マガジンのカバー画像

世界放埓日記

54
運営しているクリエイター

#映画

プルーストとアシマン

プルーストとアシマン

「両思い」って単語を使うことに、いつから恥ずかしさを覚えるようになってしまったのでしょう。
「恋人」「彼」といった言葉なら臆面もなく口に出せるのに、「両思い」って単語を舌先に乗せるだけで今の私は体の芯からきゅっと締め付けられるのです。
映画「君の名前で僕を呼んで」は平日にもかかわらず座席の多くが埋まっていました。
ティーンの頃に、他者によって糊を解きほぐされた湿ったシーツの感触を知った人なら、きっ

もっとみる

化粧総崩れ

「全米が泣いた」のような客觀的な惹句は私の心に響かないので、代わりの言葉を考えた。皆さん使ってください。男性でも可!

時折ふらっと映画を観に行く、ひとりで。気に入ったら4回でも5回でも映画館に足を運ぶ。
私はサプリメントよりも、美味しいご飯を親しい人と食べるのが好き。ご飯を食べた後にお腹がくちくなって、身体の奥から暖まるのがわかるから。
安易に答えを提示する自己啓発本よりも、答えを模索する姿を曝

もっとみる

白は別に一色ではない

ユーリノルシュテインのアニメーション「はなしのはなし」を初めて観たのは、芸大の学部生だった頃の情報学の授業だった。
情報の授業の先生はユニークな方で、その割に私はその講義を全く覚えていないけれど私のレポートに対するお返事が面白かったことや、スティーブライヒの音楽について盛り上がったこと、車の趣味が近しいことで、勝手に親近感を感じていた。

いつだったかの授業で、先生はノルシュテインの「はなしのはな

もっとみる

影を観る

父の書斎に積まれていたビデオの一つに、ゼッフィレッリの「ロミオとジュリエット」があった。
小学生の私は父に「観たい」とせがんだが、彼は「18禁だから一人で観ろ」と告げ、ビデオをデッキに突っ込むと書斎を出ていった。
一人体育座りをして観たその映画、内容は特に18禁でもなかったし、過激なシーンも無かった。
それでも、意識の根底で「これは大人の映画なのだ」と考えながら、段々と暗くなっていく書斎で観た映画

もっとみる