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三人称の別の顔

 英語教室。4年生から6年生のクラス。私とのお付き合いはかれこれ5年目かな。会話の多いクラスで、英語である程度の自分のことは話せる様になっている。そこで改めて人称代名詞のおさらい。
 もちろん、小学生にこんな文法的な言葉は使わない。こちらも会話の中で I とyou、heとshe、theyとwe を絵を描いたり例を出したりしながら伝えて、ざっくりと「こんな時に使うんだね」を確認。
 そこで始める。そもそもheとかsheってどうやって分けるんやろうね。

 こんなのテストにも出ないし中学校でも習わないと思うけどね、と前置きしてから、そもそもboyとかgirlでいることに何か感じることはないかな、と話した。例えば「女の子なんだから」と言われること、なぁい?まぁ、最近よく問題視されるのは「女の子」の方だけど。でも待って。男の子にだってきっと言い分はある。
「例えば "男なら泣くな!"って言われることない?」
ポカンとしていた男の子たちが、遅れを取り戻すかの様にブンブンと首を縦に振る。

 でもね、ある研究結果では「涙を流すことはとっても人の心にとって大切なこと」って言われてるの。泣くことで心のバランスを保つ効果がある、というのは涙活(敢えて泣ける映画やドラマを見て涙を流し、心をスッキリさせる活動)という言葉からもわかるよね。

 だから人間を「男」「女」って分けて、過度にその性に期待や圧力をかけることが今とても問題視されていてね。皆さんは日本のこの県のこの市のこの町の世界でしかまだ生きていないけれど、そういう動きが他の国では活発に起こり始めてる。知っていて損はないことだと思うから、お伝えするね。
将来もしかするとこのhe/sheは使われなくなるかも知れないけど、みんなが学校生活を送る中ではきっと必要なことだろうから、これも知っておいてね。そんな伝え方をした。

 時代は変わっていく。考え方も変わっていくし、価値観も変わる。日本は子どもたちに国際社会の一員として羽ばたけと鼓舞しながら、同時に独自の文化や価値観を必要以上に押し付ける。私たちは黙ってそれに従うのではなく、その中で何を大切に残すべきかまた何を更新していくべきかを一旦立ち止まって味わうべきだ。意味もなくかつて何かの目的のために掲げられた精神を闇雲に今に引きずることで、国際社会ではうまくやっていけないことも出てくるだろう。
 当たり前の様に「男子たるもの!」とかけた声が、その子の羽を折ってしまう可能性もある。大人たちもただ右から左にあるものを流すのではなく、次の世代に何を願って、どんなものを残していきたいのか取捨選択する必要がある。考えることを止めてしまった大人には大きな宿題だが、なかなか面白い作業だとも思う。その過程で大人自身の中にあるものがまた浮き出てきて、人生が面白くなることもあるのだから。
 今私はその真っ只中だ。子どもたちと共に過ごすことで、自分が日々アップデートされていくのを感じて、心がいつも軽やかだ。

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