観劇の概念を覆す”Sleep no more"
皆様はお芝居が好きでしょうか。
私はお芝居が大好きで、今まで様々なジャンルのお芝居を観てきました。
そんな私にとって数年前に訪れたニューヨークというのは夢のような町でした。町中毎日どこかの劇場でお芝居がやっていて、ふらっと見に行くことが出来る。
ニューヨーク滞在中に何本か観劇をしましたが、その中でもひと際印象に残っているのが”Sleep no more”です。ニューヨークを訪れると決めた時からどうしても行きたかったお芝居でした。というのも、観劇好きな方やニューヨークを訪れた方々が口をそろえて”絶対これだけは観たほうが良い!できることなら私がリピートしたい!”とおっしゃっていたのです。
そんなわけで、とにかくなんかすごいらしい…となんとなくの情報を得た私は友人と共にSleep no moreを観に行くことにしたのでした。
以下、内容のネタバレを含みます!
イマーシブシアターとは
immersive theater:没入型の劇場
Sleep no moreはイマーシブシアターと呼ばれるものの一つです。最近日本でも流行っているスタイルの演劇です。
芝居を見る、となると座席に座って舞台を眺めるのが普通です。席によっては肉眼で、場合によってはオペラグラスを使って必死に舞台を見ることでしょう。でもイマーシブシアターは違います。
観客も立ち歩いて、舞台セットに触れて、役者を至近距離で見ることが出来ます。(お芝居によって差はあるとは思いますが)
客席から舞台を眺めているだけでない、物凄い没入感が味わえるのです。
まず会場がすごい
Sleep no moreの会場はホテルまるまる一棟です。正確には、廃ホテルとなった建物をお芝居用に利用されているのだそうです。
なのでとにかく広い!この広すぎる会場のあちこちに役者が散らばり、同時進行でお芝居が繰り広げられます。
受付後、まず最初に通される部屋はラウンジ仕様になっていてお酒の注文なんかもできたりします。中央のステージでは女性がムーディなライトに照らされながら歌っています。それを椅子に座って眺めるめかしこんだ人々…明らかに我々観客とは違います。ラウンジの段階でお芝居は始まっているようです。
女性の歌が終わると一人のタキシードを着た男性がステージ上に現れます。そしてマイクの前で一言。
”5~10番の人どうぞ”
受付時にトランプを1人1枚渡されます。どうやらこのトランプの数字に従って入場順を決めるようです。同じグループで来ても違う番号を渡されるのでここで友人たちとはお別れです。お芝居終了後にまたこのラウンジで集合となります。
中で体験したこと
私も番号が呼ばれ、中に入ろうと列へ並びます。
そこで観客は仮面を渡され、つけるよう指示されます。
仮面をつけることで観客は演者からは見えざる存在となります。
そういう設定だ、ということなのですが実際私はとても狭い部屋の中に居るときに至近距離で芝居を見ていたら役者さんとぶつかりました。(見えざるものだからそこに誰もいないものとして扱われます)演技の邪魔をしてしまったかもと申し訳なかったですが、役者さんはそんなことを気にも留めず芝居を続けていました。ちなみに私語やスマホの使用は禁止です。
観客はどこでどの役者さんのお芝居を見るのも自由。もちろん、一箇所に留まり続ける必要はなくあちこちのお芝居を見に歩くのもオッケーです。
役者さんはホテルのあちこちを動き回るので付いていくのは大変です。絶対にスニーカーで行った方が良いという先達の意見は正しかったです。
お芝居が行われている場所には人だかりが出来ているのでそれを目印に進めばお芝居を観ることができます。
私が入ったような数人しか入れないような非常に小さな部屋でお芝居が行われていることもあれば、数百人は収容できそうな大広間で晩餐が行われているのを見守ったりします。
スポットライトに照らされた役者さんとそれを取り囲む仮面を付けた観客たち…それだけでもかなり異様で刺激的な光景でした。
勿論、役者さんを追わずに舞台セットを見て回ったりするのもアリです。全速力で移動する役者さんに付いていくのに疲れた私は本棚から本を取り出して眺めたり、引き出しの中には何が入っているんだろうと確認したりしました。少し休憩して、またお芝居を観に戻るのももちろんOKです。
友人は壺から飴を取り出して食べたと言っていました。そんなのもアリなんだ…。
1回だけしか観劇できなかったけれど
絶対にリピート推奨の演劇でした。
昔の記憶を思い出しながら書いていますがそれだけでもう一回行きたくなっています。
マクベスが元ネタとのことでしたが、非常にストーリーは難解です。そして、同時多発的にホテル中でお芝居が行われているので全てのお芝居を網羅するのは困難です。お芝居は三回上映されるとのことでしたが、それでも1度の観劇だけではすべてを網羅することは難しいと感じました。
でもだからこそ、リピートしたくなる…!
観劇を終えた後は、友人たちと別れたラウンジに再び案内されます。そこからは私語が解禁されるため、”舞台装置すごくなかった?”、”マクベス夫人の芝居観た?”、”あの光が点滅しまくる部屋すごかったよね…”などお互いが見たものを共有することが出来ます。それぞれ違った体験をしているので感想を共有するのは新しい発見があってめちゃくちゃ楽しいです。そして、余計にリピートしたくなる…
Sleep no moreは現在ニューヨークと上海で上映しているそうです。
ニューヨーク、又は上海を訪れる際はぜひSleep no moreを観に行ってください。
そして演劇観をぶち壊されてきてください!楽しいですよ!!
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