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シリーズ小説「界境の守護者」

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界境の守護者シリーズの小説たち
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固定された記事

いつもの駅で降りたはずなのに

 読書に集中していたのは認める。降りるつもりの駅を過ぎていたことは、1度や2度じゃない。 …

尚
4年前
17

お題「事なかれ主義」(掌編小説)

「リディは事なかれ主義?」 「いきなりぃ何ですかぁ? ヒイロォ?」 「リディの戦闘を気配で…

尚
2か月前
1

お題「本能」(掌編小説)

どうやって世界の境界を越えるのか、ですかぁ? それがぁ、自分でもわかんないんですよねぇ。 …

尚
3か月前
1

鏡の迷路

 無限に現れる鏡像の中に、未来の自分とか過去の自分、もしくは自分以外の何かの姿を探しなが…

尚
1年前
2

くたびれたスーツにスポットライト

「せっかくの本社出張なのに日帰りですか。ゆっくり話ができると思ったのに」  そう言ってく…

尚
1年前
4

いつものコーヒーを

 タブレットを持って近所の喫茶店に行き、店主こだわりのブレンドコーヒーを飲みながらイラス…

尚
2年前
2

消えゆく世界で 後編

 タイガは黙って続きを待った。ヒイロを見る目に力が入っているのは、光が薄らいできたからだけではないのだろう。  自らの両手のひらに視線を落としてから、ゆっくりと上げられたヒイロの顔にはうっすらと笑みが見えた。 「でも、忘れない。ひとつひとつの命のことは覚えていなくても、どんな世界だったか、は、覚えてる、全部。だから、もし、俺があんたを殺したとしても、俺はあんたのことを忘れはしない、ずっと」  今、彼は思い出しているのだろうか、自分が消してきた命たちのことを。 一つ一つの言葉を

消えゆく世界で 前編

「本の香りに包まれて」サイドストーリー  この世界に生きているのは、たった今ここに現れた…

尚
2年前
2

シゲキガホシカッタ

 何かがぶつかってきた衝撃があった。それから、熱を感じた。  すぅっと体から力が抜けてい…

尚
2年前
1

わかんないくらいずっと前から〈後編〉

前編はこちら  乾いた破裂音がした後、カツヒコの言葉にならない叫び声が聞こえた。 怒りを…

尚
2年前
5

わかんないくらいずっと前から〈前編〉

 バイト先から駅までは歩道橋を渡るのが近道だけれど、高い所が怖いボクは、歩道橋を歩くのも…

尚
2年前
5

本の香りに包まれて

 紙の本の匂いは、なんと心地よいのだろう。  生まれて初めて、こんなにたくさんの紙の本に…

尚
2年前
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シゲキガホシイ

 女に手を引かれて歩きながら、俺は早く帰りたいと思ってしまう。  帰りたい場所は、この女…

尚
3年前

寝床屋のとある一日 3

 寝床屋の管理人になると、仲間の気配に敏感になるのだろうか。  じっと眠っていた仲間が目を覚まして動いただけでもわかってしまう。  だから、水差しとコップを持ってその部屋へ向かう。 「おはよう、水を持ってきたよ」  ベッドの縁に腰をかけている新しい仲間は、寝起きらしいぼんやりとした表情であたしを見た。  あたしが水の入ったコップを差し出すと、小さく頭を下げて受け取った。そして、あっという間に飲み干す。  おかわりを注いでやると、立て続けに三杯の水を飲んだ。  それから、あたし