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ミズグルマ 勇者編

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ジャンル: 小説 SF(ただしサイエンスファンタジー) 舞台をハイファンタジーにとったSFなので読者を選ぶと思います。読みやすさには留意したつもりなので、お暇なら手に取ってみて…
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2020年11月の記事一覧

水車 第三章 エピローグ

 森の麓に水車車が来ていた。見張りに立つ森人はその車に見覚えがあった。以前見た時にはピカピカに磨き上げられていた車体は薄汚れアチコチがベコンベコンに凹み部品のもげたらしい破断面もある。森人は隠蔽から姿を現し手招きをした。今森の客人となっているクウグンの長の車だからだ。

 参謀長が出迎えた。
「長官ご無事で」
「司令君はどこ?」
 まだ戻ってきてはないが、森人と組んだ陸戦隊の救出班が確保に成功して

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水車 第三章 第10話

 (ここは、ウロの中、只の人が神樹と交信出来る唯一の場所)シャオ!どこに居るんだ。みんな心配してたぞ。
(迷子?)小首を傾げるシャオを幻視する。
 神樹からレコードのアーカイブに分け行って飛竜の事を調べてたら抜け出せなくなったらしい。
「食事とかどうしてる」
(問題ない、欲しいものが好きなだけ出てくる)ギクリとした。これは、あれだ、肉体が滅びて精神が神樹と融合したとかのパターンじゃね?

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水車 第三章 第9話

 参謀長からストップが掛かった。
「あの中を飛ぶ気ですか?」空一面カゲロウだらけだ。あ、むりだわこれ。
「発進中止!掩体へ戻せ!」兵曹の誰かが仕切る。
 命令の先取りは駄目だよ。てか、ウチじゃ普通だけど。コンマ一秒争うような戦闘ばかりしてたからねー、仕切れる奴が仕切るみたいな習慣ついちゃった。うぉっと、ブレスだ。森、盛大に燃えてるなぁ、神樹大丈夫か?て、いきなり火、消えたし。え?真空魔法の応用?そ

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水車 第三章 第8話

「え?あれが欲しいの?」森人が来て、竜骨をくれと言う。大型ドックに据えた巨大飛空艦のそれだが、やっと据え終えたばかりで今回の敗戦?まあ、放置になったわけだ。入手する筈の多数の大魔石もこの情勢じゃ無理だし。
 いっか、持ってっていいよ。てか、重たいよ?ん?丸太空軍全部引き連れてきた?牽引するの?空を見上げて良く見れば、カゲロウのように揺らいでいる。てか空全部カゲロウじゃん。これみんな丸太?やべーな、

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水車 第三章 第7話

 連合軍を奇襲した騎士団の分隊は大きく迂回しながら本隊との合流点に向かっていた。追尾がないか時折振り返る殿の騎士から声が上がった。
「6時、敵飛空艇、多数!」
「散開!固まっていると殺られるぞ!」
 騎士団の敵空軍との交戦は少ない。それも比較的低速の羽気球だけである。水素反応の矢をつがえた弓を向ける者がいても可笑しくはない。複数の騎士がそうした。そして唖然とした。狙う間もなく殺到し一連射で飛び去っ

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水車 第三章 第6話

 テイコクにいくつかある属国のひとつに元王国騎士団副団長は小領主として、封じられていた。
「王国がテイコク首都を焼き滅ぼしたそうです。勇者様」
 何処をどう掻い潜ってか、勇者は此処まで逃げのび、元副団長の庇護下にあった。
「どのような魔法を使ったのか、建物はひとつ残らず崩壊し、生き残りも避難が許されず一人もいないとか」
 語る小領主の顔は苦渋に満ちている。王国討つべし、すぐにその結論に達した。もと

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水車 第三章 第5話

 神樹は人間ではない。定義にも依るが森人の言うように、一柱の神の現し身とかでもない。勿論、精神生命体とか知性体とかでもなく、ただの結接点だ。
 情報を取り込み固定化して蓄積する仕組み=アカシックレコードを保護し情報を選別する。その過程で情報を得るための経路やその経路の保護を行う機能もまたレコードの一部で、結接点である神樹を経由して作動しているのだ。
 そこではシャオのような重要な情報源として紐付け

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水車 第三章第4話

 水車工房の一角で職人達が首を捻っていた。いま完成したばかりの水車の起動出力が三割方高いのだ。民生用なので軸や支持架の強度が足りない。これ迄にも同様のミスが無かった分けでは無いが、概ね湯石の選定で錯誤があっての事だ。此とは事情が違う。大きさ、形状の歪み具合、表面の手触り、何処からどうみても、このような高性能の水車が出来る筈のない湯石だったのだ。
「仮組ばらして、軍用に組み換えな」
 仮組での試験運

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水車 第三章 第3話

 水上機母艦の司令は苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。この危急の時に何機かの水戦のエンジンが不調なのだ。酷いのになると離水すら出来ない。離水出来ても高度を取るのに難渋するようでは、とても戦闘に使えない。
 訊けば魔素の吸い込みが悪くなっていて付与のブレイクもまるで機能していないと言う。やむを得ず、無事な水戦だけで編成し変則二個中隊十五機で発進させた。が、すぐに戻ってきて着水するものが一機。
 エン

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水車 第三章 第2話

 長官には戦闘を慎めと言われたのであって戦闘をするなとは言われてない。なので偵察くらいなら問題ない。仮に迎撃されて戦闘になったとしても、慎んだけれどなっちゃった戦闘なので問題ないのだ、ないったらない。てかさ、空も飛べずに空軍司令名乗れないし。
「司令、2時、特殊艦、ありゃ水軍の母艦だな」操舵手君、君、もう敬語使う気ないでしょ。
「水軍の新型、揚がってきます!」前部射手君、何装填してるの、友軍なんだ

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水車 第三章 第1話

 王都は、なんか久し振りって感じ。新型艦や二番艦の改装の設計に付き合ったり、元勇者軍のうち空軍に配属になった連中の訓練みたりしてて、気が付いたらもう春だし。で、取り合えず属国になっている元勇者軍兵士達の故郷を取り戻そうじゃないか大作戦の打ち合わせ、作戦会議とも言う、に来た。
「少将に任ず」はい?長官に挨拶にいったら、任命書らしき紙切れと階級章を渡された。
「今後は将官自身、自らでの戦闘行為は慎むよ

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水車 第三章 承前

 港のぬくみがあってか、岸に近いと言うのにこの辺りは氷結していない。そこに一隻の母艦が停泊している。
 水戦の置水準備をしている辺りには濛濛と湯気が立ち込めている。エンジンが暖まる前に凍結するのを防ぐために、タンクに給湯しているのだ。準備の終わった水戦から湖面に降ろしていく。
 降ろされた水戦は直ちにペラを回し、次機のために場所を開ける。三機揃ったところで位置を調整し、一斉に滑水を始める。
 あり

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水車 第二章 第10話

 一旦停止し、航空隊の戦果を確認し次第、再度進発する手筈になっていた。
 「前方機影、友軍機複数、未識別機、その後方」対空戦用意の号令が消えもしない内に空戦中であるらしき集団は、仮陣地の上に殺到してきた。発見が遅れたのも道理、かなりの低空を全速で飛ばしている。
 味方機が一機、翼を破壊されて陣地の中程に墜ちた。数両の車両が巻き込まれた。パン、パパン。援護の積もりか対空砲が命令を待たず鳴り出す。
 

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水車 第二章 第9話

 試しに火薬式弾頭ボルト何発か持って行きたかったんだけど、陸軍の主計官に渋い顔をされた。魔石とか劣化させちゃうから運送経路まで考えないといけないらしい。
 二十本ぐらいで良いんだけど…。それ位なら、と言う事で保管所に貰いに行ったら水撃銃の口径に合うボルトがなかった。大口径水撃銃も必要か、今回は間に合わないな。
 そんな訳で
 「おちねー」
 ただ追いかけっこしただけで二度目の強硬偵察は終了。うん二

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