「死んでしまうとはなにごとだーー生命の証明」ショートショート

ゆっくりと目を覚ます。

「アルファ。状態はどうだ?」

「ここは・・・・?」

つい先ほどまで戦闘前のスクリーニングを行なっていたはずだ。

それがガラッと変わって、研究室然とした場所にいる。

「・・・・・俺は、死んだのか?」

「理解が早くて助かるよ」

目の前の白衣の男はこともなげにそういった。

「なるほど。ヘタをうったというわけか」

 男は理解した。

 自分は軍人(ソルジャー)だ。一流のソルジャーは常に人手不足だ。ゆえに軍は死に物狂いで、蘇生を試みる。

 今回の戦闘では激戦が予想されたため、いつも以上に出撃前のスキャニングがされていた。

「それで、、、俺はどこまで死んだんだ?」

「ほぼ、全部かな」

「ほぼ全部?」

 今の蘇生技術は1世紀前とは比べ物にならない。細胞一つからでもすべてを蘇生できる。

「脳も、、、意識もか?」

「ああ、残念ながら脳も完全に破壊されていた。見つかったのはきみの死体だけだったよ」

「というと、この意識は・・・だから戦闘の記憶がないというわけか」

「ああ、正確にはきみの死体から細胞を拝借した。脳の記憶についてはホログラフィメモリーを元に、生前の記憶を定着させている」

「なるほど」

「さっそくだが、任務をーーーきみを殺してほしい」

「不躾だな。そして、生き返ってそうそう殺してくれとは、人使いが新井にもほどがあるだろう」

「そうだな。しかし、君がぐっすりと眠るためには早めにこなしてもらう必要があると思ってね」

「なんだーーこの義体は?」

「もう1人の君だ」

「なんだと?」

精緻に作られた機械人形のデータを見せられながら

「完全な機械でモデリングされた、君だよ。ただし、ナノマシンで模された、ね」

「・・・・・同じ人間をコピーするのは違法だろう」

違法だ。ただし。いや、規制されるということはつまり、できないことではない。

「他の研究所が勝手にやったことだ。だからこそ、君に依頼するんだ。違法行為への罰として。相手は機械コピーだから合法と言い張っているがね」

詭弁だ。ナノレベルでコピーされたということは、脳構造や意識まで完全にコピーされているはずだ。

つまり、今の自分とほぼ同様のものだ。

「やれやれ、死んだってのに、ヒマを与えてはくれないんだな」

「それだけきみが優秀ということだ」


アルファはつぶやく。






アルファの意識を写されたモノは、呟いた。

心の中で、見ず知らずのアルファを弔いながら。



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