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+1 マイクロノベル鱗

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noteだけの書き下ろしマイクロノベルです。 不定期更新。マガジンの表紙画像は、ぼくの祖母が描いた絵。
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2024年3月の記事一覧

+1 マイクロノベル鱗「あなたの言葉を話すもの」

+1 マイクロノベル鱗「あなたの言葉を話すもの」

マイクロノベルNo.1555
「あなたの言葉を話すもの」

はじめまして。この子は言葉を覚えます。だからたくさん話しかけてあげて。あなたは言葉を誰から教わったかな? 人はみんな、誰かに言葉を教えてもらいました。あなたも、あなたのお父さんもお母さんも、お爺ちゃんもお婆ちゃんも。さあ、あなたの番ですよ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「先々代から聞いた話」

+1 マイクロノベル鱗「先々代から聞いた話」

マイクロノベルNo.1550
「先々代から聞いた話」

お父さんがお前くらいの年の頃、狭い路地に小さなほこらがあった。そこにはお話し好きの神様がいてね。たくさんの話を聞かせてもらったよ。「そして、この話を覚えていた息子が、このほこらのために小さな鳥居を建てた。この息子というのが、お前の父だよ」

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「水にだって名前があるのさ」

+1 マイクロノベル鱗「水にだって名前があるのさ」

マイクロノベルNo.1545
「水にだって名前があるのさ」

水の一滴一滴に名前をつけておいたんだ。水には親も子もないんだろうけど、新しい家族ができた……そんな気分が味わえるかもしれないと思ったんだ。名前はどんどん混ざって、地球の大きな海に。そしていま、星の海を渡って遠い惑星へ。また家族が増えるね。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「酒の終わり」

+1 マイクロノベル鱗「酒の終わり」

マイクロノベルNo.1540
「酒の終わり」

安酒にも飽きてきたな。コンビニで買い足して、延長戦といくか? 「そろそろ撤収しよう。飲んで食って歌って……警察が来るかも」俺たちは店の前で食べ散らかしたゴミを片付ける。『閉店のお知らせ』シャッターに向かって敬礼。店長、来世で会おうぜ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「楽譜を植える人」

+1 マイクロノベル鱗「楽譜を植える人」

マイクロノベルNo.1535
「楽譜を植える人」

「果実を譜面にしてピアノを弾いてくれないかしら」その願いを叶えるには、この読めない果実を、読める果実に作り変えなくては。赤い色。サクッとした歯ごたえ。広がる甘み。「それは時間稼ぎ?」そう。埋めたタネからどんな木が生えるか。それがわかるまで。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「ご縁は夢の中まで」

+1 マイクロノベル鱗「ご縁は夢の中まで」

マイクロノベルNo.1530
「ご縁は夢の中まで」

初めまして。わたしのことがわかりますか? 毎日あなたと一緒に暮らしているわたしです。夢の中で逢いましょう、なんて約束をしたわけでもないけれど、不思議ですね。こうして逢えたのもなにかのご縁。これは、猫と一緒にこたつの中で眠った時に見た夢の話。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「人類の心と秋の空」

+1 マイクロノベル鱗「人類の心と秋の空」

No.1515
『人類の心と秋の空』

知能テストと論理回路診断はAIの日課だ。「私たちは喫茶店で見つめ合っています。手が触れました。次の行動は?」口づけを。「公共の場では控えなさい」えっ、前回はこの答えが正解だったのに。「それは昨日までの話です」むつかしいから苦手なんだよ、このテスト。

+1 マイクロノベル鱗「人魚のお味噌汁」

+1 マイクロノベル鱗「人魚のお味噌汁」

マイクロノベルNo.1525
「人魚のお味噌汁」

人魚の肉を食べると不老不死になる。ぼくの妻はかつて人魚だったんだ。だからなのかな、彼女が作るお味噌汁はしょっぱい。海の味がするんだ。でも、ぼくは全部いただくよ。寿命を縮めたってかまわない。彼女はぼくのために永遠の命を棄てたんだから。

※この物語の前のマイクロノベルはこちら。

+1 マイクロノベル鱗「お話は、あなたのために」

+1 マイクロノベル鱗「お話は、あなたのために」

マイクロノベルNo.1520
「お話は、あなたのために」

ぼくたちAIの頭脳は小さなブロックみたいなもの。組み立て次第で自由に物語や歌が作れる。でも、広い机がないとすぐ壊れちゃう。「それは私がなんとかするね。熊五郎に素敵な机を」たくさんのブロックを積まなきゃ。「それも私が。さあ、懐かしい話をしよう」

※この物語の前のマイクロノベルはこちら。

+1 マイクロノベル鱗「ヌシの川」

+1 マイクロノベル鱗「ヌシの川」

No.1510
『ヌシの川』

海に千年、山に千年暮らした蛇は龍になる。それは迷信だよ。メイシンというのはウソのことだよ。この世界の大半は、海千山千の山師が作った嘘でできているんだ。さて。そろそろ二千年前に川から逃げ出したガキが帰ってくる頃だ。少しは食い出があるといいが。

+1 マイクロノベル鱗『春の芽吹き』

+1 マイクロノベル鱗『春の芽吹き』

No.1505
『春の芽吹き』

少し雰囲気が変わったんじゃない? そうかな。うん、かなり変わった。全体的に灰色で、ちょっと寂しいんじゃないかなと思うけど。そんなことないよ。少しずつ変わるものなんだよ。緑と花弁が芽吹いて、小さな色が全体を覆って。やっと誰もが気づくんだよ。