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エスカレーターに乗れないのはどうして?

1.どうしてエスカレーターに乗れないの?

『子どもがエスカレーターに乗れないんです』

『エスカレーターに乗れないのはどうしてですか?』

『どうしたらエスカレーターに乗れますか?』

というご質問を親御さんから、とても良くいただきます。

これは、エスカレーターに乗れる自分や他の子は優れていて
エスカレーターに乗れないのは、問題のある子というお気持ちで
ご相談いただくわけです。

大人は、そのような気持ちでいると、なかなか原因が見えにくくなって
改善に近づけないかも知れません。

実は、『エスカレーターに自然に乗れる』というのは
非常に複雑な、複数の脳や体の動きの働きと関係があります。

これを端的に示すのが
『壊れたエスカレーター現象』です

大人が、『壊れたエスカレーター』に乗ろうとしたとき、
高次の脳では、『このエスカレーターは止まっている』と認識しているのにも関わらず、
体に繋がる脳は『エスカレーターだ』と認識してしまうので、
前方向に体が大きく傾いて、前にこけそうになるんですね。

このようなとき、エスカレーターに慣れていない小さなお子さんは、
壊れたエスカレーターを普通の階段のように
問題なく登れるかも知れませんね。

『壊れたエスカレーター現象』が示すように
エスカレーターに無意識に乗れるということは、
体に繋がる脳が不自然な学習をしている状態だとも言えるでしょう。

不自然なエスカレーターの動き以前に、
より自然な『階段上り下り』の動きが完成しているかどうか確認してみるといいですね。
ここができないと、平衡感覚に、大きな混乱状態が起こるのです。

2.エスカレーター以前の階段の発達

エスカレーターは、階段状の物が上下進行方向に勝手に動きます。

大人は『ただ乗るだけなのに・・・』と認識していますが、
子どもにとっては、『階段が動いている』
という複雑な認識を形成する必要があります。

ですからエスカレーター以前に、子どもにとっては、
階段上り下りの感覚をつかんでおくことが重要になります。

この階段上り下りが、子どもにとっては発達段階を的確に表す
非常に高度な複合的運動機能だと意識していただくと良いと思います。

2歳ぐらいになると、一見すると階段上り下りをするように見えてしまって、『問題ない』と思われる大人の方も多いのですが、
実際に、バランスを取って、手を使わず、スムーズに階段上り下りができるのは、体の基本がかなり完成している必要があります。

3歳ぐらいになると、足を交互に出して階段を上ることが上手になってきますが、
足を交互に出して階段を降りることはかなり危険で、
4歳ぐらいまで難しいことです。

まだ階段の平衡感覚が完成していない4歳以前では、
エスカレーターの運動感覚、平衡感覚を本当に感じるのはまだまだ難しいと言えるでしょう。

3.エスカレーター独自の問題

階段上り下りが楽に出来ると、子どもは階段という視覚情報と、
体の運動感覚、平衡感覚を連動させて、階段上り下りができる様になる訳です。

ところが、エスカレーターは、一見すると階段のような形をしていながら、
前方向に進みます。

そのことによって、体が大きく後ろ方向に引っ張られて、後ろにひっくりかえってしまうのです。
これが視覚的には階段状の場所で起こるのですから、非常に危険で恐怖心をあおるのも当然なのです。

『体が後ろ方向に引っ張られる』

『体が後ろ方向にひっくり返る』

という状況を幼い子どもが強いられている。
という認識が必要です。

そこで、子どもは後ろ方向にひっくり返らないように
重心を大きく前方に移動する必要があります。

これは、上位の脳で意識化された物ではなく、
体に関する脳が勝手に行ってくれるものです。

この複雑な動きを無意識に、難なくこなす子もいるでしょう。

その場合、壊れたエスカレーターでは、前方に重心をかけ過ぎて、
前方に転んでしまうこともあるのです。

4.エスカレーターが怖い理由


幼い子どもにとっては、静止している階段上り下りでも、
高度な平衡感覚、運動感覚、脳の発達が必要なことです。

それが動くことで、体が後ろに持って行かれるのは大きな恐怖です。

でも、ご相談を頂くのは、6歳以上のこともあります。

その時に重要なのが、そのお子さんの、今の、

✅ 平衡感覚
✅ 運動感覚
✅ 形の認識
✅ 動く物の認識

の状態をチェックすることです。

✅ 片足立ち(開眼、閉眼)
✅ 階段上り下り
✅ 回転
✅ 前後の不随意運動
✅ 上下の不随意運動

など、基本の体の動きから順番に復習してみるといいですね。

最終的には、ゆっくりと前方向に動く台車に乗って、バランスを取るような動きによるバランス感覚を育てることと、エスカレーターの視覚的な刺激と動きの刺激を一致させるところまでもっていくと良いですね。

まだ難しいというときは、ここに非常に大きな『伸びしろ』があるということです。
エスカレーターに乗れるようになると、他の運動面、学習面でも大きな飛躍が期待できると言うことですね。

5.言語化できないトラウマの問題

幼いお子さんにとって、エスカレーターに乗ることが非常に高度な脳の働きで有り、又同時に『壊れたエスカレーター現象』が示すように、
少し不自然な動きでもあると感じるとき、幼いお子さんには難しくても当然というお気持ちが出てくるのではないでしょうか?

でも、お子さんが幼い頃、エスカレーターで
後ろの方に対する気遣いや焦りから、
『ただ乗るだけなのに、この子だけどうしてできないの!』
と感じられたこともあるかも知れません。

そういった、体が一気に後ろに傾く恐怖の記憶と、
分かってもらえない気持ちが、言語化できずに子どもの心に
残ることがあります。

その時、大きくなってからでも、
『壊れたエスカレーター現象』のようなお話しを
楽しく語って上げることで、何らかの言語化ができると、
子どもは、自分自身の内側にある言語化できない恐怖心を
解放するかも知れませんね。

また大きなお子さんであれば、
『エスカレータでは後ろに大きく振られる』
と言うことを明確に言語化しながら、
手を持つだけでなく、背中を大きく広げた掌で支えながら重心移動を助けてあげても良いですし、
幼いお子さんは、背中の補助を丁寧に行ってあげると良いでしょう。

6.オマケ:エレベーター大好きっ子

エスカレーターが苦手なお子さんは、エレベーターが大好きなことが良くあります。

エレベーターの機械やボタン、上下する感覚など、色々なことが楽しいので幼いお子さんが夢中になることがよくあるんです。

その場合は、「エスカレーターに乗る」ということ自体が、「エレベーターに乗れない」ことを意味してしまうので、苦手が強まることもあります。

普段は問題なくても、校外学習などで、集団でエスカレーターに乗る機会もあることを知って、練習しておくのも良いですね。

7.最後に一言

『エスカレーターぐらい、どうして乗れないの?!』

そう思ったとき、
『壊れたエスカレーター現象』
のお話しを思い出してみて下さい。

これは、かなり複雑なお話しなのです。

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