【読書メモ】私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む
Kindleセールで飛び付いたのですが、良書でした。
私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む
ポール・タフ (著)/高山真由美(訳)(英知出版)
■評価:★★★★★
アメリカの事例ベースではあるが、教育に携わる人、そして親は読むべき本だと思います。
■よかった点①非認知能力の再定義
ここ数年のホットワードである非認知能力について再定義しつつ、生育環境・学習環境の重要性を説いています。
非認知能力とは、ひとつのことに粘り強く取り組む力や、内発的に物事に取り組もうとする意欲などを指す。心のOS(オペレーティングシステム) と言っても良いかもしれない。
ということで、貧しい子どもたちが困難を乗り越えて成功するために大きな役割を果たすものとして非認知スキルを定義。
「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも、「非認知能力は子供をとりまく環境の産物である」と考えたほうがより正確であり、有益でもある。
(中略)
子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。環境なのである。
ということで、環境を整えることこそが大切というのが筆者の主張。そして環境のなかでもとりわけ大切なのは人間関係。特に乳幼児期においては家族との関係性、すなわち親の態度や言動こそが、非認知能力の育成を左右していると。
■よかった点②親や教師の立ち振舞いへの提言
「環境整備を重視する」ことを前提に、貧困層の子どもたちへの介入事例を分析しながら、大人たちのあるべき姿を提言しています。親や教師の立ち振舞いについても具体的なアドバイスがたくさん。
子供が動揺しているときに、親が厳しい反応を示したり予測のつかない行動を取ったりすると、のちのち子供は強い感情をうまく処理することや、緊張度の高い状況に効果的に対応することができなくなる。
慢性的な低刺激を経験した子供は、上手に友達をつくれない傾向がある。認知力や言語の発達が遅れ、実行機能に問題を生じることもある。集中することが苦手になる。
このあたりは親として肝に銘じたいところ。子どもときちんと向き合えているか。話を目を見て聞けているか。
■よかった点③能力評価&学習指導のカギ
自分の仕事に引きつけて考えると、定量化できない・見える化できない非認知能力の測定方法について悪戦苦闘するよりも、「非認知能力が働いた結果として現れるポジティブな行動を測定すればいい」というのは確かにそうだな…と。
あと「学習環境」で言えば、キーワードは「自律性」「有能感」「関係性」とのこと。そしてこれと呼応している(=より具体的に落とし込んだ)のが、「生徒の学業に対するマインドセット」のカギとなる4つの信念です。
①私はこの学校に所属している
②私の能力は努力によって伸びる。
③私はこれを成功させることができる。
④この勉強は私にとって価値がある。
生徒が授業中にこの信念を持ち続けられることが大切、言い換えればそのような授業や指導を実現させるのが教育者の役割ということでしょうかね。やりがいのある難題に粘り強く取り組む経験もその一例ですし、「先生からのフィードバック(=高い期待)は、生徒の積極性や成績に影響する」という研究結果なども本書の中で提示されています。
■総括・雑感
線を引いたところ(Kindleだから厳密にはハイライト)は無数にあるのでこれ以上はやめておきます。勉強になりました。
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