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子どものことは子どもに聞け

 英語教室で、私は下は0歳から上は一応中学生で送り出す様にしている。(その後ご要望があったら、その先もう少し続く…) だから、同じお子さんの成長の根っこの時期を十数年、かなり長い間一緒に見守らせていただくことになるのだ。

カオスの中の英語はリアル

 幼児でやってきて、教室の中を歩き回ったり突如ゴミ箱の上に立っていたり。トイレに行ったかと思ったら全然出てこない…水道がいつの間にか出しっぱなし…英語どころではないと思いつつも、子どもたちは私の真似をして "Oh, no!" ある意味英語子育て実践みたいな時間の中で、私たちは確実にお互いのことを理解していく。その中に英語がある。だから、私は「ほら、お勉強しますよ」なんて分けない。側から見たら「これ、英語ですか?」と言われる様なカオスな状態でも私の "Where is…?" "Oh, no…" "It's…"など英語を聞き取ってどんどんインプットしていく。
 私の子どもたちとのお付き合いはこうしててんやわんやの中で始まるのだ。子どもたちは英語をしている感覚がない。でも一緒に踊ったり歌ったり、工作したりお絵描きしたりしながらどんどん英語の語彙を身につけていく。この過程は目を見張る程。

子どもに育児相談

 そんな過程を経て小学生になった生徒と話す時に、ふと教室に来た頃のその子たちのことを思い出す。そしてポロッと「なんかさ、今そうやって椅子に座ってこうしてゆっくり話してんの、すごく不思議だよ」と言うと、子どもたちは照れた様に笑う。「あったあった!」って。覚えとるんかい!と言いたくなるけど。その時の子どもたちのちょっと大人っぽい昔を懐かしむ様な顔が眩しい。

 そして続けて尋ねてみる。「あのさ、やっぱりあの年頃の子ってさ、同じ様にうろうろして見つけたもの片っ端から試してみたり、気がついたら高いところにいたりしてビックリしちゃうんだけどさ。先生に何か出来ることってあるんかな。」

 「きっと緊張してんだな。」ある生徒が言う。
「緊張して落ち着かなくてうろうろしてるでしょ、そしたら面白いものが見えるの。あ、こんな面白いものがある〜ってさわってみたり、高いところに上ったりさ。だから面白そうなものは隠しておいた方がいいよ。」

なるほど。更に続けて

「でさ、お絵描きしたりブロックしたり、その子が『楽しいな』って思うことをしてあげるとさ、安心すると思うよ。あぁ、楽しいって思うんだよ」

 私が幼いその子の対応に行き詰まってしたのは、ブロック遊びやお絵描きだった。「英語教室なのにこんなことしていていいのかな」って苦しみながら出した策だった。思い出してグッときた。
あの時の私はまだ「英語教室ってのはもっとテキストを使って、今日はこの単元をした、ってちゃんと進んで…」が必要だと半分思っていた。でも残りの半分は毎年出会う目の前の子どもたちの「今」に合わせて進めることが正しいことだと思っていた。あの時は確信がなかったけど…今は確信している。子どもたちの学びには「安心」というベースが必要。
この子はそれを私に教えてくれた恩人なのだ。そして数年経った今、こうして私に種明かしをしてくれている。

 ちょっと涙目になりながら「ありがとね。本当にありがとう。Nice adviceだわ。」と言うのが精一杯だった。

大人は忘れている

 仮に同様の質問を子どもではなく大人にしたら、どんな答えが返ってくるだろうか。真っ直ぐに「安心感が一番」と言ってくれる人はまず珍しい。もしその言葉を言われたとしても、完全にその覚悟や方法を明確に伝えてくださる方は滅多にいない。いかに子どもを管理するか、正しい姿勢で座ることや黙って指示に従うことがいかに美しいか、ということは嫌と言うほど聞かされてきたが。

 教室の子どもたちからのアドバイスを聞いて思ったのは、先生や親が躍起になってその子の姿勢を正したり席に戻そうとすると尚、その子の動きが激しくなってくることと繋がるな、ということ。その時大人はもっともっと強めの言葉や罰を用意してその子を動かそうとする。でもきっとその子が欲しいのは「安心」それでいいんだよ、って一旦受け入れてもらって少し安心出来たらすんなりと席にいた、なんて経験は私もたくさんある。子どもたちの言うことは、真実だと私は経験を通して実感する。

 大人は「管理する」側になってしまって、そっちの立場ばかり気にするから子どもの頃のことを忘れている。昔一緒になって先生の文句言ってた友達が当時の先生と同じこと言ってるのを見て、ガッカリすることもあるけれど。こうして大人になりきれない私は、子どもたちと同じ目線で子どもたちから真実を聞いて同じ気持ちを共有出来る、という幸運も持ち合わせている。これからも子どもたちの言葉にゆっくり耳を傾け、語りながら一緒に笑いながら、楽しく学んでいきたい。


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