見出し画像

マイクロノベル集 295「猫はどこだ?」

No.1621
「入社おめでとう。一緒に働く猫ちゃんもいるからね」と言われて楽しみにしていたのに、猫なんていないじゃないか。「脳内で飼っているんだよ。ほら、エサの時間だから用意して」馬鹿馬鹿しい。「ところが私は社長なんだな」猫ちゃーん、かわいいでちゅねー。


No.1622
社長の脳内に住む猫を可愛がり始めて一ヶ月……ではなくて。入社して一ヶ月、仕事に慣れてきたぞ。「あの猫、人懐っこくてよく膝に乗るよね」「俺は引っかかれたよ」さっき開けておいた猫用のツナ缶が、いつの間にか空になっていた。まさか、誰かが食べてる?


No.1623
僕は一つの仮説を立てた。『社長の脳内猫は目に見えないが実在する説』だ。実証するために猫缶を社内の数カ所に設置した。よし、見回りだ。あっ、やっぱり消えてる! 「君はなかなか仕事熱心だね」社長! 「その社長が実在していないとしたら、どうする?」


No.1624
ほら、社風ってあるじゃない。空気ってヤツ。うちはのんびりしてるからさ、それが猫なの。君は猫と相性が良さそうだったから雇ったんだ。お昼にはエサあげたり、コップを机の端に置かないとか、そんな可視化されないルールとね。まあ、これからもよろしくね。


※noteだけで読める、このマイクロノベル集の続きはこちら。



この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?