を走るな!」
休憩時間のたびに、教師の怒声が奴を追いかける。
奴の行き先は保健室。保健室の先生に惚れて休憩時間のたびに会いに行っている。
中学時代にモテまくっていた奴は、今はこう呼ばれている。
「暴走アイドル」

お題「期待外れ」(掌編小説)

「帯の宣伝文句で決めて読むけど、期待外れも多いんだよね」
「泣ける、とか、予想外の結末、みたいな?」
「そう、泣けないし、予想する材料が提示されてない、みたいな」
「あるね」
「宣伝文句を考える人と好みが合わないだけなんだけどさ。期待できない本は読む気にならないしな」
「むずかしいね」

お題「共感」(掌編小説)

突然、楽しくなって笑ってしまう。
突然、悲しくなって泣いてしまう。
突然、嬉しくなってガッツポーズをしてしまう。
突然、怖くなって立ちすくんでしまう。
どこで誰と何をしていても、前触れも脈絡もなく発生する感情。
遠く離れて暮らす双子の片割れと感情を共有していることは、便利で、不便だ。

お題「無慈悲」(掌編小説)

苛立つ歌手へ、作曲家は淡々と問うた。
「ファンの期待を裏切るけれど、君はそれでいいんだね?」
「しかたないじゃないですか、できないんだから」
「練習不足ではなく、たどり着けないレベルだと認めるんだね」
俯き拳に力をこめる歌手に、
「数字がすべて。無慈悲だね、この世界」
作曲家は淡々と告げた。

お題「事なかれ主義」(掌編小説)

「リディは事なかれ主義?」
「いきなりぃ何ですかぁ? ヒイロォ?」
「リディの戦闘を気配で避けるのすごいって話になって」
「はあぁ……」
「実は戦闘力高いけど、なんかがあって事なかれ主義になったから。って想像してみた」
「ほほぉ。もしそうならぁどうするんですかぁ?」
「んー、どうもしなぁい」

お題「堂々巡り」(掌編小説)

また次へと歩き出す。
淡く白く光る玉に案内されて。
頭上は木々の枝葉に覆われ暗く、足元は玉砂利が白くぼんやりと明るい。
玉が止まればお堂が現れる。
お堂を向いて立ち止まり、合掌し頭を垂れる。
顔を上げ、玉を振り返ると、玉が動きだす。
次のお堂へ歩き出す。
あの方の願いが叶うまで、ずっと。

お題「プライド」(掌編小説)

ダンスが下手で、メンバーにもマネージャーにも嫌われてる。
「自分で自分のダンス見るのに金払える? プライド持てないなら辞めな」
歌には自信、あるんだよ。
「踊るの辞めます。歌います」
そう言ったら、作曲家が爆笑した。
「じゃあ歌ってみ」
そんなこんなで、プロの歌手、プライドもってやってます。

お題「迷走」(掌編小説)

何で知ったかは思い出せないが。
マウスを迷路に入れ、餌のあるゴールに着く時間を計測する。そんな実験が行われたらしい。
迷走する動物を観察するって、どんな気持ちになるだろう。
そんな疑問が浮かんで。
人生に迷走する人間を、神が観察して論文にして発表するかもしれない。
そんな想像をした。

お題「用心」(掌編小説)

冬休みに実家に帰ると、歳の離れた兄から夜廻りに誘われた。
地域の若者たちが有志で、防犯や住民同士の交流も兼ねて、夜廻りしているのだとか。
若者といっても知命を迎えた人もいる。
それくらい若者の多くない、地方の集落を
火の用心
と言いながら、練り歩いた。
懐かしさと、寂しさを感じながら。

お題「くじける」(掌編小説)

綺麗な景色を撮影して、毎日SNSに投稿しよう、って決めたのに。
三日でくじけた。
綺麗だと思う景色が見つからなくて。
なんのために始めたんだっけ。って思った。
綺麗な景色を撮って、見返せるようにまとめたい。
自分のために。
それが始まりだって思い出した。
そしたら、目の前に綺麗な景色があった。

お題「本能」(掌編小説)

どうやって世界の境界を越えるのか、ですかぁ?
それがぁ、自分でもわかんないんですよねぇ。
行かなきゃならないのかぁ、って思ったらぁ、もう越えてるってぇこともありますねぇ。
呼吸ってぇ、目的も方法もぉ、考えなくてもできるじゃないですかぁ。
それと似てますねぇ。本能みたいなもんですねぇ。

お題「やみくも」(掌編小説)

やっかいだと、思った。
みっともないと、周りから思われても、気にしないアイツ。
苦しそうでも、自分で選んだことだからと、笑ってみせるアイツ。
もっともっと、って、止まらないアイツ。
アイツといると、一緒にやみくもに突っ走ってみたくなる。
この感情は、やっかいだと、思った。