とあるハンドメイド作家の日常(仮) -1日目水曜日-
初めて人間になれたと思えるようになった
夜の帳はどっぷりと降り、
ジメジメした空気が
肌に纏わりつく夏も佳境に入った頃。
苛立ち隠せぬ会社員の方々と共に、
私は満員電車に揺られて帰路についていた。
20分強という短い電車時間でありながらも
8時間という長い間デスクに向かっていた足は
浮腫みとお友達になったかのように
パンパンに腫れ、
怠さと共に顔は苦痛に歪んでいた。
40歳という節目の年齢、
さらには今まで人間関係に悩まされ、
幾多の職場を退職してきた私に、
ようやく新たな職場が見つかり、
ついこの間から
平日はこの満員電車に揺られている。
その職場に決めた理由は3つある。
その1。
まずは時給がとても高い。
給料は高ければ高いほど
後々苦しめられることもあるが、
今現在、生活する分には
高い方がいいと判断したからだ。
その2。
仕事内容が今までやったことがない
部類の仕事だったからだ。
内容は守秘義務がある為、
伏せさせて頂こう。
その3。
土日祝が休みというところ。
今まではシフト制の仕事ばかりで
2連休なぞ通常では取れなかったので、
この土日祝という連休が毎週来る嬉しさを
一度味わうと抜けられないことが
わかったからだ。
その分デメリットも存在する。
神奈川県側から都内へ移動する為、
お気づきの通り、
毎朝毎夜、出勤時・帰宅時には
満員電車にぶち当たる。
また、出勤先まで長い距離がある為、
早起きをして準備しなければならない。
今まで朝が苦手だった私は、
重たく下がろうとする瞼を
無理矢理こじ開けて、
朝6時半に目を覚まして
準備をするようになった。
さて、そんな私には
もう2つほどの顔がある。
1つはハンドメイド作家だ。
スチームパンクと呼ばれるジャンルで、
魔導具と称したアクセサリーや、
小物、アートを作成したり、
そのジャンルを活かしつつ、
趣味で推しのゲーム実況者様の
2グループをイメージした雑貨を作っている。
自称、「スチパン魔導具製作家」と
名乗らせて頂いている。
証拠としてサイトURLを置いておこうと思う。
リンクはこちら⇒minne
気が向いたら覗いて欲しいものがあったら
ぜひとも購入を。
(というか誰か買ってくれ。たのむ。)
もう1つは
とあるグループで知り合った
友達4人と一緒に起業する為、
色々と画策しながら
事業を立てようとしていることだ。
(ようやくスタートに立てそう、
と言ったところだが)
そんな毎日を送っている私が、
ようやくまともな生活をし始めたわけだが、
今までズボラだった私は、
毎日、湯水のようにお金を使い、
貯金は0円に等しい。
さらにクレカも使い果たし、
債務整理をし始めたところだ。
ざっと500万ほどは借金がある状態だった。
(実は債務整理は2回目である)
親にも心配をかけ、
お金を借りている状況という、
なんと親不孝者なんだと
罵られてもおかしくはない状況だ。
自身が最近変えた考え方は、
以下の通りだ。
①外に働きに出る際は、
全て「お金の為だ」と思うこと
②夜ご飯を作る際は少し多めに作り、
残ったおかずを小分けにして冷凍し、
お弁当用とすること
③やりたいことは全て土日祝の休みの日に
回すこと
④週末の金曜日には何かご褒美を用意すること
(例えば、スーパーカップバニラ味とかね)
この4つをすることで
日々の余裕が出来、
早く就寝し、
早く起きる事が出来るようになった。
またお金をほとんど使わなくなったことで、
消費するお金が明らかに残っている状態。
これを続ければ貯金が出来、
欲しい物を買うことが出来るだろうと
考えている。
「なんて当たり前のことを言ってるんだ?」
と言われるかもしれない。
そう、当たり前のことなのだが
それが今まで出来なかったほどの
「クズヤロウ」だったのだと思う。
食後の皿はシンクに置きっぱなし、
食事もコンビニか外食、
もしくはパスタを茹でて素パスタ、
なんて当たり前。
洗濯物は畳まずに床に放りっぱなし。
一時期はゴミ屋敷かと思うほど
床一面にゴミが
散乱していた時期もあった。
それを人々は「怠惰」と呼ぶだろうが、
徐々に改善をし始めて、
10年が経とうとしている。
ようやく、人間になれたというわけだ。
それが本当に人間と呼ばれるものなのかは
定かではないが。
そんな日々を送ってはいるが、
こちとら人間になったばかりなので、
サボりたくなってしまうこともある。
心が折れそうになることも
あるだろう。
まだ始めたばかりなのだから、
当然である。
そんな時はやはり目標が大事なのである。
私で言えば、
「金曜日にスーパーカップを食べる」
「金曜日にお風呂を沸かして入る」
などのご褒美が「金曜日」に待っている、
と体に覚えさすことが大事なのだ。
それを考えるだけで
よし、お皿を洗って綺麗にしよう、とか
洗濯物を畳んで週末に備えよう、
となるわけだ。
これを習慣化させるのは
何度も繰り返すことが大事だろう。
おそらく、
「これをすればおやつが貰える!」
とワンちゃんが覚えるよりも
時間が掛かるだろう。
「それでも毎日を繰り返せば、
いつか早起きすることも
苦しいことではないと、
思える日々が来るだろう。」
そう信じて、日々を生きている。
小さな目標を立てて、
それを達成するという幸せを感じながら。
-1日目水曜日-
完