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半人前の共感力。【自己肯定感編】|エッセイ



三鶴✖️仲川光🌸共作小説【白い春~君に贈る歌~】
(全編まとめ)

余命わずかの彼女と、夢を諦めた彼。

2人が出会った時、起きる奇跡は?

生きるとは?人生とは?

小説を通して、一緒に考えていきませんか?

一気読み、大歓迎です🌸




半人前の共感力。【自己肯定感編】




私の強みの一つは、共感力だと思っている。



自分で言うのもなんだが、一人ひとりの気持ちに寄り添って、その心情を理解しようという思いが強い方だと思う。

ただ、この共感力とは、正しく身につけていなければ、諸刃の剣となる。 

すなわち、良い効果もあるが、悪い結果が出ることもあるのだ。


たとえば、良かれと思って相手を褒めたり、励ましたりすることが、かえって相手にとって苦痛になることもある。

特に、繊細な男性を励ます際には、そのプライドを傷つけないための十分な配慮が必要だ。

自分に自信が持てないときに、他者から根拠のない励ましをもらっても、惨めになるだけなのだ。

本当の意味で自己肯定感を得るために必要なのは、自分の足で実績を残すことなのかもしれない。


今回は、そんな私の半人前の共感力について。

自己肯定感編になります。


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Yと出会い、仲良くなったのは、高校生の頃。

きっかけは、塾の自習室でよく隣に座っていたことだった。

私は一応、進学校と言われる中高一貫校に通っていたが、Yも進学校の男子校だっため、塾のコースも比較的同じになりやすかった。

だが、部活帰りのYは講習の時間に間に合わないことが多く、結果的に自習室によく出没していたように思う。

野球部に所属しており、休憩室では室内にもかかわらず、時折キャッチボールをしていた。

人が休憩室でおにぎりを食べているときに、ボールが行き交うのは少々落ち着かなかったが、勉強に来ているのか休憩に来ているのかよく分からない、自然体な姿勢が面白かったのを覚えている。

もちろん、Yは真面目に通塾していたつもりだろう。机に向かうその横顔は、スポーツマンらしく、精悍な顔つきをしていた。


ある時から、Yは肩を痛めたのか、腕を包帯で巻いて通塾してくるようになった。

休憩室でもキャッチボールをしているような快活な微笑みは消え、鬱々とした表情が多くなった。

気になってしまったので、休憩室にいたYに、思いきって話しかけてみることにした。

「あの……肩、どうしたの?」


するとYは、ぽつりぽつりと話をしてくれた。

「野球部だったんだけど、球を投げすぎて肩壊しちゃって。

もう、野球続けられないかもしれないって言われてるんだ」


休憩室でもキャッチボールで遊んでいるくらい、野球が好きだったはずだ。

聞いただけで胸が痛くなった。

「それは辛いね。でもきっと、いつか治るんじゃないかな。これから受験だし、大学に入ってからまた始められるかもしれないよ」

我ながら、なんとも根拠のない励ましをしたものだ。

Yは訳知り顔に少し顔をしかめながら、

「そうだといいんだけどね。ありがとう」

と言ってくれた。本当は、もう野球の前線に復帰するのは無理だと分かっていただろうに。

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