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仏道に真に実直な名僧! 本「明恵 夢を生きる」★4

生涯にわたって自分の夢を記録しつづけた名僧・明恵の『夢記』を手がかりに、夢の読み方、夢と自己実現の関係、ひいては人間がいまを生きるうえで大切なこと等をユング心理学の第1人者、夢分析の大家が実証的に説く。夢で生き方が変わることもある……。
第1回新潮学芸賞を受賞した、人間の深層に迫る名著。

1995年 河合隼雄

目次
第1章 明恵と夢
第2章 明恵とその時代
第3章 母なるもの
第4章 上昇と下降
第5章 ものとこころ
第6章 明恵と女性
第7章 事事無礙

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明恵上人樹上坐禅像

明恵みょうえ高弁こうべん(1173年~1232年 60歳没)
鎌倉時代初期の名僧。
夢の記録を19歳~死ぬ1年前まで続けた。(夢記)
武士の血を引いている。
13歳の時「既に年老いたり」と。捨身しゃしんを試みるが失敗。
24歳の時、仏眼仏母像の前で、右の耳を切断。夢に文殊菩薩の顕現。
臨終の際、最後まで弟子に教えを説き、右脇にす姿で静かに逝く。最後の言葉は「我、戒を守る中より来る」。死後、常に異香が匂う奇跡。人々は兜率天とそつてんに行ったと信じた。僧俗多くの人が予知夢を見たと言われる。
高山寺(京都)。

心理学や仏教に関して、大した理解もない自分でも、難解過ぎず、ある程度分かるように書かれているので、十分楽しみながら、学習できた。深い説明に至るところもあって、理解できない箇所もあるが、それを抜きにしても、それなりの満足感は得られる。

フロイト曰く、「夢分析」というのは、夢を見た人の意識状態を知らなければならないものだと。明恵は、当然昔の人物なので、直接話を聞くことはできない。なので、現存する書物等から判断し、理解を深めることになる。それに夢分析も加え、明恵の人物像が明らかになってくる。一般的に語られる明恵像がどういうものなのか知らないが、もしかすると本書で語られる明恵像には、何かしら違いがあるのではないかと思われる。

本書でも言われているように、たぶん「明恵」という人は、それほど広くは知られていない人物なんだろう。自分はただ何となく夢に興味があり、ここにたどり着いた。仏教にも詳しくないので、他の名僧と比べることはできないが、ここで知った明恵という人物は、仏道に真に実直で、稀有な偉人・名僧という印象を持った。

明恵は、欲望を拒否したり抑圧したのではなく、それを肯定しつつなお戒を守るという困難な課題に取りくんだ。ここに明恵の偉大さがある。

鎌倉時代は、「平家から源氏へ、源氏から北条氏へと、あわただしく権力が移り、多くの名僧が現れ、日本人の霊性が活性化された時代だ」と。その名僧には、法然・親鸞・道元・日蓮などがいて、これらはよく名の聞く人物たちだ。特に法然・親鸞は、大きな存在だったのだろう。本書曰く、「明恵は他宗に対して極めて柔軟な態度だったが、法然ー親鸞の創始した宗派(浄土宗・浄土真宗?)には、激しく反対した」らしい。それがいかに画期的だったかを物語っていると。ちなみに、「親鸞と明恵は同年生まれで、仏教的考え方は異なり、対立的だった」らしい。山本七平によると、「明恵上人伝記」は、明治に至るまで、おそらく最も広く読まれた本の一つだと。これは、「親鸞の教えが宗教界に於て、日本人に強い影響を与えたのに対して、明恵の考えは、日本人の日常的倫理に強い影響を与えたことを示している」と。なので、何か新しいことをしたか?という観点ではなく、彼の宗教性そのものに注目するべきだと。

ここで注目されるのが、北条泰時が制定した「貞永式目」(御成敗式目)という法だった。これは、画期的革命的であったらしく、この思想的支柱として明恵が関わっていた。そして、貞永式目は600年以上の長きにわたって日本人に受け入れられてきたという。↓

泰時の「ただ道理のおすところ」、明恵の「あるべきようわ」が思想の根本?全人的な生き方? この「あるべきようわ」というのが、重要なもののようだが、これがまた分かりにくい。

「後生を助かろうとしているのではなく、此の世に有るべきように有ろうとすることが大切。」
「どんなものでも、それにふさわしいありようをもっている。日々のものとのかかわりは、すなわち心のありようにつながるのであり、それらをおろそかにせずに、なし切ることにあるべきようわの生き方があると思われる。そこには強い意志の力が必要、単純にあるがままというのとは異なる。」

分かりそうで分からない。きっとその真髄は、そう簡単に分かる類のものではないんだろう。明恵自身ですら、この厳しい問いかけを、常に己に課していたようだし。「貞永式目は世界の中でも稀な法、法理上の典拠をもっていない。背後で支えるのがこの「あるべきようわ」だ。この本質が貞永式目の中に生かされ、それはのちまで日本人の生活の中に生きてきた。」ということみたいですよ。

また明恵は、予知夢や一種のテレパシー現象みたいなことがあったようだ。予知夢は分かるとして、テレパシー現象に関しては、「禅定ぜんじょうによって、明恵がある種の意識状態になってる時、こころの状態と外界のものの世界の状態は、不思議な対応をもち、遠隔地のことや暗闇の中のことなどが、彼には見えるようになる。」禅定とは、瞑想みたいなこと。具体的には、深い禅定時、「その場にいない、蜂が水に落ちて死にかかったり、雀が蛇に飲まれそうになったりするのが見える。」との話がある。実際、弟子が見に行くと、そうなっていたと。まったく一体どういうことなのか、微塵もそういう経験がないので分からないものだが、実際そういうことはあるんだろうか?霊性の高さによるのか。上にもあるが、有名な「明恵上人樹上坐禅像」の絵が示すように、明恵は自然と渾然一体となり、すべてが区別なく感じる境地に達するんだろう。

最後の章に「事事無礙じじむげ」というのがでてくる。これは、華厳経の四法界の一つで、「現象世界のすべてのものごとが相互に関連・融合し、そのままで真実の世界を完成していること。究極のさとりの眼から見た存在の世界のあり方。」(精選版 日本国語大辞典) 四種の法界は、1事法界、2理法界、3理事無礙法界、4事事無礙法界。この辺の説明を、井筒俊彦さんの論を基に述べられるのだが、難しそうなので、気が向いたときに詳しく見ていこうと思う笑(P354~362)華厳経というのは、捉えがたく、難解なものらしいが、ここでは「光のみ満ち溢れる」という表現で語られており、興味は湧く。が、たぶん触れてみたところで、理解はできないだろうが。

あとがきに、明恵と宮沢賢治、アシジの聖フランシスコとの類似性のことが述べられており、こちらも興味が湧く。実際、本も出てるようなので、機会があれば読んでみたい。

夢について
・人はだいたい1日5,6回夢見てる?
・自分の夢に注目し、それを自分の自我のあり方と照合し、夢の告げるところの意味を悟り、自分の生き方をそれに従って改変していくときは、以前より高次の統合的な存在へと向かって変化してゆくことになる。
・夢が意識のあり方に影響を及ぼす。真の個性。夢を記録し夢を生きることは自己実現のための極めて重要な手段。
・考えても解らなかったことが、夢の中で解決されるがある。無意識内の創造性。(タルティーニの悪魔のトリルの作曲やケキュレによるベンゼンリンクの発見など。)
・夢の中で自分の死を見ることは稀にある。人生における急激な変化と対応していることが多い。
・夢はあくまで偽装されたかたちであり、その背後に抑圧された願望が隠されている。
・夢はもともと視覚的なもの、音はわりに聞こえるにしても、味覚嗅覚は稀。
・上昇と下降は夢における重要なテーマ。上昇は世間的にも精神的にも人間にとって重要。
・自分にとって最も大切なのは「未知のある人」という表現は夢が非常に好んで用いる方法。
・夢に対する敬虔な態度。夢に関心を持つ危険性の一つは、自我肥大が起こりやすいこと。
・何かを得るには何かを失わなければならない。夢に生じる大切なテーマのひとつ。
・夢と現実は無関係でない。夢が発展していくことは、その人間の心の発展が生じたことを示しており、それが外界と無関係に進むことはありえない。

関連
フロイト、ユング、多聞院英俊、仏サン・ドゥニ、人類学者スチュアートのセノイ族の夢分析。慈円の夢記録。錬金術師グノーシス派ゾシモのヴィジョン。空海。仏眼仏母。文殊菩薩の顕現。九相詩絵。理趣経(夢告を受けて伝授された)。十七清浄句(一切の法は清浄なり)。春日明神。スェーデンボリ、火事の例。ノイマン「グレート・マザー」P267


明恵さんの本、いろいろあるんだな~。
白洲正子さんの「明恵上人」と、あとがきで言ってた「聖地アッシジの対話」が気になるな~。

なんだか結局、とりとめもない文章で長々と書いてしまった。うまくまとめられない…が、とにかく明恵という素晴らしい人物がいたんだと。そして、自分も夢日記つくりたいと。まあ、そんなこんなでもう終わらせよう。。。

勉強になりました!^^

(^^)/



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