繰り返す長編の夢 ~帰りゃんせ百物語『#夢シリーズ』~

出版創作イベントNoveljam発の怪談小説『帰りゃんせ』の販促企画として百物語連載が進行中。その中からシリーズ化されているものをピックアップして、読み切りエッセイとしてまとめました。
この記事では、日野さんが思春期に体験した「ストーリー夢」についてのエピソードを主にまとめています。
※ 当記事の著作権は、元記事執筆者の日野光里さんに帰属します。

市松人形のお祓い

思春期の時期、やけにストーリー性のある夢ばかり見ていた。これはそのうちのひとつ。

夢の中で、私は結婚して女の子と男の子を生んでいた。

そして、旦那は霊能者で、お祓いが生業だ。

その日、桐の箱に入れられた市松人形が送られてくる。

人形の上には祓ってください、というメモ書きだけ。

旦那は早速護摩壇を組んで、その人形の箱を一番上に起き、祝詞を唱えながら、火をつけた。

まるで棺を焼いているような光景。

長くかかるとわかっているので、私は子どもを連れて、お祭りに出かける。

しばらくして帰宅すると、護摩壇は燃え尽きていた。

が、旦那がひどく取り乱して告げる。

「まずい。あの人形が飛んでいった。火がついたまま」

真っ青になった旦那は続けた。

「逃げろ、神社の境内までの階段を一気に駆け上れ! そこは結界になっている」

私は子どもふたりを連れて、必死に石段を駆け上がる。

どうにか、境内へと辿りつき、子どもたちを抱きしめた。

「大丈夫、大丈夫。ここは平気だから」

しばらくすると、旦那も境内にやってくる。

「だめだった。あの人形は浴衣を着た女の子の上をついてまわって、嫌がる女の子に抱き着いた。それで、その子に火がうつって、もろともに燃え上がった」

祓いは失敗したのだ。

そして、終わっていない。

帰宅する途中、祭り囃子の中、着飾った浴衣の女の子が賑やかに通り過ぎていく。

そのうちのひとりの女の子の頭上には、あの人形が浮いていた。

さっき焼け死んだ女の子も一緒に――。

ゲシュタルト療法

私はパートを辞めてフリーランスになった年に、産業カウンセラーの学校へ通った。無事に資格も取得し、上級カウンセラーのためのワークショップを受けてるときに「ゲシュタルト療法」も受講する。

二日間にわたるワークショップは大変貴重な体験だった。

エンプティチェアという方法を使うんだけど、抱えてる問題の人を椅子に座らせた態で話を進めるわけ。

それで誰が悪いと思うのか、悪いと思う人の数だけ椅子を並べてみてってやつで、たくさん並べる人もいるって話になって。最終的にはそれが「世間が悪い」と思う人もいるらしい。

でも、それって突き詰めていくと「両親に対する不満なことが多い」って言ってて、妙に納得した。

で、ワークショップ二日目は「繰り返し見る夢」を持ってる人って手をあげさせられる。実は私、いくつかの繰り返し見る夢を持っているんですよ。んで、勢いよく立候補したら採用された。

ゲシュタルト療法の先生は「このワークショップをやったら、二度とその夢を見なくなりますよ」と言う。

さて、まずは私の繰り返し見る夢をご紹介~。

夢の中で、私は「通り過ぎていく者」のひとりだ。

何人かの仲間と常に世界を放浪している。ある夜、いい水場を見つけて、そこでみんなと水浴びをした。

ところが、暗くてわからなかったけど、そこには石碑とか地蔵とかがあって、その地域の聖域だったらしい。しかも、その聖域を荒らしてしまったがために、私たちは呪いを受けてしまう。

仲間のひとりがすでに高熱を出して、やばい感じになり、私たちは仲間を助けるために、近所の家を訪ね歩く。でも、呪いを恐れて村人たちは出てきてくれさえしない。

そんな中、一軒だけ、煌々と灯りのもれている家があった。お寺か神社の社務所みたいなところ。格子窓からの明かりが地面に落ちている映像をくっきり覚えている。

そこには親子が住んでおり、子である青年が私たちを助けてくれる。もともとそういうお祓いをする仕事をしてたと思う。かろうじて、それで私たちは死なずに済んだ。

しかし、私たちを助けるために、その青年は呪いを受けてしまう。恐らく、もうまともには働けないだろうくらいの呪いだ。助けてくれる中で、私は青年と心を通わせていた。

けれど、私たちは「通り過ぎ行く者」だ。決して一か所に留まってはいられない。だから、行かなくはいけない。

出発の朝、私は寸前まで「ここに残る」と口に出そうになりながらも、青年と別れる。自分でも行かなくてはいけないとわかっているから。

別れるときに青年が呪いを受けたことを隠していたから、そのことに触れられなかった。そして、何も告げないまま、別れていく――。

というパターンの夢を中学くらいから繰り返しみていた。

そのことをまずはみんなの前で説明する。

で、ここからエンプティチェアの出番だ。

先生が「では、その別れの場面を再現しましょう。

その青年はどこにいますか? ここですか?」

と示された青年の位置が、私の中では違った。

「もっと遠くです」

「では、青年の位置を教えてください」

そう言われて、私は夢の中の距離に合わせて、青年の位置を示す。

これ、びっくりするくらい距離感がはっきりしてるのよ。

前日は実際に椅子で距離を測ってたんだけど、椅子を置いた後に、生徒の人が、

「近すぎます。もっと遠くです」

と、ぐいーーーーーっと椅子を遠ざけた場面があったの。それを見ながら

「まっさかーテキトーだよね」

と思っていた私のバカバカバカ!

完全に自分の中で定めた距離があります。そしてエンプティチェアではこの距離感がとても大事。

距離設定が終わった後、先生が

「では、その青年に夢の中では言えなかったことを言ってください」

と言うわけね。

で、私は残りたい気持ちがないわけじゃないけど、どうしても行かなければいけない、助けてもらって感謝している、呪いを受けさせてしまって申し訳ないって伝える。

すると、先生が

「では、次は青年の位置に立って、青年の気持ちになって答えてください」

って言うわけよ。

で、青年になった私は

「こうなったのは自分で決めた。覚悟していたことだから、全然恨んでいないし、納得している」

と答えるのだ。

そういう会話を何度かやって終わると、先生が

「では、後ろを向いてください」

と言うから、仮想青年に背を向けた。

先生「次に振り返ってみてください」

言われて振り返ったら、

なにが起こったと思う!!!!
その青年の距離が近づいていたの!!!


いや、びっくりよ! 自分の中の距離なのにさ!

それが近づいているのがハッキリ自覚できて、私、思わず吹き出してしまいました。

「どうなりました?」

「距離が近づいています」

「では、また話してください」

そう言われて、私はまた同じシーンを演じるわけ。言い足りないことがないくらい伝えたいことを伝える。青年になっても会話する。

そしてまた背中を向けると、また距離が近づいている。

これ繰り返すとどうなると思う?

青年は私と同化するのだよ!


めっちゃびっくりして、「先生、青年が私と同化しましたあっ!」って告げると、もっと続けてくださいって言うわけ。

するとどうなると思う!!!!

光になるの。


イメージとしては、ナウシカのオープニングで飛んでる羽根の生えたお姉さんが光を持って飛んでる感じ。

そこでゲシュタルト療法は終了~~。

先生から「最初で、ここまでできる人は珍しい」と褒められた。

ってことは、たぶん同化と光の段階は誰しもにあることなんだと思う。

この療法が終わってから、私はこの繰り返し見ていた夢を見ていない。

ゲシュタルト療法って凄い。ちょっとした白昼夢体験だった。

オカルトっぽいけど、ちゃんとした療法だから!!

でも怪談に入れちゃうよ。それくらい凄い体験だった。

初夢と夢占い

2日に見た夢は初夢らしいですが、私は関西弁の赤ちゃんを産む夢を見ました。吉夢らしいです。

分娩代にのぼって、鎮静剤二回打たれたら、全然痛くなくて、医者としゃべってて、「帝王切開がいい」と言うと、「じゃ、そうしようか」と言ってるうちに、「あ、でも出てきた」言うじゃあ~りませんか!

「ええっ!」ていううちに、ぬるりというリアルな感覚。私、本当の出産ではお腹押しても子が生まれなくて、結局途中で帝王切開になったんで、股から生むリアル感覚は知らないのに!

でも、無事に生まれました!後産の感覚もありました。

そして、生まれた赤ちゃんが「かなわんなー」言うんだなあ。

たぶん関西の人と仕事して、新しい作品を生むんだと思う。ということで、関西の人、よろしくー!

吉夢と言えば以前、蛇を食べる夢を見たことがあります。なんか固い鱗の感覚がリアルでした。これも相当な吉夢でした。世界を手に入れるくらいの勢いのことが書いてあったような……。

以前、思春期に物語性のある夢を見続けた日があると書きました。

今回はそのひとつ。

中学くらいのときに、友達と火事で焼けた工場跡で遊んでいる(これは本当にあっていつも遊び場でした)と、友達の弟悪ガキ3人衆がきて、囃し立てる。

「あっち行こう」と思った瞬間、空がフラッシュを焚いたように光った。

慌てて、そこの地下に入る出入口に、友達と逃げこむ。私は一番最後でハッチを閉じる役。

街中に、このようなハッチがあり、いつ核戦争が起きてもいいようになっていたのだ。地下は全部つながっていて、生き延びた人々は集められて生活するようになる。

残念ながら、外にいた悪ガキは助からなかった。逃げ延びた人も少なく。その少ない人数を集めて、学校も組織された。

けれど、その学校では生徒が徐々に少なくなってくる。

ある日、私は呼ばれて集められる。そこには数人いるんだけど、それらの人は毎日の検査で規定以上の放射能を浴びた特徴がでてるらしい。これから集中して調べるとお達しがくだる。

そこで初めて、人がいなくなるのは死んでいたからだと知った。

そのとき集められた人は自分たちが危険だと言うことは言ってはいけないと言われてて死ぬときもこっそりとになると知らされる。

秘密を抱えた私はそのメンバーのひとりの男の子と仲良くなるんだけど、彼もある日、ぷっつりと来なくなる。

ああ、次は私かもしれない。

そんなことを思いながら、授業を受けている。

とてもとても長い夢だった。でもこの後、なぜかベルサイユのバラの話になっていくのが夢らしい。

と、長々と夢の話を書いてきましたが、次回が一連の夢の最後だと思う話。

抜け出せない夢

昨日の初夢に引き続き、夢の話。
これまで夢の話は3回書いてきていて、これが4回目ね。

思春期には、本当にストーリー夢をよく見ていた。夢に見たことをそのまま作品にしたりもしていたし、今でもやる。東北怪談同盟賞をもらった「こねる」も夢でみたまんまだ。それで賞を獲れるのだから、夢はあなどれない。

さて、思春期夢シリーズでは「黒いドレスの女」というのもある。高校の校舎のまわりを文化祭のときにひたすら走って、黒いドレスの女を追いかけるというもの。いつも曲がり角あたりで、黒いドレスの裾だけは見えるのに、後一歩で追いつかない。

でも、あっと思って、自分を見下ろすと、黒いドレスを着てた。

なんてのもあった。

それから、始皇帝の側室のひとりになっている夢もあって、千人くらいいるから、末端の私のところには始皇帝は来ない。隣の部屋の人と仲良くなったりするんだけど、実は自分が始皇帝をぶっつぶす側の人間で、結局始皇帝の城に火をつけて脱出。抜け穴から、仲良くなった側室のひとりと逃げて、少し離れたところから煙をあげる始皇帝の城を見つめている夢、とかね。

なんだかユダヤのように迫害される人種になっていて、それでも頭が良かったから授業を受けさせてもらうんだけど、先生は優しいけど、生徒には白い目で見られていて、そのうち、その学校に捜査の手が伸びてきて、実は迫害される設定ってのが、その学園を運営していた夫婦の作った偽の世界観だったって話とかね。

当時は寝るのが楽しくて、毎日映画館に行くかのごとくだったのだ。でも、それはたぶんやばい状況。寝たまま起きてこなくていいくらいの勢いでもあったから。

そんなときに見た夢がある。

自分たちは黒い王を倒さなければならない一味。そのために、黒い王をおびきよせる宴を開く。黒い王は黒い六頭立ての馬車でやってくるんだけど、それを扉の影で待ち伏せていて、銃で撃つという作戦だった。

でも、いざ扉の影から出ると、黒い王は馬車を離れて空中に浮いている。黒い装束に黒いマントをはためかせる彼を私は見上げていた。彼の後ろには満開の桜があって、壮絶な勢いで散っていく。

桜吹雪の中、彼は私の向ける銃口を真っすぐに見つめていた。

「私を撃つというのか? 本当に撃てるのか? 撃てば二度とこれなくなるぞ」

そんなことを黒い王は言っていた。でも、私はちゃんと黒い王の額に狙いを定めて引き金を引く。

弾は過たず、黒い王の脳を撃ち抜いた。

そして、目が覚めたのだ。

「ああ、私は戻ってこれた」

どこか確信めいて思ったことは、あのとき撃たなければ、私は夢から目覚めなくなっていただろうってこと。

嗚呼、なんて素晴らしき厨二世代!

あれからも、私はストーリー夢はときどき見る。いまだ受賞したりと、夢に助けられることもある。でも思春期のような長いものは見なくなった。

今だに思う。果たして、あのとき撃ち抜かなければ、どうなっていたのかな?ってね。


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芸術文/実用文の間、物書き/編集者の間をフラフラと行ったり来たりしながら、何かしら新たな価値が生まれないかと日々試行錯誤しております。
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