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「伐った木で、みんなで家を建てよう」高知の夫婦林業「ヤドリギ」川端セイカ

 植物と人間は違う。
 突き詰めたら
 どんな違いがありますろうか?
 出会うて ときめいて 
 知りたいと思う気持ちが湧いてきて
 植物も人間も与えられた場所で
 懸命に生きちょります。
 万太郎(神木隆之介)が田邊教授(要潤)に言う言葉
 NHK連続テレビ小説「らんまん」より

NHK連続テレビ小説「らんまん」より

Facebookのメッセンジャーに「クラファン挑戦の知らせ」が届いた。
川端セイカさんからだった。おそらくセイカさんが旅好きだった学生時代、10年くらい前にFacebookで繋がったんだと思う。

「きこりの夫婦」、「夫婦林業ヤドリギ」、「セルフビルド」、「伝統的工法」、「みんなでつくる家」・・・「えっ!」と心惹かれるワードが目に留まった。「地球探検隊」でやっていた22年間は、まさに「みんなでつくる旅」だったからだ。そこで対談ゲストとしてvoicyラジオの出演依頼をすると快諾してくれた。話してみると「18歳・年の差婚!?」「夫は50歳って俺より一回り年下の丑年か?」「旅と自然が好き」と共通点が見つかって話が弾んだ。

高知県本山町

「おもしろい話が聞けそう!」と思った直感が当たったのだ。「求めていた理想の土地」自然豊かな高知県本山町(もとやまちょう)を拠点に、「『伐った木で、みんなで家を建てよう』、地域材をメインに、市場に出ない「B品」資材や、廃材を積極的に取り入れ建てる家を、伝統的な工法を職人さんに教わりながら、支援者と一緒につくり上げたい!」と今、来週7月12日(水)23:59までクラファンに挑戦中だ。少しでもユニークな2人の取り組みを知ってもらいたいと緊急収録、放送となった。

ちょうどセイカさんとvoicyラジオを収録した7月4日(火)の夜、目標額150万円を達成し、ネクストゴールは支援者数150人を目指している。達成した暁には、地域の子どもたちに山のことを知ってもらうため、所有山林内で無料の「森林学習会」を開催したいと考えている。

「カナダで暮らすことを夢みていた少女が、高知県本山町でなぜ、セルフビルドの家を建てる木こり見習いになったのか?」「なぜ、クラファンに挑戦したのか?」今に至るまでの思いと実践を聞いた。セイカさんの話を聞いたら、「生き方変わっちゃう人いるんじゃないかな?」1,171回目から1回10分、全6回のvoicyラジオ対談、フォローして聴いてほしい

川端セイカさんは、「馬のまち」としても有名な滋賀県栗東市(りっとうし)生まれの32歳。今は高知県本山町で18歳年上の旦那さんと夫婦で林業を生業とし、5歳の息子さん、4歳の娘さんの二児のママで半自給自足な暮らしをしている。

幼少期、身近に自然体験ができるスポット、「栗東自然観察の森」があり、自然が好きで森で見られる植物に興味を持った。夢見る少女でサンタクロースの存在を本気で信じていた。「ソリに乗って、一生に一度はオーロラを観に行きたい」と6年間サンタに手紙を書き続けた。小6(12歳)になったクリスマス、枕元にオーロラが観られるカナダ・イエローナイフ行きの航空券が置いてあった。翌々日、英語教師だった今、同居している85歳の祖母と2人でカナダに向かった。幸運にもオーロラを観ることができて夢が叶った。しかも薄いオーロラではなく「オーロラ大爆発現象」を観て感動し、「カナダに住むぞ!」と心に誓った。

だから、中高時代は英語を必死で勉強した。高校も英語に特化した京都外大西高校を選んだ。カナダ・バンクーバー島のヴィクトリアに1年間留学した。カナダの公用語は英・仏語。そこで京都外国語大学フランス語学科に進学した。

その頃、親の離婚をきっかけに、地方移住していた姉を頼り、滋賀県高島市で一緒に暮らすことになった。姉の働く農園レストランで務めた経験から、作物を育てる「土」のおもしろさに魅了された。

ところが突然、お姉さんが彼氏と「パン屋さんをやる!」と世界一周の旅に出てしまった。セイカさんは、大学卒業と同時に、かねてより興味のあった国際協力に、ふと「フィリピンのNGOで働く」と思いつくと、周りから「本当にカナダに暮らす夢をあきらめるの?」と問いただされた。

「やっぱり夢は諦められない。一度は夢を叶えてみよう!」と、カナダへワーキングホリデービザを取得して渡航した。働く代わりに宿泊・食事が提供されるWWOOF(ウーフ)制度を利用して「赤毛のアン」で有名なカナダ・プリンスエドワード島を選んだ。おばあちゃんが暮らす農園のお手伝いをしながら1ヵ月滞在した。

その後、12歳の時に利用したオーロラ観測ツアーの旅行会社の面接を受け、カメラマンとして雇われることになった。中学時代から猛勉強してきた英語力。そして写真を撮るのが好きで京都外大時代は写真部の部長も務めていたことが認められたんだと思う。勤務時間はオーロラが出現する時間帯、19時から朝方6時まで日に当たらない生活を続けていると太陽が恋しく気持ちも沈んだ。やりがいのある仕事だったが、太陽の必要性をひしひしと感じ、農ある暮らし、土に近い生き方をしたいと7ヵ月勤めた会社を辞めた。

カナダ勤務時代(イエローナイフにて)

再びWWOOF(ウーフ)制度を利用してカナダの東海岸ニューファンドランド島の農園で働き、アメリカ・ポートランドの旅を経て、アジア圏でも体験してみたいと韓国のお茶農家で働いた。振り返るとカナダで学んだのは、土づくりなど農園のスキルだけでなく、自分たちで家をつくったり、家畜の小屋をつくったりする「DIY」だ。

「DIY」に深く関心を持った矢先、Facebookの広告が目に飛び込んできた。高知県安田町で設計士が運営する知識と実技を1ヵ月で学ぶ「いえづくり教習所」第一期生の募集広告だった。集まったのは20代から60代までの様々な年齢、職種の20人。その一人が今の旦那さん、「ばたやん」こと夫婦林業「ヤドリギ」代表、川端俊雄さんだ。

「いえづくり教習所」の集合写真

俊雄さんの自己紹介は
「自分は木こりをやってます。自分が伐った木を使って家を建てるために今回参加しました」
その頃のセイカさんは、家を建てる気はさらさらなくて、「鶏小屋くらいつくれたら、いいな」という感覚で参加した。
だから、俊雄さんの自己紹介に「スゴイ!」と感心した。

合宿中に「移住先を探している」と伝えると、高知県本山町で「地域おこし協力隊」として働いていた俊雄さんが
「遊びにおいでよ」。
山に連れて行ってもらって木を切り倒す俊雄さんの姿が心に焼きついた。また、本山町に移住者が多いこともあって、24歳、この里山で暮らす一大決心をした。

高校生くらいから、京都や大阪に出やすい滋賀県という立地から地元の開発が進んで、森が住宅地になっていく環境の変化に「自然に囲まれた土地で暮らしたい」と強く思うようになっていたセイカさん。ここに高校生の頃からの漠然とした想いが具現化したのだ。

俊雄さんの任期が切れて卒業するタイミングでセイカさんが「地域おこし協力隊」として働き始めた。25歳、俊雄さんとつき合い始めて第一子の妊娠発覚、結婚し26歳で出産。育休を経て第二子を出産し、28歳のセイカさんは育児と家事に追われる日々を過ごした。同時にお米づくり、農地を借りて野菜の多品目栽培をスタートさせた。

危険の伴う仕事だから、
「夫が一人で山に入るのは怖いな」と、
2年後の30歳、夫婦で林業を始めた。

きこり見習いのセイカさんがチェーンソーを扱えるまでに半年以上かかった。心が何度も折れて泣きながら力仕事をこなした。

林業の様子

YouTubeチャンネル「セイカの暮らし便り」で林業や田舎暮らしについて発信中!

屋号の「ヤドリギ」は、落葉樹に寄生する常緑の植物から取ったらしい。寄生もするが、自身で光合成によって栄養分を作り出すこともできる、まさに「共生」する植物なのだ。ヨーロッパでは「永遠」を象徴する神聖な樹。「ヤドリギの下でキスをすると永遠に幸せになれる」と言い伝えられているらしい。

セルフビルドの家は、1年前に間伐・伐採・製材を終え、去年12月に基礎工事をして、2024年の秋頃「結いで建てるいえ」完工に向けて着々と準備を進めている。

これから作る家の模型

自分たち夫婦は「いえづくり教習所」で出会った。「だからDIYを通して人と人が出会う場、自分たちの家をそんな『場』にできれば」と考えた。ところが昨今の物価上昇で資材が高騰し予想をはるかに超える資金が必要になった。そこでクラウドファンディングで資金調達し、人が集まりながら共に学ぶ場を提供したいと考えている。クラファン押しのリターンは「竹小舞から編む土壁塗り」や「焼杉の外壁づくり」などのワークショップだ。

日本の森は戦後植えられたスギなどの針葉樹が多い。これでは生物の多様性が失われてしまう。人間の手でつくった環境だからこそ、人間の手でより良い環境に変えられると、3年前から2歳の息子さんが「どんぐり」を植えて、これから建てる新居の周りにクヌギの苗木を育てている。また、里山の景観保護につながる土佐薪火三年番茶、黒文字茶を生産販売し、リピーター客を増やしている。子どもたちにとって身近な人のひと言、一つひとつの行動が永遠の魔法のように心を育てていると感じた。どんな時代でも生き抜く力のある親の姿は子どもたちの良い見本だ。

林業の担い手不足に危機感を感じ、大人も子供も実際に森に入る機会をつくり、「まず知ってもらうこと」から始めたいと数々のワークショップ開催を準備している。

これからの野望図

未来を思い描く力を持つ俊雄さん。それを夫婦で実行し自走してきた。「こんな楽しいことを夫婦二人でやるなんてもったいない!」と、これからは共に学ぶ仲間を増やし、相互扶助の「結いの精神」で人を育成し、子どもたちを育てていく。木が育つスパンは長い。2人がやろうとしていることはAIにはできない。自然と人に寄り添う地球にやさしいアクションだ。聞いてるこっちまでワクワクしてきた。大変な仕事だが、お互い好きな人のそばにいること、夫婦で好きなことをやる楽しさ、幸福感がビンビンと伝わって来たからだ。

家づくりの大黒柱加工

セイカさんのインスタ

セイカさんのnote

また、家族で訪ねたい場所ができた。
次世代に残せるもの・・・俺も真剣に向き合い文字に残そうと思った。

 わたしの行く先は、わたし自身が決める道
 正しくても、正しくなくても、
 才能があっても、なくても構わない

 自分らしさは
 迷いのない潔さからしか生まれない
 だから迷わずに生きよう
 松下友香(ともか)note「もう迷わない」より引用

松下友香(ともか)note「もう迷わない」より引用

Facebookでセイカさんとの共通の友達をチェックすると旅関係が多い。一緒にモンゴルを旅した隊員ハナの旦那、ナオトは「いえづくり教習所」2期生らしい。繋がってるなー。

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