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「不親切な街の人々と親切な街の人々」ショートショート

とある街の酒場

「やぁ、いらっしゃい。見かけない顔ですね。旅の方ですか?」
「ええ、今度、ここにひっこそうかとおもっていて、下見にね」

「そうですか。下見は大切ですよね。しかしどうしてここに引越しを?」
「ネットでいろいろ調べてね」
「なるほど。仕事関係でもないんですね。どうしてまた引越しを?」

「いま住んでいるところがひどいところなんだよ」
「そうなのですか?」
「そうなんですよ。薄情で、よそよそしく、冷たい人たちばかりで、親切心のかけらもない、そんな人が住んでいる場所ですよ」
「そうなのですか、それはひどいところですね」

「ええ。だれも手を貸してくれず、そんな人たちばかりなので、引っ越すことにしました。ネットで見たところ、ここは親切な人が多いそうですが、実際はどうなんですか? 本当だったらここに住もうとおもって」

「そうですか。そうだとすると、残念かもしれません。おそらく、いまあなたが住んでいる場所の方々とそう変わらないでしょう」

そういうと、旅人は残念そうな顔をした。

「だとしたら、ひどい場所ですね」

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旅人がさった後、もう1人の客がやってきた。その男も旅人のようだった。

「やぁいらっしゃい。旅の方ですか?」
「ええ。そうです。といっても今度、ここに引越しをするんですが」
「そうなのですか?」

「ええ。仕事の関係で」
「それはそれは。大変ですね。今住んでいる場所を離れるのは惜しいですか?」

「ええ。いま住んでいる場所の人たちは、優しく、親切で、温かい人たちばかりなんですよ」
「それは素敵ですね」
「ええ。そういった人たちに出会えた人たちに出会えた人に感謝しています」

そういうとマスターはいった。

「きっと、この街でもそういった人たちに出会えますよ」



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