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ハングルへの旅(読書感想文)

 大好きな茨木のり子さんの旅エッセイ。詩から入って好きになった方だが、エッセイを読むともっと好きになる。時を場所を超えて、私は茨木さんと対話している様な気持ちになる。それくらい子どもの様な好奇心と感受性を持っていらして、親しみが湧く。私が韓国を初めて旅した更に10年前の韓国の話。韓国語を学ぶ日本人がまだまだ少なかった頃の話。

 50歳で韓国語を学び始めて、その韓国語を携えて旅する韓国の小さな田舎町。偶然の人との交流や、会いたかった人との韓国語での会話。どれもワクワクする逸話ばかり。
そして、言いたいことや感じたことをハッキリ語っておられる潔さに、改めて本や文章、言葉の良さを感じる。
 今はSNSでの言動一つが大事故となるし、昔もきっと政治的な発言一つが大変だったに違いない。でも本の中で思ったことを正直に堂々と語る茨木さんの言葉に心が爽快になる。そして私もかくありたいと願うものだ。

 人生で2度、船で渡韓したことがあるが、初回は19歳の時だったか。韓国の方がたくさん乗る船で、私も韓国のご婦人等の輪に入れられて大根をかじった。言葉は全くわからなかったけど、カタコトの日本語で笑いながら語りかけてくれる方々のことはずっと忘れられない。
 そんな船の往来も、悲しい日韓の歴史の中では肉親と分かれて涙の中での旅、肉親の骨を抱いての旅などいろいろな想いに溢れていたのだ。大好きな尹東柱の父親が福岡から息子の遺骨を抱いて釜山に向かうの船の中から、骨壷に入りきれない遺灰を玄界灘に撒いた話を初めて知った。私のよく知るあの玄界灘に。
 
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<心に残った言葉(順不同)>

●テキストで覚えようとしても、なかなか覚えきれないのに、或る風景のなかで聴いた会話は、ピシャリ焼きついてしまう。

●...歌うように聞いた彼の質問をキャッチできた時、聴耳頭巾ではないが、なにかの表紙に一瞬、小鳥のさえずりの意味がわかったかの様な錯覚すら覚えた。この子の言葉がわかっただけで、学んできた甲斐があった、と思えるくらい。

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