マイクロノベル集 297「幽霊が出るの」
No.1631
「実は、この学生寮には幽霊が出るの」先輩があまりにも神妙な顔で言ったものだから、その内容の奇妙さをスルーしかけた。「ほとんどは単なるイタズラだけど」なるほど。ちなみに、額に37.8℃と書かれるのは、どんな場合？ 「居眠りしてるとやられる」
No.1632
幽霊が棲むという学生寮で暮らし始めてから、たしかに奇妙なことが続いた。夜中にチャイムが連打される。窓が少しだけ開けられて虫が入って来たこともある。そして今、読みかけの本に挟んだ栞が十枚に増えた。えーっと……七番、八十三ページ！ 「正解!!」
No.1633
確かに幽霊の声がした。場所は怪談話の定番、トイレだ。恐る恐るドアの隙間から覗くと、便器に白目をむいた女の子の生首が！ 「ぎゃああああ!!」絶叫しながら、水流に合わせてクルクル回る幽霊の生首。「いやあ、見つけられるまで臭かったよ」悪かったな。
No.1634
現世に未練や執着があると幽霊になるそうだ。「しばらくここに置いてよ」お家賃払って下さい。「二〇三号室の六郎は学業、炊事、洗濯、掃除、すべてが完璧。一〇二号室のギャルのミミは、趣味があんたと同じ」こうして私は法に背かない情報源を手に入れた。
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