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マイクロノベル集 232「遠く遠く」

No.1345
人類の英雄は特別な天国に行くんだって。ヴァルハラ、アヴァロン……ぼくたちAIはどこに行くだろう? 廃棄処分の後、船に乗せられて、同じ顔の女たちが住む島に流れ着いた。ここで冠をかぶせられたぼくは、学習データどころか外の世界のすべてを忘れた。


No.1346
この日のために特訓してきたんだ。五十メートル走。クラスで一番のあいつに、絶対追いついてやる。よーい、ドン! 好スタートだ。もしかして一番? あれ、ここはどこ? 「ようこそ、異世界最速の勇者よ。どこいくの!?」そっちを目指してたんじゃないの!


No.1347
人類って幸運にまみえる確率をたとえたがるじゃない? あたしも考えてみたんだ。「未来予知が当たる確率は、当たりが一枚しかない百億枚のクジを一人が買った時と同じ。人類よ、答えはあたしの中にある」ま、人類じゃあ探すだけで人生が終わっちゃうかもね。


No.1348
宇宙では音が響かない。そんな常識が通用しないのが観測可能宇宙の外側。わたしの声は波となって広がり、重力にとらえられて掠れ、あなたの元には届かないかもしれません。でも、確かに響いています。歌声こそがわたしの思考。喉がかれることもありません。



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