お題「無慈悲」(掌編小説)

苛立つ歌手へ、作曲家は淡々と問うた。
「ファンの期待を裏切るけれど、君はそれでいいんだね?」
「しかたないじゃないですか、できないんだから」
「練習不足ではなく、たどり着けないレベルだと認めるんだね」
俯き拳に力をこめる歌手に、
「数字がすべて。無慈悲だね、この世界」
作曲家は淡々と告げた。

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