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実在架空

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二次元愛好者へ(勝手に)薦めたい実写恋愛映画 —『寝ても覚めても』

二次元に展開される虚構の関係性を見るだけの人になってどれだけ時が経ったか。恋愛漫画とそのメディアミックスに触れ、心をときめかせてきた。ロマンチストの気性故に、王道パターンに沿った関係性も、奇矯で生々しさのある関係性も楽しんできた。ジャンルに囚われず、どんなファンタジー世界からも恋愛のある種の記号を見出したりする。

その一方で、実写恋愛映画は長らく遠い存在だった。華々しさを欠いた役者を眺めるのは退

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備忘:少女とシミュレーション

頭に植え付けられ今も逃れられずにいる死への恐怖を克明に描くことに関して、私は『少女終末旅行』を越える作品を知らない。『シメジシミュレーション』もまた、自我の境界を異様な迫力で描いている。

既知の記号

少女と少女の出会い。溶け落ちる世界。メディアの自己言及。馴染み深い記号が並ぶ。しかし懐かしいという表現は不正確かもしれない。それらをつくみず氏のようにまとめ上げることをできる人間が同時代に何人いる

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青い保存記録のメモ

・前提として、「ともあれソシャゲは滅ぶべき」と思っている。

・加えて、当初のスタンスは「生徒に性的なアプローチを掛けるカス野郎を成熟した大人として持て囃すようなコンテンツに手を出す程、私は落ちぶれちゃいないが……」であり、根本的な感情は今でも覆らない。

・ただ4th PV を見ていたらときめく部分があったので、メインストーリーに触れることにした。エデン条約編を筆頭にプロットの評価が高いことは聞

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原作付きアニメに思いを馳せるなど

1シーズンで複数のアニメを平行して見るのは随分と久しぶりな気がする。"豊作"・"不作"という表現は改めて声に出して言うとしっくり来ないが、少なくともかつての私であれば"豊作"と呼んだだろう。

以下、だいたい4話まで放送された時点での与太感想(アクナイは1話まで)

ぼっち・ざ・ろっく

今のところ最も楽しんで見ている。Cloverworksの評判を聞きつけて『明日ちゃんのセーラー服』および『着せ

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求恐

The Lighthouse
同監督のThe Witchが程よい温度感の映画だったので、こちらもと。

端的に言って、思っていた以上に観ていて負荷のかかる映画だった。ジャンプスケアに相当する地雷は無かったものの、前振り付きの大仰な演出は多く、気持ちよく見れるシーンよりも疲れるシーンの方が多かった。この作品に限らず、アンタゴニストの目を盗んで鍵を盗む展開って不要では?と昔から思っている。(映画全般が

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マギレコに心を躍らせる

マギアレコードのアニメ一期を見たのも、今となっては随分前に思える。

元々、まどかマギカのそれなりに熱心なファンであったので、ソーシャルゲームの存在はずっと知っていた。知っていて、ゲームとして信用する材料を持たなかった私は、触れようと思わなかった。ソシャゲというのはそれなりに時間を費やさざるを得ないものだし、システム面は無視できない。そして仮にストーリーを目的にするにしても、ソシャゲという媒体は魅

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百合漫画の感想少し

ネタバレに対する配慮の一切を欠いた文章を提示する前に、冗長なパラグラフを配置しておきたい。一般的にこの際に用いるべきはローレム・イプサムという魔法の呪文のようなものだが、それではパラグラフを配置した意味を一見して理解してもらうことができない問題がある。またこの点で、私はこのパラグラフの頭に"ネタバレ"という語を配置し、この先にネタバレに対する配慮が一切ない文章が続くことを言明しなければならない。こ

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ニューヨーク三部作/ポール・オースター

オースターのニューヨーク三部作を読んでいた。緩やかに繋がった連作というのは好物なもので、事前の期待程には奇妙な小説で無かったものの、満足の行くものだった。大雑把に表すなら、探偵仕事に就いた男が狂気に囚われ、変質していく様を描いた小説だ。自己の探究を主題としているらしい。

この小説は、基本的に探偵と作家しか登場しない。そして、物語が形成する枠内において、二つの職業は重なる部分が多い。『ガラスの街』

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