百合漫画の感想少し

ネタバレに対する配慮の一切を欠いた文章を提示する前に、冗長なパラグラフを配置しておきたい。一般的にこの際に用いるべきはローレム・イプサムという魔法の呪文のようなものだが、それではパラグラフを配置した意味を一見して理解してもらうことができない問題がある。またこの点で、私はこのパラグラフの頭に"ネタバレ"という語を配置し、この先にネタバレに対する配慮が一切ない文章が続くことを言明しなければならない。このパラグラフは既に意味を失っている。なぜならこの媒体におけるプレビューの文字数を既に超えたからだ。


・表紙が異様に美しい。
・比較的好みなくっきり目の作画と、星川のデザインが個人的に刺さる。彼女の伏し目がちな表情や着慣れない服に違和感を抱いている描写は、なかなかに心をくすぐられる。そして自己評価低めの長身に対してぐいぐい迫る溌剌とした低身長の百合、やはり良いものだ......。
・架空架空好きとしては、自作小説をマクガフィンに留めるのは勿体なく思ってしまう。かといって、言霊に重点を置く作風でもないので、急に掘り下げられたら浮きそうな。悩ましい。
・いじめ加害を深く悔いる人物に対して脅迫的に接近するシチュエーションには、ある種の願望充足的なものを感じたりもする。それはそれとして映画の聲の形は好きだし、作品として忌避する程の陳腐なモチーフだとは思わない。本作は人数的に小スケールに見えるので、そのあたりの集団的意識の話には深入りはしないか。

・表紙が異様に美しい。
・作画も言語感覚もかなり可愛さに振っている印象。
・その印象だけに、表紙の異様さが際立っている。この表紙から私が想像するのは、クトゥルフ的な誘いであるとか、慣性によって不幸に突き進む人間関係であるとか、本性レベルの断絶であるとか、そういう、一定の苦みを含むものだ。可愛さ駆動の1巻の内容はあまり連想できない。まあ、認知の歪みと言われればそれまでだが。
・アイマスクやサングラスによる視覚制限のモチーフが今後も生きてくるのであれば面白いなと思う。視線の話は一段落ついているように読めもするが、どうだろう。

・読みやすい文体のライトノベルで、ループもの。
・作品と直接的に関わる感想ではないが、ループものはかなり思想がでるジャンルではないかと漫然と思った。思想というのは倫理だけでなく、自然科学的、哲学的な面も含む。決定論を信じるか。多元宇宙をどう扱うか。独我論を採用するか、他者の意識の存在を認めるか。
・巻末で割りと熱血なことを作者が書き残している一方で、乾いた部分もあると感じた。他者というものの軽視、というよりは観測の限界というべきか。これは語り部に限定した話ではなくて、主役級に共通して覚える印象だ。小乗的な世界に至った理由に想像を巡らせたりする。
・キャラクターの造型は古臭さが悪目立ちしている。率直に言って、百合として魅力的な作品ではない。

・海辺の伝奇系。
・セーラー服と黒インナーの組み合わせに惹かれて購入したというのは過言で、コミックウォーカー掲載分が印象的だったので既発の1巻を買った。
・伝奇ということで期待が上ずってしまう部分もある。個人的な好みでいうと怪異や背景をもっと幻想に振ってくれた方が満たされる。とはいえ、目に光が灯っていないキャラデザや血濡れの美少女は素直に嬉しい。
・1巻のみのストーリーの進行だとそこまで期待を煽られなかっただろうと思われるので、先を読んでいて良かった。彼女の活躍が本当に楽しみ。

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