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もしかして私たち、時間の感覚ずれてます?

 「はーい、次の島での自由活動時間は30分です。13:10に売店の近くで集合します。そこのグループ、13:10ですよ、遅刻しないでくださいね!」とタイ人のガイドさんが厳しそうな顔で注意事項を叫ぶような大きな声で喋り続けています。
 タイ南部でアイランドホッピングに行った日のことです。
 早朝7時から夜7時までの12時間をフル活用して4,5個の島を船で回る、いわゆる「特攻隊」(中国語:ハードスケジュールの意味)のワンデーツアーに申し込みました。
 集合場所に行ってみると、無言でおとなしそうに座っている大学生っぽい日本人グループ、24時間をかかって島に来た中華系アメリカ人の4人家族、受付でパスポート番号を思い出せず焦っている中国人カップル、楽しげに喋るフランス人っぽい男子たち、そして派手な運動着を着ていていかにも新富裕層と思わせるインド人グループ…とかつては中国人だけでも繁盛していたツアーにバラエティが増えた面白そうなメンバーで出発することになりました。
 午前中に海にある洞窟の近くで泳ぎ、小さな島に上陸したのはお昼過ぎででした。出発時間が遅れたこともあって、これだけの移動で既にランチが待ち遠しく思いました。
 「13:10に集合ですよ、遅れずに戻ってきてください。特にそこのグループ、ちゃんと聞いてくださいよ」とガイドさんが、写真を撮り続けているあるグループに向けて怖さすら感じる声で何度も念を押して注意していました。
 「ここが終わったらお昼を食べられるんですね」と隣で疲れていそうな顔をしているアメリカ人に私が喋りかけました。「うーん、たぶんね」。
 そして、13:05に集合場所へ。同じグループの人たちがゾロゾロと合流してきました。13:10に、点呼が始まりました。
 「Aホテル」「はい」
 「Bホテル」「はい」
 「Cホテル」「…」
 「Cホテル?」「…」
 「揃わない、誰がまだ来ていない?」ガイドさんが少し焦り始めました。
  13:15、あるグループの方が会話を弾ませながら向かってきました。申し訳なさそうな顔は一切なしで集団の中に加わりました。
 再び船が出発しました。
 「今度こそランチに行けるんだ」とビュッフェで何を食べようかを考えているところ、「次はシュノーケリングです」とガイドさんから「青天の霹靂」が聞こえてきました。集合時間は14:30でした。
 渋々シュノーケリングに行って、海水も少し飲んじゃって14:30を迎えました。
しかし、この時ダイビングに行ったあるグループの方が戻ってこないです。
「まさかまた!」と思って待ったところ、あるグループの方がゆっくりと船に上がってようやくランチに向かえました。
 結局、ランチを食べ始めたのは15時過ぎでした。
 お腹が空くとモンスターになる私も流石に苛立つ気力も失って黙々と冷めたパッタイを口にしました。
 そして、ランチ後の出発も、最後の島からの帰りも、あるグループの方が永遠に少しずつ遅れて集まってきたので、押され押されで一日の旅が終わりました。
 さて、皆さんは「あるグループ」の方はどのグループの人だと思いますか。 
 不特定多数の人との集団行動で、相手の時間を大事する考えは普遍的な価値観ではないようです。約束時間を守る、できれば5分でも少し早めに着くのが礼儀だと長年の日本生活で訓練されてきました。相手は知り合っている人でも、初対面の人でも、その場限りの人でも、相手のことを考える、そして集団のことを考えるのが普通だ(最終的には自分がどう相手に思われるかを気にするところから始まったが)と思いました。
 一方、相手を尊重しているかどうかということより、その場その場で起きたことに対処できるよう常に臨機応変な姿勢で備えることの方を優先する価値観もあるようです。
 
あの「あるグループ」の方もきっと「折角家族と遠いタイに観光に来たし、存分にその時間を満喫しないと、一日あるからここで時間を押しても次のスポットで調整がつく」と考えていたかもしれません。少なくとも彼らも他に遅れる人にも寛大な気持ちでいられるのではないかと信じています。
 私たち、確かに時間の感覚が違いました。


Podcast:Nana在日本
個人HP:https://nana-zai-jp.com/

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