歴史小説「Two of Us」第3章J-29
~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第3章 本能寺の変以後から関ヶ原合戦の果てまで
(改訂版は日本語文のみ)
The Fatal Share for "Las abandonadas"
J-29 ~ An Invitation from A President ~
高麗の首都ソウルを占拠した、九番隊待機組細川忠興と、弐番隊伊達政宗のもとへ、突然、退去命令が下された。
ご時世のトップ武将、豊臣秀吉からの命では、ない。総大将の宇喜多秀家でも、ない。
ましてや、中国大陸侵攻最先端の、北西へ向かっている壱番隊隊長、小西行長からでは、有り得ない。
そのキリシタン大名小西行長と、小競り合いの対立を繰り返している、七番隊石田三成からの命だった。
三成は、ただ太閤秀吉の志に忠実に指示を出しているのだが、いかんせん、他人の情を読み取れない性質ゆえ、反感を買い易い。理想主義な三成に対立する武将は、少なくはない。
加藤清正。清正公は血気盛んであちこちぶつかるのだが、今回は誰もが三成よりも、現実的な策をこらす加藤清正に、味方した。
「いったい何のための、侵攻か!」
「キリシタン大名だけ、領地を奪いに行けば良いではないか」
「わしらは、帰る!!」
三成の太閤に忠実な指示に不貞腐れて、加藤清正は八つ当たりでベンガル虎を3匹、打ち取ったくらいだ。さらに今度は、踏ん切りも衝かないタイミングで、
「壱番隊から十番隊まで、すべて退去させよ」
と、のたまったのだ。
太閤の側近とはいえ、三成は一国の大名扱いではないのに、多勢を言葉一つで振り回そうとする態度が、加藤清正の逆鱗に触れた。
「ええかげんに、さらせえ!!」
だが、退去せざるを得ない。
他でもない太閤秀吉殿が、逝去されたからだ。
やりたくもない異国での戦いを、いつまでも続けている武将たちではない。自分の領地の統治の方が、大切なのだ。
太閤秀吉の死去は、織田信長の死去よりも、混乱は少なかった。
異国の地で、もしくは残留した自陣の土地で、皆がそれぞれに武将としての思惑を、固め始めていた。
また、細川忠興や伊達政宗などの、若手精鋭もまた、まったく新たなる志の動きを既に、始めていたからだ。
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