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別に自由に生きなくてたっていい【読書記録】ギフテッド(著:鈴木涼美)

おはようございます。にんにちは。こんばんは。
第167回芥川賞ノミネート作品の「ギフテッド」を読みました。

今回のノミネート作品の中で、文章も世界観も一番好きな一冊でした。
今回のnoteは、この1冊を読んで気付いたことを書いていきます。

このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになります。人生をラクにする1冊を紹介するnoteです。

<こんな人にオススメの1冊>
・生きづらさを感じている
・ビジネス本、自己啓発本には飽きた
・人間関係、特に親子関係に悩んでいる

向き合わない娘と母の最後の時間

歌舞伎町の夜の世界で生きる主人公。
10年以上も昔、14歳の夏に母からタバコとライターで身体に一生消えないキズを負わさる。その母が、まだ53歳でありながら髪や肌は老婆のように老いた無惨な姿で娘の前に現れます。

『病院のベッドの上ではそれが無理なの。わかるでしょう。』

母はおそらく54歳を待たずこの世を去るだろう。
17歳の時に家を出て以来の母と一緒の時間。
その最後の時間が淡々と過ぎていく。

母から娘へのギフテッド

この親子をつなぐものがタイトルにあるギフテッド<与えられたもの>。
その母から娘へ<与えられたもの>はなにか?

ひとつは美しさ。白くて、しなやかで、いかにも男が好きそうな身体。
そしてもうひとつはその値段を半減させる、タバコとライターで付けられた身体へのキズ。

『母がくれたのは五体満足の身体と、その身体の値段を半減するような傷と、女盛りの二十代が残り少なくなったこの時期に、朝の気だるい空気の中を歩いて浪費する時間なのだ。』

自分の性を商品にできる夜の世界で、自分の身体をどこまでお金に変えるか?それは自分次第。

自分の身体は自分の所有物。
だからすべてを自分の責任で決めることができる。

マンションの屋上から飛び降りた同じ夜の世界で生きる友人との違いは何か?
母から与えられた火傷とそれ隠すためのタトゥー。そのタトゥーがあることでできない夜の仕事があるという事実。

自分の容姿をお金に変えるこどができる美しさ。
自分の身体をお金に変える自由とその自由を不自由にした火傷。

別に自由に生きなくていい

自由に生きるための力とその自由を制限する足枷。

なにをしても自由。どう生きても自由。何も言われない。
それをなんとなく正しいとされる時代に生きている。

でもその自由がいいことだとは限らない。
それが苦しくなることもある。

この無限の自由の中で、別に自分の意思だけで生きなくていい。
母から与えられた焼印は、少しだけ軽く生きるための“いいわけ"となっているかもしれない。

そう思うと人生がラクになる。
オススメの1冊です。

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