マガジンのカバー画像

シリーズ小説「界境の守護者」

25
界境の守護者シリーズの小説たち
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

いつもの駅で降りたはずなのに

 読書に集中していたのは認める。降りるつもりの駅を過ぎていたことは、1度や2度じゃない。 …

尚
4年前
17

鏡の迷路

 無限に現れる鏡像の中に、未来の自分とか過去の自分、もしくは自分以外の何かの姿を探しなが…

尚
1年前
1

くたびれたスーツにスポットライト

「せっかくの本社出張なのに日帰りですか。ゆっくり話ができると思ったのに」  そう言ってく…

尚
1年前
4

いつものコーヒーを

 タブレットを持って近所の喫茶店に行き、店主こだわりのブレンドコーヒーを飲みながらイラス…

尚
1年前
2

消えゆく世界で 後編

 タイガは黙って続きを待った。ヒイロを見る目に力が入っているのは、光が薄らいできたからだ…

尚
1年前
1

消えゆく世界で 前編

「本の香りに包まれて」サイドストーリー  この世界に生きているのは、たった今ここに現れた…

尚
1年前
1

シゲキガホシカッタ

 何かがぶつかってきた衝撃があった。それから、熱を感じた。  すぅっと体から力が抜けていって、倒れるって思った。  ヨミの黒い唇がニィっと歪んだのが見えた。  ああ、終わっちゃうんだ。  そう思ったら、ヨミが見えなくなった。  そして、あたしは誰かに受け止められた。  突然に目の前に現れた黒づくめの女が 「刺激に満ちた世界へ、お連れしましょう」  って言うから、あたしはその手を取った。  とたんに、見える景色がぐにゃっと歪んだ。歪みが消えたら、あたしは黒づくめの女と手入れさ

わかんないくらいずっと前から〈後編〉

前編はこちら  乾いた破裂音がした後、カツヒコの言葉にならない叫び声が聞こえた。 怒りを…

尚
2年前
4

わかんないくらいずっと前から〈前編〉

 バイト先から駅までは歩道橋を渡るのが近道だけれど、高い所が怖いボクは、歩道橋を歩くのも…

尚
2年前
5

本の香りに包まれて

 紙の本の匂いは、なんと心地よいのだろう。  生まれて初めて、こんなにたくさんの紙の本に…

尚
2年前
20

シゲキガホシイ

 女に手を引かれて歩きながら、俺は早く帰りたいと思ってしまう。  帰りたい場所は、この女…

尚
2年前

寝床屋のとある一日 3

 寝床屋の管理人になると、仲間の気配に敏感になるのだろうか。  じっと眠っていた仲間が目…

尚
2年前
4

幸せを願う者

 どこへ行けばいいのかわからないまま、夜の中を、前を向いて走っている。 「どうしよう、死…

尚
2年前
1

あの歌をもう一度 後編

<前編はこちら>  カナコは、元いた場所へ戻れず、初めの場所で同じ状況で歌うこともできないでいた。  人が少ないからと、準備を始めると、どこからか人が集まってしまうのだ。  集まりすぎる前に数曲歌って去る。その繰り返しになっていた。  人通りのない夜中にただその場に立つということも、カナコは何回か試した。けれども毎回、夜明けに帰ってきては、夕方まで部屋にこもってしまう。  カナコが笑わなくなったことを、俺もミノルたちも気にしていた。  気分転換になればと、ライブハウスで働い