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地球人失格な私が考える「善意のエコスシステム」

こんにちは。デジタルマーケティンググループの森川です。

DMGでは、毎週水曜日、チームメンバーでデコンストラクションを行なっています。デコンストラクションって何?って思った方は下記の記事をご参照ください。

今回デコンストラクションしたのは、カンヌライオンズ2019クリエイティブ・イーコマース部門でグランプリを獲得したDoconomy社による「DO BLACK - THE CARBON LIMIT CREDIT CARD」です。

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この事例をざっくり説明すると、「自分の消費行動(買い物)によって排出されるCO2量が、一定量を超えると利用制限がかかる、超エコなクレジットカードを開発したよ!」というものです。

今回のデコンストラクションを通して、寄付や慈善活動を通じて感じられる「つながり」の価値が、今後ますます認知されていけばいいな、という感想をもったので、その話をしようと思います。

DO BLACKカードを使えば、日々のお買い物を通じて、持続可能な社会に貢献できる

冒頭でもお話した通り、このクレジットカードは、利用金額が上限に達すると、・・・ではなく、CO2排出量が上限に達すると利用停止になります。

▼使いすぎると「CO2排出が上限に達したため、利用できません」と怒られる。

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▼詳しい概要は、動画が参考になります。※英語注意

このカードの素晴らしいところは、消費者一人ひとりが、日常のお買い物を通じて、持続可能な社会に貢献できるような仕組みを敷いたことです。

CO2排出によって引き起こされる「気候変動問題」は地球規模の大きな問題です。そういった大きな問題は、どうしても政府や企業単位での取り組みになりがちで、個人でできることは限られてしまうのが常でした。

しかし、政府や企業がいくら変わろうと、消費者一人ひとりの行動が変わらなければ、本当の意味での問題解決は難しいのです。

しかし、DO BLACKカードの申込者数は、ちょっと物足りない感じ

確かに、アイディアは素晴らしい。でも、あなたはこのカードを実際に使いたいと思いますか?胸に手を当てて自分の心に聞いてみてください。

ポイントザクザク貯まる楽天カードと、地球の未来を守るDO BLACKカード、どっちか選べと言われたら、もちろん私は・・・

ごめんなさい、楽天カード一択です(←地球人失格)。

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(引用:楽天ポイントカード 楽天パンダ)

コツコツとポイントためて、欲しいものが安く買えた時のオトク感、捨てがたいですよね!(あと楽天パンダかわいい。)

では、DO BLACKカードに実際どれくらい申し込みがあったかというと、(カンヌ受賞時の実績報告によると)スウェーデン国内で約8000件とのこと。

みなさんはこの数字をどう見るでしょうか?

DO BLACKカードは、カンヌグランプリ受賞という輝かしい功績の他、国連事務次官に公式に紹介されていたり、全世界のメディアで紹介されて話題になっています。そんな「めっちゃすごいクレカ」の割には「ちょっと少ないな」という印象ですね。

例えば、すごく話題の芸能人かタレントのYouTubeチャンネル登録者数が8000人とかだったら、「ん?ちょっと少なめだな。なぜだろう?」って違和感を感じます。

何が嬉しくて、人はDO BLACKカードを使うのか

逆の立場に立って考えてみます。

ポイントざくざく貯まるわけではないし、楽天パンダがかわいいわけでもない。それでもDO BLACKカードをあえて選び、利用する、その理由。

単なる「義務感」や「偽善」による自己満足でしょうか。

私は、「気候変動問題の解決に貢献できること」、それ自体に価値を見出している人も多いのではと思っています。

気候変動が世界にもたらす問題の深刻さは、もはや「言わずもがな」といったところで、農業、水産業、自然生態系、水質、自然災害など、その影響は広範囲にわたり、すでに目に見える形で現れています。

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その問題の深刻さを痛感し、「何か自分も行動を起こしたい」「少しでも役に立ちたい」と感じている人にとっては、とてもありがたい、嬉しいカードなはずです。

なぜなら、その人は、このカードを使うことで、「未来の誰かの役に立った」と心から感じることができるからです。

DO BLACKカードが提供する体験価値とは

突然ですが、私は、中田敦彦さんのYouTube大学をいつも大変楽しく拝見しています。中田さんが「寄付をしてみよう」の回の後編で言っていた「つながりこそ対価である」という話に非常に感銘を受けました。

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寄付という形でお金を支払うことで「誰かの役に立った」という感覚を得られる。これにより、「誰か」と「自分」の「つながり」を感じられる。この「つながり」こそが支払ったお金の対価だというのです。

DO BLACKカードを使うことによってもたらされる、「未来の誰かの役に立った」という実感は、いわば「未来の誰か」と「自分」が「つながっている」という体験とも言えます。

YouTube大学で言っていた、「寄付」がもたらす体験価値と、通じるところがあると思いました。

▼「寄付をしてみよう」は2部構成なのでぜひ前編からどうぞ!

ちなみに楽天株式会社でも、「楽天クラッチ募金」という仕組みを通して、「つながり」の価値を提供しているのをご存知ですか?コツコツ貯めた楽天ポイントを、支援を必要としている人に寄付することもできるのです。楽天カードユーザーとして、知っておきたいポイントですね。

このように、社会貢献や他者貢献は、人に「つながり」を感じさせ、幸福感をもたらすようです。

ベストセラー著書である「嫌われる勇気」を読んだことがある人はご存知と思いますが、人が他者貢献で幸福を得る理論については、アドラー心理学でも触れられています。

うーん、「つながり」体験がもたらす幸福感は、もしかしたら「ポイントでおトクに買い物できる」体験の比ではないのかもしれません・・・。

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「つながり」を感じるために大事なこと

じゃあ、「なんでもかんでも、社会課題に貢献していれば、幸福感を得られるか」というと、そう単純な話ではありません。

例えば、義務感にかられて、なんとなく寄付してみたところで「つながり」を感じることはできませんよね。

大事なのは、「その課題に心から共感できるか」なのです。

共感できる問題に貢献して、初めて「ああ、自分は誰かの役に立ったのだ」と実感できるのであって、それによって得られる幸福感こそ、「つながり」がもたらす価値なのだと思います。

DO BLACK カードも、気候変動問題を人々がより深く理解し、共感できるような機会を設けるなどのコミュニケーションデザインができていたら、申込者数が増加したかもしれませんね。

例えば、科学未来館のような、未来を身近に感じられるような施設とコラボしても面白いかもしれません。『DO BLACKカードは、明るい未来につなげるツールとして有効である』と人々に納得してもらえたらベストですね。

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(引用:チームラボアイランド -学ぶ!未来の遊園地- より)

すべての問題に共感できなくてもいい

もうひとつ大事なのは、地球規模の課題に共感できないとしても、「自分は冷たい人間だ」などとがっかりする必要はないということ。

例えば、「自分はサーファーで海が好きだから、森林伐採よりも、海の汚染問題にとても共感する」というのは自然なことですよね。

「LGBT問題はピンと来ないけど、小さな子どもへの虐待問題に、深く心を痛める」「黒人差別問題のことはよくわからないけど、LGBT差別は許せない」など、人それぞれ違って当たり前なのです。

大切なのは、「困っている人の役に立ちたい」という気持ちです。

手を差し伸べたいと思った相手が、「未来の誰か」なのか、「目の前の(あるいは身近に感じる)誰か」なのかというだけ。

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もし「そんな気持ちさえ持てない」「どうしても偽善としか思えない」としても、何も焦る必要はありません。ゆっくり自分をケアしていくことで、必ずどこかで「人の役に立ちたい」という気持ちが生まれるものです。

「他者貢献」で幸福を感じる生き物であるからこそ、人類はここまで大きなコミュニティを形成でき、発展してきたのだと言えます。

よく、芸能人やタレントが寄付や慈善活動をすると、「売名行為」だと言ってSNSが炎上する事件が問題視されています。

しかし、積極的に寄付したり慈善活動に励む人が、特別な善人なわけではありません。「つながり」の価値に気がついている人間からしたら、「お腹が空いたからご飯を食べる」くらいごく自然な行為です。そしてそういう人は、富や名声を得た、いわゆる「成功者」にこそ多いだろうことも、しっくりきます。

「つながり」の価値は、今後ますます高まる

質の高いモノやサービスが、とても安く手に入る時代になりました。AIやロボティクス化により、私たちの生活は、これからもどんどん便利に豊かになっていくと言われています。

そうすると、多くの人がだんだんとあることに気づき始めます。

「所有によって得られる幸福感には限界がある」

それに気が付いた人は、「つながり」による幸福感を求め始めるのではないでしょうか。

「SNS」みたいなわかりやすい「つながり」も、そうかもしれません。多くの人が「いいね」の数やフォロワー数に翻弄されます。

また、「働く」ことも立派な社会貢献で、「つながり」の一つの形です。現に若者の間では、仕事に対し収入よりやりがい(社会貢献による「つながり」)を求める人が増えている傾向にあります。

その中でも、今回取り上げたような「寄付」や「慈善活動」によって感じらる「つながり」の価値は、まだまだ日本では認知度が低いようです。

事実、「寄付白書2015」によると、2014年の日本の個人寄付総額は7409億円。対するアメリカは、日本円換算で約27兆円超。GDPに占める割合も、7.5倍の差があります。

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(出展:http://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2016/01/GJ2015_infographics.pdf)

しかし、大震災をきっかけに、少しずつ日本の寄付総額は増えてきているというデータもあります。

つまり、「つながり」体験の価値に気がつく「きっかけ」さえ上手に作ることができれば、社会に良い循環がどんどん生まれるということではないでしょうか。

そして、その「善意のエコシステム」は、クリエイティビティの力で実現できると私は考えています。

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ここまで書いていて、4000字超えていることに気がつきました。楽天パンダ愛から地球愛へスケールさせるのに、ここまで字数を要するとは・・・。

私の愛の語りに最後までお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました!



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