昼過ぎが言う【ロルカ詩集 書評】

"影が飲みたい"

 (「新しい歌」より)



久しぶりの連休

ふらりと足を伸ばした富士山の近くで

わたしの脳裏に焼き付いたものは


19世紀終わり

スペインのオリーブ畑

オレンジ色の花


知らない街で

はじめて入る古本屋

安宿のベットの上で

深夜に読む

フェデリコ・ガルシーア・ロルカ(1898-1936、スペイン詩人、戯作家)の詩集





彼はこのことをこう言う

"死が歩いていく

一本の道

しおれたオレンジの花をつけて"
 (「おとむらいの鐘の音」より)



あるいはこう



"死が出たり入ったり

居酒屋"
 (「マラゲーニャ」より)




ああ

息をするのも忘れるくらい





垣間見える

左のほうの翼と

イエスの残像

スペインの、広く青々とした風景






20世紀はじめ

上陸したばかりのファシスト軍の銃弾

それによって彼は

しおれたオレンジの花を胸につけることになる

抜け殻の上には3本のオリーブの木



"家ではほんとに一人ぼっち

なんてむずかしいんだろう

おまえが好きだと告げるのは"
 (「アンパーロ」より)




ああ。



このことだれかに

言わなくちゃ




"ぼくは出会いが好きだったのだ"
 (「出会い」より)




誰もが詩人だった

19世紀のヨーロッパに思いを馳せて

水色に塗った爪眺める



ここは、どこだっけ





「ロルカ詩集」長谷川四郎訳
みすず書房(初版昭和42年)





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