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会社を辞めて大学に戻って博士課程の学生になった話⑤<ふりかえり編>

「やっぱり仕事辞めよう。大学に戻ろう。博士になろう」

そう一念発起した数年前。

こんにちは、晴れて博士になりました。生物系の研究者の端くれです。

私は農学系の大学院の修士課程を経た後に就職し、2年働いた後に退職して大学院に戻り、博士号を取得しました。
(https://note.com/mypacebiomuswri/n/n0235819251f7)

一度就職した後に大学院に戻る、というパターンで博士になる人はなかなか少ないのですが。とはいえ、最近では全く0ということでもないみたいで、よーくよーく探してみると少数派でも確実に存在しているようです。

けれどもやはり、少数派は少数派。

お金のことや将来のこと、知りたいのに誰に聞いたらいいんや!とか。聞いてみたけど意味がわからん!とか。四苦八苦しながら博士になりました。

ここでは、そんな私の20代奮闘記を書きたいと思います。2015~2020年頃のお話です。

全部で5つの記事に分けて書こうと思います。
(今後も加筆訂正予定)

⑤「ふりかえり編」では、振り返ってみて今思うことについて書きます。(一度就職した後に博士号を取るメリット、デメリット、など)

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そんなこんなで、無事に博士になりました。やったね!

さて、で、結局のところ、修士の後すぐに博士課程に進むのと、一度就職してから博士課程に戻ってくるのと、何が良くて悪いのか?

働いた経験、ちゃんと活きた!

まずは、一度就職しておいてよかったなあと思ったことについて。

よかったこと その1:持っている知識を使いこなせるようになった

就職してた数年間のブランクで、実験の仕方やら研究の考え方やらを戻すのに時間がかかるかなーと思ったのですが、そこは意外とすぐに戻ってきました。

知識的なことは、むしろ、働いて大学の外側にある視点が自分の中に追加されたことで、散在していた自分の知識が一つのまとまりとして考えられるようになりました。論文などを読んでも、その研究の背景が見えるようになったり。修士課程の頃よりも、自分が持っている知識を使いこなせるようになったと感じました。

きっと、数年間のブランクによる学術的な知識の穴も多少あったと思うのですが、それ以上にメリットの方が大きかったと思います。

よかったこと その2:博士課程の3年間を有意義に過ごせた

一度会社員を経験すると、学生の自由さが本当にありがたいと実感。これは、修士課程後にストレートで博士課程に進学した方は感じ難いことで、そして、意外と重要なことなのではないかと私は思います。

24時間365日が自由で、自分の好きなようにスケジューリングできる。興味のあるセミナーや学会、研究会には誰の顔色も窺わずに行ける(会社だと上司や同僚の反応を見て空気を読むのが必須)。若手の会など、学外の活動も利害関係などを気にせずに参加できる。

会社員だと、本当にこの辺りのことが難しい。

そういう学生の有難みがわかる。つまり、学生の今だからできることがわかる。卒業したらできなくなることがわかる。

だから、博士課程の3年間を有効に活用しようという意識を持てて、少しハードルの高いことであっても、具体的な行動を起こそうと思えたのだと思います。本当に、余すことなく3年間楽しめました。

よかったこと その3:「貯金」という精神安定剤

やはり、生きていくにはお金は大事。働いてまとまった貯金を作ってあったのは、精神安定剤として本当によかった。

博士課程の3年間は会社員時代の貯金にほとんど手を付けずに生活することができました(②「生活とお金編」を参照)。なので、貯金がなくても生活はどうにかなったのですが、それでも、「お金がある」という安心感として貯金はやはりあってよかったと思います。

疲れたときは休もう、ちゃんと寝よう、趣味の時間も作ろう、という心の余裕があって、現実の状況や将来に焦りすぎずに研究を続けられたのは、いざという時のための金銭的な備えがあったからだと思います。

就職活動でうまくいかなかった時も、またしかり。「最悪、就職先が決まらなくても、数か月くらいは無職でも生きていけるお金がある」という精神的なゆとりがあったから、必要以上に追い詰められず、研究との両立ができたのだと思います。

じゃあ、デメリットってないの?

残念ながら、そんなことはなく。これはデメリットだなーと思ったことについて。

デメリット その1:やっぱり将来的には若い方が有利

将来のキャリアパスに関しては、やはり若ければ若いほどよいのが今の世の中。それは企業就職だろうと、アカデミア就職だろうと、同じだと思います。

私は企業就職でしたが、転職でも30歳までとよく耳にするように、博士課程の就職活動についても同様のことが言えると思います。同じ能力の人なら、若い方がいい。

どの道を選んでも、長く働ける若い人を、若い人にチャンスを、という風潮が主流な世の中。「ちょっと年齢はいってるけど、この人なら雇う価値がある」と思わせる何かを、企業就職であれ、アカデミアであれ、持っている必要があるかなあと思います。

また、④「企業就職?アカデミア? 実践編」の記事でも書きましたが、私が応募したかった企業のうち、3分の1くらいは職歴のために応募できませんでした。日本は新卒至上主義だとよく言われますが、やはり、社会に染まっていない真っ新な新卒学生を求める企業がまだまだ多いのかなあと思います。

デメリット その2:20代の負債、今、返しています

金銭的にも完全な無傷というわけにはいかない。奨学金やら年金の追納やら何やら、今、20代のツケを返しています。自分が選択したことを後悔していませんが、それでも大変だなあとは思います。

最初に就職した会社で今まで働いていたなら、その間の収入もあれば、多少の昇給もしている可能性が高くて。厚生年金も入っているので、老後にもらえる年金も多い。

一方で、博士号を取得すると、卒業してからが収入的にも一からのスタートとなることが多い。

そう考えると、30代のあいだは同世代の会社で働く社会人よりも金銭的に不利だろうと思います。

ただ、悲観的なわけではなくて、取った博士号を使っていかにこれから飛躍するのかが重要。生涯年収で挽回できるかどうか。そこが博士の腕の見せ所だと思います。

そして、後日談。

④「企業就職?アカデミア? 実践編」でも書きましたが、今は就職した企業を退職し、また大学に戻ってアカデミアの世界で研究をしています。

状況から判断しても私は非常に運がよかったと思いますし、人にも恵まれています。それでも、やっぱりなかなか人生は思うようにいかないなあとも思います。

結局のところ、今となっては企業就職もアカデミアもどっちもどっちだなあと思う。

もっとシンプルに、自分の性格に合う働き方ができる方を選ぶことが一番良いのではないか。そういう基準でこれからの仕事や職場を選んでいきたいと思うし、選べるように頑張っていきたいと思う。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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会社を辞めて大学に戻って博士課程の学生になった話
①決起編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/n50b4216eace2
②生活とお金編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/nd4d8344b0662
③企業就職?アカデミア? 準備編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/nb691e206919a
④企業就職?アカデミア? 実践編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/n6572d7b4dbf9


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