見出し画像

サウンドスケープはマインドフルネス

おはようございます。お元気ですか?

今日は私のように音が好きな人の為に書きたいと思います。

ある時私は現代音楽の世界では有名なN.Y.の中国人作曲家TanDunとゆっくり話す機会がありました。其の頃私はイギリスでヨーロッパの現代音楽の勉強をしていたのですが、当時の作曲家たちのコンセプトに何かが違う、なんでそう思わないんだろう、、、、と疑問に感じている部分があり、そのせいでその世界に逆にのめり込んでいました。 そんな話をしているとTanDunはいきなり、君の名前を漢字で書いてといいました。ナプキンに書いた私の名前をみて、本当に名前の通りに育ったんだ、、、。と大笑い。そして静かに、君のそれらの質問を考える前にまず自分のルーツを知らないといけない。自分の原点が分かってから先に進むことが大切なんだと話してくれました。

夏に日本に帰る機会があり、私は日本の太鼓について論文を書くことにしました。そこで前から凄いと思っていた石川県の御陣乗太鼓とヨーロッパのコンバインアートの比較について調べようと思ったのですが電話をしてみると 「すみません、よその人には教えられません。」と短く断られてしまいました。 日本は自分のルーツだと思っていたのに、よその人? 確かに当たり前だ、、、。それは日本の文化がどれほど深く長い歴史をもっているかということだとすぐに感じました。結局東京の助六太鼓を習うことにしたのですが本当に勉強になりました。

太鼓には簡単にいえば、ドンとカッしかありません。当たり前って思われるるかもしれませんが、私はそれまで考えた事がなかったんです。楽譜もなければ指揮者もいない。テンポも決まっていなくて、その場の状況でいつもよりゆっくりだったり早かったり、途中からどんどん早くなったり、、、。大人数でたたきながらくるくる回り、音がでなくても空気をたたき、決めるときはバチの構え方がピタッと周りと合わなければならない。 バチが汗ですべり、豆がつぶれて血で赤くそまり、、、。 ピアノ科だった私には強烈な世界でした。 そしてカシラがたたく ドンっていう音。 音が抜けるってこのことだと本当に感動しました。ストーンって抜けていく音が全身で感じられるんです。それに比べ自分のたたく音は皮の表面だけなったっていうつまらない音。 そして何より学んだのは、間の意味です。音がなくても緊迫緊張した間、すべてが静かに流れて消えた後の間、空気が変わる前の間、息が止まる間、生まれる間、過ぎていく間、、、。ただし、間には音が必様なんですね、、、そして音には間が必要。

間といえば、昔アメリカの作曲家、ジョン・ケージが4分33秒という休止符だけの音楽を作りました。当時この曲の意図はなんなのかジョン・ケージのみならず様々な音楽家がサイレンスに関して、演奏の音が鳴っていなくても聞こえる会場の音について、など今までとは違うコンセプトについてあちこちで話していました。ジョン・ケージはいつもこんな感じで頭でっかちになりがちのエリート作曲家達に気付きを与えるので面白い、大好きです。でも何処かカリフォルニア的な軽さがあって東洋哲学っていうにはなあ、、、と思っていました。

日本の間の文化、とくに日本の庭園はなど考えればそれはまさに現代芸術の基本だと思います。障子から聞こえる水の音やモミジの影。 その環境があるゆえの立ち振る舞い。床を歩くときになる計算されて作られた音、それがあるから歩き方や速度が変わるわけです。 ただアメリカの心理学者James J GibsonがいうAfforcance (環境に実在する動物(有機体)がその生活する環境を探索することによって獲得することができる意味/価値であると定義される。-ウィキベディアより。)だけでは説明不足になります。とにかく当時の私の中にあった西洋現代文化への疑問点はどうもここら辺の所だったと思います。 

  日本の美しい文化にはマインドフルネスのようなすべてをトータルに受け入れる感覚、そして美を追求する強い意志が感じられます。私はそういう芸術に触れるのが好きですが、それはある意味私のルーツがただ単に日本だったからかもしれません。だから、西洋の現代アートは理解はできてもどうしても同感できないような違和感が拭い切れませんでした。そしてそれは凄く大事なんですね。違う文化で育った人にはつまり私には完ぺきに分かり得ない感覚があるという事、そして逆も言えるということを改めて実感したわけです。 

  サウンドスケープ、私はこの響きが好きですが本当に感じるのはその環境があるからあった音、、、のもっと哲学的な東洋的な感覚です。そしてまたそれを違う文化の人たちと共有するとき、そこを原点に再び新しい感覚が彼らのお陰で生まれるわけです。

TanDunの言葉には感謝しています。 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?