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彼の名こそ印象派、アルフレッドシスレー

 「絵の横道」11回目

「こんな風に絵が描けたらどんなに幸せだろう…」
シスレーの絵を見ると誰しもそんな風に思うものです。

ピカソのように難解ではなく、古典絵画の巨匠達のようにしかめ面もしていない…、そんな誰にも愛される風景画を描いたのがシスレーです。

ポールマルリの洪水と小舟

ご覧下さい、夕まづめの光の中のこの風景画を。

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<ポールマルリの洪水と小舟 1876年 オルセー美術館>

建物のオフホワイトとオーク色、空のセルリアンブルー、下にはそれらを反映して輝く水面…最も対比の美しくなる色彩で描いた溜息が出るような一枚です。シスレーが描くと洪水の後の風景でさへ美しい情景に一変します。

マントからショワジ=ル=ロワへの道
こちらは、陽光に輝く馬車道を描いた作品。素晴しいの一言です。

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<マントからショワジ=ル=ロワへの道 1872年 山形美術館 >

サン=マメス六月の朝
下は、何と東京で見る事が出来ます。京橋はアーティゾン美術館(旧称ブリジストン美術館/石橋財団)所蔵の名画です。右側の建物の赤茶の美しさ、建物と呼応するように画面奥へと連なる樹木の光と戯れるような描写、西陽に照らされる川沿いの道、その向こうを流れる川の描写が醸し出す絵画全体とのハーモニー…、名品の香り漂う正にシスレー最高の一枚です。これが日本にあるのですよ、皆さん。

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<サン=マメス六月の朝  1884年 アーティゾン美術館蔵>



典型的な印象派の画家とは誰かと問われたら

さて…
「最高にして唯一無二の画家は誰か?」
と聞かれたら、僕は迷う事なくレオナルド・ダ・ビンチの名を挙げます。
レオナルドは全く神が降りて来たような画家なのです。

しかし、「最も好きな画家は誰か?」
と問われたら、僕は迷う事なくシスレーの名を挙げます。

この心地よさは他に類を見ないものです。
シスレーは、人生の喜びを謳歌しているような絵を僕達に沢山残してくれました。

「素晴らしい! 僕らは何て美しい世界に住んでいるのだろう!」
と。

数年前に練馬美術館開館30周年記念展でシスレー展が開催された時、訪れた人達がシスレーの一枚一枚の風景画の前でじっと佇んで見入っていました。それは、実はありそうで無い光景でした。
実際の所、美術館で人は一枚の絵の前にほんの何秒も居ないのです。

それは、いかにシスレーの絵が人々に愛されるものであるかの証でした。



*シスレーにまつわる伝説
色彩の天才と言われたアンリ・マティスが年老いた印象派の巨匠カミーユ・ピサロに会った際、マティスが「典型的な印象派の画家は誰か?」と尋ねると、ピサロは「それはシスレーだ」と答えたと言います。

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<アンリ・マティス 「大きな赤い室内」ポンピドゥー・センター蔵>


*アルフレッドシスレー  1839-1899年 フランス生まれのイギリス人
 <もりおゆう© この美術エッセイは著作権によって守られています.>
(Yu Morio© This art essay is protected by copyright.)


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