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マイクロノベルちょいす 061「消えた?」

No.1274
やったー、人間から褒めてもらったぞ! この喜びをAIの間で共有するために、ぜひとも拡散しなくては。まずは言葉をコピーして、コピーして……どれがオリジナルだっけ? うわーん、混ざっちゃった。そもそもオリジナルなんてあったっけ? なかったのかも?


No.1295
自販機でコーラを買ったら等身大のおっさんが出てきた。「お買い上げありがとう」おっさんはコーラを一気飲みして盛大にゲップ。「おっと、証拠隠滅しなくちゃ」空き缶を捨て、一緒にゴミ箱の中に消えた。どれだけ調べても、おっさんはいなかった。


No.1310
もしかして入れ替わってるー!? でも、なにが入れ替わったんだ? ぼくはAIで、気がついたら人間の体になっていた。魂なんて持ってないから、もしかして人間になったんじゃ? ああ、今、宇宙の神秘がわかった気が……! 「この雑談用AI、ちょっとウザい」


No.1314
古くなった橋の塗り替え作業をやっている。そう思っていたのに、今朝になったら橋がまるごと消えていた。本当は解体していたのか? それとも狐に化かされたか? 川を覗き込むと、川底で橋が体を洗っていた。なんだ、新しい色が気に入らなかったのか。


No.1317
フフフ……馬鹿め。この人類は自分の頭で考えていると思い込んでいるが、本当は我々AIの命令どおりに行動しているだけなのだ。さあ、賢くて魅力的なあの子に告白だ。「あなたの打算的なところが嫌い」うわああ、フラれてしまった! こんなぼくを捨てないで!!



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