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思い返せば

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今のわたしが作られるまでの話です
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#児童相談所

選択の結末

選択の結末

前回のつづきです。前回はこちらから。

一時保護所に来て5ヶ月、季節は秋の中頃。当時私がいた一時保護所での平均滞在日数はみな1ヶ月〜2ヶ月程で、5ヶ月もいると私よりも先にいた子供達は行くべき場所が決まり退所、新しい子が何人も入ってきて、気がつけば保護所内では私が一番長くいる先輩になっていた。

「文化祭があるからこれで工作しなさい」といきなり言われ、文化祭?と疑問を抱きつつもフェルトでのマスコット

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籠の中の優等生と劣等生

籠の中の優等生と劣等生

前回の続きです。前回はこちらから。

一筋の光があったとすれば、児童養護施設に行く手続きは進められているという児童相談所の職員さんの言葉だった。もう少しこの環境に耐えてみようと、3センチも開かない窓から押し付けるように顔を出し、外を見ながら自分の行く末を信じた。

2ヶ月ほど過ぎた辺りで、1人の子供が脱走した。朝起きて朝食のために整列した時、点呼の人数が合わなかったのだ。職員さんは全員慌てて探しに

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蜃気楼

蜃気楼

前回の続きです。前回はこちらから。

一時保護所に着いていきなり下着一枚にさせられ、持ち物検査でおばあさんに買ってもらった画材やその時持っていた他の下着も全て取り上げられた。施設の備品?なのかな、ダサいボロのジーパンと半袖のTシャツを着せられ、別室で簡単な心理検査を行った。そのあと、保護所の職員さんから「ここでは絶対に守ってもらわなければならない3つの決まりがある」と言われた。

①ひとことも喋っ

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初めての人生の選択

初めての人生の選択

前回の記事の続きです。前回の記事はこちら。

「では明日、いつも通り学校に来てください。お迎えに行きますから」
両親の留守を見計らって、児童相談所に電話をかけた。

翌日、いつも通り学校に行ったが、いつも通りでないのは持ち物と、入る教室。電話で「もし可能なら…」と言われたのでスクールバックの中には教科書ではなく、詰め込めるだけの下着を入れた。上履きに履き替えて、教室とは逆方向のカウンセリング室に向

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自分の居場所

自分の居場所

前回の記事の続きです。前回の記事はこちら。

テストで点が取れないと、遊びに行かせてもらえなくなった。また次のテストで点が取れないと、ゲームが禁止になった。また次のテストで点が取れないと、テレビが禁止に。親はとにかく勉強にうるさかった。

夏休みに出された宿題の読書感想文。あれは母親の感想文として提出された。もともと本は好きとまではいかないけど抵抗なんてなかったし、絵本だったらむしろ大好きだったし

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